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【SS(日常話)】
1-SS(4).弟弟子が増える、秘密のメニューと化す
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ミラはいつものようにギルドの訓練場で弟子に訓練を付けているときだった。
ギルドが少し慌ただしくなって、誰かが訓練場に入ってくる。
そこにはミラと弟子たちが訓練する様子を熱心に見ている者がいた。2人の若い男性とギルド受付嬢のスフィアだ。
ミラにはその人物を見た記憶がなく、ミラがこの街に来てから初めて見かけた人だ。町の外の人間か、このへんに住むニアミスした誰かだろうと予想する。
1人は騎士の格好をしており、剣を腰に下げている。男性ではあるがその黒髪は長く、鋭い目つきをしている。そして、もう1人の男性は、柔和な笑顔をしており、スフィアの緊張具合から、どこかの偉い人だと思われた。
しばらく訓練を観察して、2人は何かを話し合っていた。
ミラたちが動きを止めると、スフィアが駆け寄ってきて、ミラに話しかける。
「あの、ミラさん。こんにちは。いま大丈夫ですか?」
「どうしました?」
「実はこの方たちが、先ほどの訓練を見て、自分たちも参加したいと……」
どうもミラに稽古をつけてほしいのだという。
それにしても珍しい。
スフィアは、ミラにあまり男性を近寄らせようとしなかった。ギルドで男性の顔見知りが少ないのは、スフィアがいつも目を光らせているためである。
ミラ自身も理由はよく知らない。冒険者は素行が悪いからとだけ聞いていた。
だから、スフィアがミラの元に男性を連れてくるのは、めったに無い。薬師の師匠依頼のときや冒険者チームに引き合わせたときに1人いたくらいで、とても珍しいことだ。
「こんにちは、ミラさんでいいのかな? 僕はこの辺り一帯を治める領主の息子で、名はレモンドだ。よろしく」
「よろしくお願いします」
ミラはレモンドと握手する。
この地の領主ということで、当然この街も治めていた。
つまり、この一帯を仕切る領主家の貴族令息である。
「実は訓練を見せてもらって感激してね。少しでも学びになればと、僕たちも訓練に参加したいと思ったんだ」
ミラはそこで勘違いを正すことにした。
「いえ、これは『訓練』ではなく、ほんの『遊び』ですけれど……」
「遊び? う~ん、じゃあそれに僕たちも混ぜてもらえないかな?」
レモンドは訓練という言葉にこだわりがあったわけではないのか、弟子の少年少女を見た後に頷いて提案した。
子供相手だから『遊び』という言い方をしたのかもしれないと、勝手に誤解する。
「もちろんですけど、2人ともいいですか?」
「ミラ姉ちゃんがいいなら」
「うん、私も他の剣技が見れるし、もちろんだよ」
弟子たちは相変わらず前向きな返答だった。
シュリは特に元気いっぱいだ。
この前何があったのかは断片的に聞いたが、それ以来、シュリは他流派の剣技を身に付け、ミラの剣術(受け流し)にも幅をもたせられるようになった。他の人が加われば、またよい刺激になるかもしれない。
「わかりました。えっと、そちらの方は?」
「ああ、もちろん2人ともだ。さあ、自己紹介するんだ」
そこで、髪の長い方の男性が挨拶をした。
「私はリュグナーだ。よろしくたのむ。この領地の護衛騎士隊長をしている」
先ほどは睨んでいるような鋭い目線だった。というよりも、常時その鋭い目をしている。単純に目付きが鋭いのだとわかった。
淡白な話し方は性格だろうか。きっぱりとしていて、騎士として忠義的な人物だと分かる。
「え……、隊長の方ですか?」
ミラは驚いた。
そんな人がわざわざミラのお遊び(の訓練もどき)に参加するのかと。
「そうだ」
間髪入れず、肯定された。
剣を下げている様子から、ミラも騎士っぽいとは思ったが、まさか騎士隊長は予想外だ。
領主の息子が視察に来て、それに護衛として付いてきたらしく、そこでミラの訓練を見たのだという。
「では、どちらから?」
ミラは、木剣を構えて、2人も同じように木剣を手にした。
最初はレモンドからだった。
彼も一応、剣術らしきものを身に着けてはいるが、本職ではないと分かる。このへんは戦争もないし、戦う機会も少ないからだ。
領主が先頭で魔物討伐をすることも少ないため、型のしっかりした実践の少ない人物と分かる。
「はぁ~~!」
打ち込みに対して、ミラはその動きを避けて、背後から首元に剣を軽く触れた。
もしこれが鉄剣なら首が落ちていた。
それを何度か繰り返し、今度はミラが打ち込みをする。
その早さについていけず、レモンドは地面にへたり込んでしまった。
「これは……きついな」
体力がもたなかった様子だ。
そこにウィントが「おっさん、だらしない」と言い、シュリが「おじさん大丈夫。体力がないんじゃ仕方ないよ。それにその遅い受けじゃミラお姉ちゃんの剣を避けるのは難しいよね」と声をかけた。
「おっさんって……、まだ19歳なんだけどね」
割と領主令息に失礼なことを言う子どもたちである。
なぜかレモンドの方もそれには怒ってはおらず、「おっさん」「おじさん」呼びにショックを受けていた。
「2人とも、ダメですよ。これから体力も付きますし、きっと動きも良くなりますからね?」
ミラも見当違いな方にフォローを入れた。
見守っていたスフィアが小声で「ミラさん、そこじゃないですよ」と言うのが聞こえた。
次は自分の番とばかりに、リュグナーはミラの正面に立って構える。
「次は私の相手してもらいたい」
「はい、来て下さい」
鋭い動きで木剣の一撃を放つが、ミラにあっさりかわされる。
二の次、三の次、と攻撃を繰り出すが、一度も当てることができず。
息が切れ始めた頃に、木剣の先を地面にさして膝をついた。
「くっ、やはり当たらないか」
「受けの方が長くなってしまいましたけど、次はこちらが打ち込みますか?」
少し疲れている様子を見て、ミラが声をかけた。
「いや、少しだけ待ってくれ」
ウィントたちはこの程度では疲れない。
このときも弟子の2人は疲れることなく互いに打ち合っている。
そして、ミラに方向を変えて2人で打ち込みに来た。
「ミラ姉ちゃん! 覚悟!」
「行くよ、ミラお姉ちゃん!」
2人が打ち込んできた攻撃を同時に捌いて、ウィントとシュリが剣を交える。2人とも、「なぜ?」という顔になった。
「あれ?」
「どうして?」
力の方向を変えられて、互いに連携したはずなのに、仲間同士で木剣をぶつけ合っていた。
「連携をしたいのなら、もっと息を合わせないと」
ミラもそこまで詳しくはないが、以前一緒になった冒険者チームは、同郷の幼馴染というだけで、兄弟姉妹でもないのに弟子の2人よりも息が合っていた。
普段から一緒に戦う経験が多いのだろう。それとも別の何かが理由なのか。
それが弟子の2人にはなく、思いつきで連携攻撃してきたからだ。
ミラから見ると、隙が大きすぎる。
リュグナーと同じくらい打ち合った頃に、背後から声が聞こえた。
「待たせたな」
「では、リュグナー様も打ち込んで下さい」
ミラは2人同時に相手をしながらリュグナーにも加わるように言った。
「わかった。だが、この弟子の子供2人はなぜ息が切れていない?」
それにはミラから距離をとったウィントが答える。
「あたりまえだろ? 毎日肉体の自主訓練してるんだ」
シュリも頷く。
「うん、そうだよ。ポーションも飲んでるからね」
「肉体の自主訓練と……ポーション?」
肉体訓練は分からなくもないリュグナーだが、ポーションのことはよくわからなかった。
いや、その前に、本当にそれだけでこの体力は作り上げられたのだろうかと疑念を持つ。
「じゃあ、どうかその方法を私にも後で教えてくれ」
「どうする、ミラ姉ちゃん?」
ミラはなぜ許可を取るように聞くのかわからず、首を傾げた後、ウィントに答えた。
「わかりました。では、後でポーションのことを含めてご説明します」
「ありがとう。その秘密は必ず守る。よし、準備ができた。行くぞ!」
別に隠してもいない体力メニューやポーションのことを律儀に広めないと心に誓っている様子だ。ミラにはさっぱりである。
そこに、レモンドも声をかけた。
「僕もいいかな?」
「ええ、もちろん」
「ありがとう、じゃあ、4人で打ち込んでも?」
レモンドは、自分たちばかり鍛えられて、ミラが練習になっていないのではと危惧し、疲れた体を押して提案した。
「はい、来て下さい」
4人を相手にミラは攻撃を受け流し続けた。
それぞれ力の違う4人の攻撃を受け流すことは、ミラを剣術における静の極地のさらにその先を極めんとする修行になっていた。
あの魔人よりも強力な攻撃をする相手が出た時に向けて、受けて捌くためのさらなる力となっていく。
参加した2人がへばって、地面に座り込んだ。
ミラとの打ち合いだけでなく、ウィントたち弟子とも打ち合って、リュグナーは体力の限界まで続けた。弟子の2人から何かを吸収しようとしていたようだ。
その後も弟子の2人と打ち合って、お腹が空いた頃にその日は解散となった。
ついでにレモンドたち2人には、特製ポーションと肉体訓練の詳細について教えた。
なぜかレモンドとリュグナーが真剣にそれを聞き、自分たちも実践すると言い出す。
ミラに新たな弟子ができたのだった。
ウィントやシュリにとっての弟弟子である。リュグナーは弟子2人にもほとんど当てることができずに、また来ると悔しそうに言っていた。
それから度々、リュグナーが弟子のウィンとのもとへ来るようになるのは、また別の話である。
一緒に訓練場から出る時、レモンドがミラに声をかけた。
「あ、そうだ。実はミラさんに少し相談があってね。今度、領主の館に来てくれないか?」
訓練のことを除けば、本当はそれが本題だったようだ。
「えっと、もちろんいいですけど……」
「あ、警戒しなくていいよ。領主の使いとしてお礼を言うのが仕事なんだ。ここでもいんだけど、領地の決まり事でね。正式に招くことになっているんだ」
呼びつけるのではなく、自分から来てくれとわざわざ出向いてくる当たり、領民へのその優しさが伝わってくる。
「そういうことですね。わかりました」
深海クラゲや魔人のことは、領地内で起きたことだから、領主家としては顛末を知っているのだろう。この地の危機を誰が助けたのかもだ。
その後も、レモンドの個人的な相談を聞いたりして、その日はミラにとって目まぐるしくもいつもとは少し違った日常を過ごしたのである。
余談だが、レモンドは、領主の館に滞在する間、ずっとミラが訓練の相手をすることになった。
ギルドが少し慌ただしくなって、誰かが訓練場に入ってくる。
そこにはミラと弟子たちが訓練する様子を熱心に見ている者がいた。2人の若い男性とギルド受付嬢のスフィアだ。
ミラにはその人物を見た記憶がなく、ミラがこの街に来てから初めて見かけた人だ。町の外の人間か、このへんに住むニアミスした誰かだろうと予想する。
1人は騎士の格好をしており、剣を腰に下げている。男性ではあるがその黒髪は長く、鋭い目つきをしている。そして、もう1人の男性は、柔和な笑顔をしており、スフィアの緊張具合から、どこかの偉い人だと思われた。
しばらく訓練を観察して、2人は何かを話し合っていた。
ミラたちが動きを止めると、スフィアが駆け寄ってきて、ミラに話しかける。
「あの、ミラさん。こんにちは。いま大丈夫ですか?」
「どうしました?」
「実はこの方たちが、先ほどの訓練を見て、自分たちも参加したいと……」
どうもミラに稽古をつけてほしいのだという。
それにしても珍しい。
スフィアは、ミラにあまり男性を近寄らせようとしなかった。ギルドで男性の顔見知りが少ないのは、スフィアがいつも目を光らせているためである。
ミラ自身も理由はよく知らない。冒険者は素行が悪いからとだけ聞いていた。
だから、スフィアがミラの元に男性を連れてくるのは、めったに無い。薬師の師匠依頼のときや冒険者チームに引き合わせたときに1人いたくらいで、とても珍しいことだ。
「こんにちは、ミラさんでいいのかな? 僕はこの辺り一帯を治める領主の息子で、名はレモンドだ。よろしく」
「よろしくお願いします」
ミラはレモンドと握手する。
この地の領主ということで、当然この街も治めていた。
つまり、この一帯を仕切る領主家の貴族令息である。
「実は訓練を見せてもらって感激してね。少しでも学びになればと、僕たちも訓練に参加したいと思ったんだ」
ミラはそこで勘違いを正すことにした。
「いえ、これは『訓練』ではなく、ほんの『遊び』ですけれど……」
「遊び? う~ん、じゃあそれに僕たちも混ぜてもらえないかな?」
レモンドは訓練という言葉にこだわりがあったわけではないのか、弟子の少年少女を見た後に頷いて提案した。
子供相手だから『遊び』という言い方をしたのかもしれないと、勝手に誤解する。
「もちろんですけど、2人ともいいですか?」
「ミラ姉ちゃんがいいなら」
「うん、私も他の剣技が見れるし、もちろんだよ」
弟子たちは相変わらず前向きな返答だった。
シュリは特に元気いっぱいだ。
この前何があったのかは断片的に聞いたが、それ以来、シュリは他流派の剣技を身に付け、ミラの剣術(受け流し)にも幅をもたせられるようになった。他の人が加われば、またよい刺激になるかもしれない。
「わかりました。えっと、そちらの方は?」
「ああ、もちろん2人ともだ。さあ、自己紹介するんだ」
そこで、髪の長い方の男性が挨拶をした。
「私はリュグナーだ。よろしくたのむ。この領地の護衛騎士隊長をしている」
先ほどは睨んでいるような鋭い目線だった。というよりも、常時その鋭い目をしている。単純に目付きが鋭いのだとわかった。
淡白な話し方は性格だろうか。きっぱりとしていて、騎士として忠義的な人物だと分かる。
「え……、隊長の方ですか?」
ミラは驚いた。
そんな人がわざわざミラのお遊び(の訓練もどき)に参加するのかと。
「そうだ」
間髪入れず、肯定された。
剣を下げている様子から、ミラも騎士っぽいとは思ったが、まさか騎士隊長は予想外だ。
領主の息子が視察に来て、それに護衛として付いてきたらしく、そこでミラの訓練を見たのだという。
「では、どちらから?」
ミラは、木剣を構えて、2人も同じように木剣を手にした。
最初はレモンドからだった。
彼も一応、剣術らしきものを身に着けてはいるが、本職ではないと分かる。このへんは戦争もないし、戦う機会も少ないからだ。
領主が先頭で魔物討伐をすることも少ないため、型のしっかりした実践の少ない人物と分かる。
「はぁ~~!」
打ち込みに対して、ミラはその動きを避けて、背後から首元に剣を軽く触れた。
もしこれが鉄剣なら首が落ちていた。
それを何度か繰り返し、今度はミラが打ち込みをする。
その早さについていけず、レモンドは地面にへたり込んでしまった。
「これは……きついな」
体力がもたなかった様子だ。
そこにウィントが「おっさん、だらしない」と言い、シュリが「おじさん大丈夫。体力がないんじゃ仕方ないよ。それにその遅い受けじゃミラお姉ちゃんの剣を避けるのは難しいよね」と声をかけた。
「おっさんって……、まだ19歳なんだけどね」
割と領主令息に失礼なことを言う子どもたちである。
なぜかレモンドの方もそれには怒ってはおらず、「おっさん」「おじさん」呼びにショックを受けていた。
「2人とも、ダメですよ。これから体力も付きますし、きっと動きも良くなりますからね?」
ミラも見当違いな方にフォローを入れた。
見守っていたスフィアが小声で「ミラさん、そこじゃないですよ」と言うのが聞こえた。
次は自分の番とばかりに、リュグナーはミラの正面に立って構える。
「次は私の相手してもらいたい」
「はい、来て下さい」
鋭い動きで木剣の一撃を放つが、ミラにあっさりかわされる。
二の次、三の次、と攻撃を繰り出すが、一度も当てることができず。
息が切れ始めた頃に、木剣の先を地面にさして膝をついた。
「くっ、やはり当たらないか」
「受けの方が長くなってしまいましたけど、次はこちらが打ち込みますか?」
少し疲れている様子を見て、ミラが声をかけた。
「いや、少しだけ待ってくれ」
ウィントたちはこの程度では疲れない。
このときも弟子の2人は疲れることなく互いに打ち合っている。
そして、ミラに方向を変えて2人で打ち込みに来た。
「ミラ姉ちゃん! 覚悟!」
「行くよ、ミラお姉ちゃん!」
2人が打ち込んできた攻撃を同時に捌いて、ウィントとシュリが剣を交える。2人とも、「なぜ?」という顔になった。
「あれ?」
「どうして?」
力の方向を変えられて、互いに連携したはずなのに、仲間同士で木剣をぶつけ合っていた。
「連携をしたいのなら、もっと息を合わせないと」
ミラもそこまで詳しくはないが、以前一緒になった冒険者チームは、同郷の幼馴染というだけで、兄弟姉妹でもないのに弟子の2人よりも息が合っていた。
普段から一緒に戦う経験が多いのだろう。それとも別の何かが理由なのか。
それが弟子の2人にはなく、思いつきで連携攻撃してきたからだ。
ミラから見ると、隙が大きすぎる。
リュグナーと同じくらい打ち合った頃に、背後から声が聞こえた。
「待たせたな」
「では、リュグナー様も打ち込んで下さい」
ミラは2人同時に相手をしながらリュグナーにも加わるように言った。
「わかった。だが、この弟子の子供2人はなぜ息が切れていない?」
それにはミラから距離をとったウィントが答える。
「あたりまえだろ? 毎日肉体の自主訓練してるんだ」
シュリも頷く。
「うん、そうだよ。ポーションも飲んでるからね」
「肉体の自主訓練と……ポーション?」
肉体訓練は分からなくもないリュグナーだが、ポーションのことはよくわからなかった。
いや、その前に、本当にそれだけでこの体力は作り上げられたのだろうかと疑念を持つ。
「じゃあ、どうかその方法を私にも後で教えてくれ」
「どうする、ミラ姉ちゃん?」
ミラはなぜ許可を取るように聞くのかわからず、首を傾げた後、ウィントに答えた。
「わかりました。では、後でポーションのことを含めてご説明します」
「ありがとう。その秘密は必ず守る。よし、準備ができた。行くぞ!」
別に隠してもいない体力メニューやポーションのことを律儀に広めないと心に誓っている様子だ。ミラにはさっぱりである。
そこに、レモンドも声をかけた。
「僕もいいかな?」
「ええ、もちろん」
「ありがとう、じゃあ、4人で打ち込んでも?」
レモンドは、自分たちばかり鍛えられて、ミラが練習になっていないのではと危惧し、疲れた体を押して提案した。
「はい、来て下さい」
4人を相手にミラは攻撃を受け流し続けた。
それぞれ力の違う4人の攻撃を受け流すことは、ミラを剣術における静の極地のさらにその先を極めんとする修行になっていた。
あの魔人よりも強力な攻撃をする相手が出た時に向けて、受けて捌くためのさらなる力となっていく。
参加した2人がへばって、地面に座り込んだ。
ミラとの打ち合いだけでなく、ウィントたち弟子とも打ち合って、リュグナーは体力の限界まで続けた。弟子の2人から何かを吸収しようとしていたようだ。
その後も弟子の2人と打ち合って、お腹が空いた頃にその日は解散となった。
ついでにレモンドたち2人には、特製ポーションと肉体訓練の詳細について教えた。
なぜかレモンドとリュグナーが真剣にそれを聞き、自分たちも実践すると言い出す。
ミラに新たな弟子ができたのだった。
ウィントやシュリにとっての弟弟子である。リュグナーは弟子2人にもほとんど当てることができずに、また来ると悔しそうに言っていた。
それから度々、リュグナーが弟子のウィンとのもとへ来るようになるのは、また別の話である。
一緒に訓練場から出る時、レモンドがミラに声をかけた。
「あ、そうだ。実はミラさんに少し相談があってね。今度、領主の館に来てくれないか?」
訓練のことを除けば、本当はそれが本題だったようだ。
「えっと、もちろんいいですけど……」
「あ、警戒しなくていいよ。領主の使いとしてお礼を言うのが仕事なんだ。ここでもいんだけど、領地の決まり事でね。正式に招くことになっているんだ」
呼びつけるのではなく、自分から来てくれとわざわざ出向いてくる当たり、領民へのその優しさが伝わってくる。
「そういうことですね。わかりました」
深海クラゲや魔人のことは、領地内で起きたことだから、領主家としては顛末を知っているのだろう。この地の危機を誰が助けたのかもだ。
その後も、レモンドの個人的な相談を聞いたりして、その日はミラにとって目まぐるしくもいつもとは少し違った日常を過ごしたのである。
余談だが、レモンドは、領主の館に滞在する間、ずっとミラが訓練の相手をすることになった。
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