神殺しのなんでも屋〜身勝手な理由で異世界に巻き込まれ召喚された俺は神を殺して好き勝手する事にした〜

ミコガミヒデカズ

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第5章 カグヤさんはお怒りです

第58話 崩壊、冒険者ギルド(ざまあ回)

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砲撃形態ほうげきモードに移行…」

 がしゃんっ!!

 ロゼが座るキャタピラ式車椅子の背もたれに折りたたまれていた筒状のものが前方に伸びた。ロゼの右肩、左肩のそれぞれ上部に位置している。その機能はロボットアニメ好きならすぐにピンとくるだろう、いわゆる砲身である。

 筒の太さは500ミリリットル入りペットボトルよりやや太いくらい、金属性の鈍い光を放つ肉厚のものであった。

「な、なんだありゃ!?」

「さあ…、ただの筒だろ?あんなモン…」

「へっ!?ただのこけおどしだろォ!何が出来るってんだ!」

 が何であるかを理解していない連中はやれ何も起きねえじゃねえか、どうした何かやるんだろと好き勝手に言ってくる。

「そうかい、そんなに言うならくれてやる。ロゼ、やれーッ!!」

「了解。72ミリ無反動大砲キャノン弾、装填そうてん!!」

「遠慮深いなあ、一番小さな弾頭なんて」

 俺は苦笑いしながら呟いた。

「計算上、これで十分。標準の144ミリ弾ではギルド外にも被害が出る」

「そうか、それなら仕方ない」

「出力も下げて…砲撃ファイヤーッ!!」

 ロゼの砲撃、キャタピラ式車椅子が発射に合わせて一度大きく震えるように動いた。

 ぶわんッ!!!!

 次の瞬間、空気が揺れた。いわゆる衝撃波というやつだろう。72ミリ無反動大砲キャノン弾は魔力で砲弾を発射するから火薬などを使って弾を飛ばす地球の大砲のように発射音はしない。

 しかし一方で着弾した砲弾は話は別だ。物がぶつかれば音はする。カウンター付近に命中した砲弾は『ドカーン!!』と派手な音を立てカウンターやら床やらを破壊し大穴を空けた。

「うーん、まさしくロゼキャノン」

 俺がその威力に感慨深く呟いていると誰かが声を上げた。

「な、なんて事を…!や、やいッ、なんて事しやがる!」

 その声を皮切りに次々と非難の声が上がる。やれひどすぎるだの、どういうつもりだなどと好き勝手ばかりだ。腹が立ってくる。

「なんだ?不服か?それならお代わりをくれてやるぞ?物理的に黙らせてやろうか」

「「「「ッ!!!!?」」」」

 俺がそう言うとギルド内が静まり返った。

「そうだな…。ロゼ、さすがに死人を出すと後が面倒くさそうだから天井をブチ抜く程度にしてくれ。弾はさっきよりデカい144ミリの方で頼む」

「分かった、144ミリ低反動大砲キャノン装填そうてん…」

「撃った弾が街中とかに着弾しないように気をつけてな。無関係な人は巻き込まないようにしないと…。悪いのはあくまで盗賊に加担している冒険者ギルド、善良な一般の人には優しくしないとね」

「分かった、この向きに撃てば向こうは海。被害はまず出ない」 

「うん、さすがロゼ。頭の回転が早い、助かるよ。それでいこう、人殺しも辞さない悪質な盗賊どもの根城に一発食らわせる、人として正しい事をしないとな。悪人に遠慮なんていらん!悪いのは全部こいつらだ!」

「分かった、私の司令官コマンダー

 ロゼが砲身を斜め上45度に向けた。

砲撃ファイヤーッ!!」

 次の瞬間、エスペラント冒険者ギルドの建物の天井部分の大部分は消えてなくなっていた。残っているのは俺達が背にしていた出入り口付近の天井くらいだ。夕暮れ時の空が見える。

「文句があるなら遠慮なく言ってくれ。なあに別に悪いようにはしないさ、お礼にプレゼントをあげるくらいだよ。天井に穴を空けたのと同じモンをな」

 俺は穴が空いている先程まで天井だった空間を指差した。

「誰も文句は無いようだな?なら帰るとするか」

「それが良い、向こうに雨雲が見える。あと一時間もせずにこの辺りにも降ってくる」

「あっ、そうなの?さすがロゼ、なんでも知ってるんだな」

 それなら早いトコこんな所からはオサラバしないとな。

「よし、帰るか。…そうそう、お前らくれぐれも変な気を起こさないように…。こちらは至って平和主義だ、要らぬ争いは好みじゃねえ」

「こ、ここまでしといて…」

 野次馬の一人がお前がそれを言うか…みたいな口ぶりをしている。

「心外だな、俺は無力な商人だ。それを盗賊が襲ってきた、いかに無力な商人でもハイハイとなすがままにはされたくない。だから死ぬ気で身を守っただけだ。お前ら冒険者で言うならモンスターが襲ってきたから退治した…それと大して変わらんだろ。もっともこっちのギルドの方がよっぽどタチが悪いがな」

「ぐぐっ!!?」

「それより雨が降るみたいだぜ。天井無いんだからなんとかした方が良い。雨に濡れちゃうぞ」

「俺ントコは冒険者ギルドからの工事の依頼は受けねえ!!」

 バンズゥが一際大きな声で言った。

「マルンの腕やりやがったのもそうだし、客人に牙剥いてきた奴らの建物なんて頼まれたって直してやるもんか!!」

 とびしょくとびしょくの棟梁でもあるバンズゥは怒り心頭だ。

「おう、てめえら!今から他の大工職人のトコに走れ。もし冒険者ギルドからの依頼を受けるようなヤツがいたら縁切りするってな。やるなら敵対、俺と事を構えたいっつうモンだと承知すると言っとけ!」

「「「「へいっ!!」」」」

 バンズゥの弟子の職人達、若い衆が頷いた。

「おい、良いのか?仕事の口が…」

「なあに心配いらねえ。なんたって冒険者ギルドより他の建物のが多いに決まってらあ!仕事は十分にあるぜ!」

「だが、すぐに雨になるぞ?若い衆が雨に濡れてしまうだろう」

「なあに、俺らは外仕事だ。暑いも寒いも雨も晴れもねえ」

 バンズゥはまっすぐに俺を見ながら応じた。

「なんか…すまないな。…そうだ、それなら俺に晩飯をご馳走させてくれ。昨日と同じ魚で…今度は焼かずに煮る料理だ。雨に濡れて帰ってくるなら体をあっためるようなヤツが良いかと思うんだが…」

「ほ、ほお…。お前さんが作るのかい?それならきっと美味えに決まってる!おい、お前ら!ボヤボヤしてねえでさっさと行ってこい!!」

「「「「へいっ!!!!」」」」

 そう言うと若い衆は外に飛び出していった。

「さて、と。んじゃ、けえるとするか、客人よお!!」

 傷が塞がったとは安静は必要。マルン少年を抱えてバンズゥが帰宅を促してきた。
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