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第4章 このアイテムがすごい!そしてロゼも凄い!
#37 バンズゥの酒にツマミを添えよう
しおりを挟む日が暮れ始めた。
猫獣人達の棟梁バンズゥの家には一日の仕事を終えた鳶職、あるいは土木に携わる職人達が集まってきていた。
「親分の目が治ったんだって?」
「ああ、何日かかかるが元通りになるそうだ」
「司祭サマでも来てくれたってのかい?」
「だが、アイツらなんて生臭坊主だろ?お祈りより金貨が好きだって言う…」
「それがミニャが連れて来たっていう…」
「商人?それがなんで目を治せるんだ?」
「知らねえよ、見てた奴が言うには一言呪文を唱えたら親分の傷が治って目が開いたって…」
「そりゃ凄えな。んで、その商人ってのは…」
「ほら、あそこ。親分の横に…」
そんな話し声が聞こえてくる。猫獣人の顔役であるバンズゥの目の治療をした俺は恩人をこのまま帰したんじゃ男がすたると引き止められた。
「酒だ、酒!酒買ってこい」
バンズゥはそう言って小さな布袋を若い衆に投げた、おそらく財布であろう。それで酒を買えるだけ買ってこいと言うのだろう。すぐさま若い獣人達が酒を買いに走っていく。
「旦那、目が治ったんだって?」
「親分さん」
それから次から次へと人が集まってくる、みんな猫の獣人達だ。どうやら職人だけでなく、噂を聞きつけてか近所の人々も続々と集まってきているようだ。
「おう、心配かけたな。だが、この通りこちらの客人のおかげで見えるようになるそうだ」
やってきた人々にそう言いながらバンズゥが対応する。そこに酒樽を積んだ荷車で引いて若い衆達が戻ってきた。
「親分、お待たせしやしたッ!!」
「おうっ!客人、何もねえがとりあえず酒だけはある。存分にやってくれ!来てくれた皆の衆もな。ああ、ここじゃ狭ェな。よし、裏の庭でやるとしようぜ」
そう言ってバンズゥは自分の所の職人達も近所の人々も家の裏庭の方へ行くように促した。なかなかに広い、バンズゥによれば木材などの加工を事前にここでする事もあり広めのスペースになっているようだ。ちょっとしたコンビニ店舗プラス駐車場、そのくらいの広さがある。
その庭の端の方に酒樽を置いて若い衆が次々に手桶のような物に汲んでいく。匂いからするとビールに近いから麦を原料にした酒だろうか。かと言って日本で飲むビールのように細かな泡が発生しているようはものではない、時折表面にポコォ…ポコォ…と小さな泡が浮いてくる。おそらく火入れをしておらず酒を発酵させている菌がまだ生きているのだろう。
また、庭の別の場所を見てみれば若い衆が石を積みかまどを組んで焚き火を始めていた。おそらく木を加工をした後に出た廃材であろう。日本ならゴミだがガスや電気のない異世界ではこれが燃料になる。
「ホントは魚を準備できりゃあなァ…、ここんとこ不漁だそうでなかなか手に入りゃしねえ」
バンズゥが良い酒のツマミになるんだが…と残念そうに言う。ミニャもそうだが猫獣人族は肉やパンも食うが、やはり一番は魚であるらしい。酒の肴には魚、飲めない者でもご馳走と言えば魚、それが猫獣人族の食の好みだ。
代わりに…といった感じでバンズゥの奥さんをはじめとして近所の女性達が庭の片隅にある畑のような所から野菜を…どうやら人参とか芋のような物を抜いている。それをスープにするようだが…。
「待てよ…」
俺はふと思い付いた事があった。
「なあ、バンズゥさん」
俺はバンズゥに声をかけた。仮にも相手は猫獣人族の顔役、それを気軽に呼び捨てという訳にはいかないだろう。
「その酒の肴、俺に作らせてくれないかな」
「ん?客人にかい?そりゃあ悪いぜ…」
バンズゥが申し訳なさそうに言う。
「いや、ちょっと作ってみたいモンを思い出したんだよ。やらせてくれ」
「客人がそう言うなら…」
そんな訳で俺は焚き火燃えるかまどの方へと向かうのだった。
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