実家を追放された名家の三女は、薬師を目指します。~草を食べて生き残り、聖女になって実家を潰す~

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2-6.黒一点、勘違いの勘違い

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 3日後、ミラの魔物討伐パーティが決まったと連絡を受けて、ギルドに向かった。

 スフィアが紹介したのは、冒険者パーティには珍しい、女性を含む4人チームだった。
 
「紹介しますね? 彼らは冒険者を初めて1年ほど、この街で活動しています。彼らは今日、低ランクの魔物を討伐する予定でしたので、そこにミラさんを参加させる形になります」

 ミラは4人を見回すと、青年が1人に女性が3人。この街の冒険者パーティでも珍しい。というかほとんどいない構成だ。
 冒険者はほとんどが男で、女性はその中に1人いれば良いほう。それが女性3人もいる。
 短髪の青年は剣と盾で、タンク役なのだろう。

「俺の名前はヴォルフだ。片手剣と盾を使う」

 その隣に1人、編み込んだ長い桃色の髪で目がおっとりしている女の子がいた。年はミラに近い。

「私はメイ。このレイピアで刺突系の剣術が得意かな」

 もう1人は髪をウルフカットのようにした、白い髪が特徴の女の子だ。目が眠たそうなである。

「ソーニャ。魔法が得意」

最後はお下げのような縦ロールをしたクリーム色の髪の女の子である。パッチリ目で少し目尻がキツめなのが印象的だ。

「アリスよ。一応、弓がメインだけどメイスも使うわ」

 自己紹介を受けてミラも名乗った。

「私はミラです。薬師見習いをこの前卒業したばかりの冒険者です。得意な武器はありませんが、剣を振り回すくらいならできます。魔物との戦闘などは完全な初心者ですが頑張ります」

 4人はミラをじっと見た。

 そして一斉に、スフィアに視線を向けた。
 視線の集まったスフィアはバツが悪そうに横を向く。

 メイが代表して、ミラに聞く。

「剣はその、あまり使えないんですか?」
「はい、少ししか」

 メイは他の3人に問う。

「どうする?」

 ミラは彼女らが何を気にしているのかがよくわからなかった。
 それに対し、唯一の男性であるヴォルフが答える。

「戦えないなら、後ろからついてきてもらうしかないよ。そういう陣形で森を進もう」

 アリスは縦ロールの髪を手で少し払って、ため息をついた。

「ようするに、パーティは形だけってことね?」

 ミラはそれを聞いてようやく理由がわかってきた。
 おそらく、スフィアがミラのことを正しく伝えずにパーティを組ませようとしたのだ。

 ミラはさっとスフィアのそばまで歩いて、耳元で話す。

「あの、もしかして私が魔物の戦闘経験がない素人ってこと、伝えてなかったんですか?」

 スフィアは少しだけ渋い表情をした。

「あのですね。実は、深海クラゲの影響でこの街を離れてしまった冒険者が結構いるんですよ。本当ならボーナスイベントみたいにお金を稼ぐチャンスだったんですけど、あの事件でダメになりましたから。仕方なく別の場所でお金を稼ぐ人が一時的によそに移っちゃったんです」

 スフィアの話によると、冒険者の数が減り、それを補うために残った冒険者が忙しくなったらしい。そのせいで、低級モンスターの討伐はランクの低い冒険者に任されていて、ちょうどよい人員がいないらしい。

 かといって、男性だけの冒険者パーティとミラを組ませるわけにもいかず、残ったのが彼らだという。
 彼らは見た通りパーティメンバーに女性が3人いて、戦力が少し足りておらず、補充要員を探しているのだという。

「なるほどですね。それであの反応を……」
「本当のこと話しちゃうと了承してくれなさそうだったんです。指名依頼でお金を浪費するよりこっちがまだマシかなと」
「なんか、スフィアさんってそういうの多いですよね」

 ミラは少しだけ笑うと、4人のもとに戻った。

「お邪魔はしませんから、いつもどおりに討伐に行ってください。私は後をついていくだけでいいですから」

 メイは周囲を見回して頷く。

「わかりました。ミラさんがそういうのでしたら、いつもどおりに討伐をします。ただ、生息域で警戒だけは怠らないでくださいね?」
「わかりました」

 ミラは軽く頷くと、4人の後ろを歩く。


***


 街を出て外れの森に入ると、メイがミラの隣まで下がってきて話しかける。
 まだ魔物の生息域ではないため、緊張しないための会話だ。

「ミラさんって、何歳ですか?」

 結構、いきなりな内容だった。

「16歳です」
「あ、じゃあ1つ上ですね。私は15歳なんです」
「年下なんですね」
「それでその、ミラさんはなんで1人で冒険者しているんですか? 普通はパーティを組みますよね?」
「その、私は冒険者になりたくてなったというより、依頼を受けて生活のためになったんです。なのでその……」

 前を歩いていたアリスが、その話の途中でメイに「こらっ」と声をかける。

「ダメでしょ? 冒険者の事情を詮索しちゃ」
「あ、ごめんなさい。やっぱり、言わなくていいです」

 メイは口元に手を当てて、慌てて発言を撤回する。

「いえ、そこまでは……」

 ミラにとっては、この前の絶縁騒動で、そのへんはあまり後ろ向きに考えていない。むしろ気分は少し前を向いた気がする。

 それよりも気になったのは、アリスという女の子だった。
 ミラに対してあまり良い印象を持っていなかったような立ち振舞だったが、意外にも話題に気遣ってくれた。

 ソーニャという子は、この状況を静かに見守るだけで、ほとんど喋らない。

 その姿は、実家に居たときよく見た普段の次女の様子にそっくりだった。
 どこかミステリアスで、必要以上に会話をしようとしない。掴みどころもないから、話すきっかけもない。

「その、私も聞いていいでしょうか? このパーティについてですが、どうしてこの4人で組んだのですか? 女性が多いのは珍しいですよね」

 その質問に、女性3人が顔を見合わせた。
 代表して、メイが答える。

「このパーティは、村の近所の仲良し4人で組だったんです」
「じゃあ、みんな小さい頃からお友達ってことですか?」

 それに少し照れた感じでアリスが答えた。

「まあ、そうなるわね」

 メイが理由を補足する。

「あのですね、男性の多いパーティに最初入ろうとしたんです。けど、3人が別々のパーティに別れて加入するのは嫌だとなって、何より、ヴォルフと一緒にいたいのは自分だとみんなが言い出して、収集つかなくなったんです。だったらもう、この4人で組もうってなって」

 ミラは頷きながら、最後のほうには「そうなんですね」と語尾が下がる。

 仲良しで組んだだけと思ったら、意外な事情だった。


***


 しばらく歩いて、ようやく魔物の生息域に入る。

 いままで会話していた楽しげな雰囲気はなく、4人とも緊張した様子だ。ミラも当然、周囲を警戒し、緊張の面持ちで歩を進める。

 ざわざわと木の葉が揺れるのを聞いて、全員が過剰に反応してしまうのだった。

 そして、バタリ、バタリと地面に体を叩きつけたような音が鳴る。

 ヴォルフとソーニャの2人が突然倒れたのだ。

 バタリ、バタリ。

 遅れてアリスとメイの2人も倒れた。

 ミラは声をかける。

「え? 大丈夫ですか! 一体どうして……」

 その状況に、ミラは急に背中に冷たい水を浴びせられたかのようだ。
 
(何が起きているの……)
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