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第4章 不意打ちから始まる高校生活
第53話 適切に…
しおりを挟む僕の河越八幡女子高校への復学第一日目は午前中に手続き、そして午後からは僕ひとりだけの為の入学式みたいなお披露目のようなものに出席し、体育館で少しの挨拶をしただけ。その直後には学校から逃げ出すというようなドラマティックなものになった。
そんな訳で僕の高校生活の初日は逃走劇から始まった。仕方ないと言えばそこまでだけど僕の河越八幡女子高校での本格的な活動開始は二日目以降からとなった。
とりあえず学校内に用意してもらった寮に泊まるのはやめておこうという事になり、昨夜は再び河越八幡警察署の柔道場に泊まる事になった。すると以前と同じように夕食を食べる時には婦警さん達が集まった。畳の上に座り皆で思い思いの食事をする。
「佐久間君、コナをかけるという言葉を知っているかい?」
緑茶を飲んでいた一山さんが不意にそんな事を言った。
「いえ…、知りません」
「そうか。一言で言えば口説く為の誘いをかけるといったような意味になるかな」
「えっ?口説く…?」
「うん。昨日の君の体育館での挨拶の時に…」
「えっ?あ、あれが口説く…?ぼ、僕はそんなつもりでは…」
「それがね、そうでもないのよ」
「崎田さん?」
「以前…、ウチの久能ちゃんに手を振り返した事があったわよね?」
「あ、はい。ミラーリング…、でしたよね?」
ミラーリングとは相手と同じ動作をする事だ。以前、警備についていた婦警さんが僕に手を振ってくれた時に振り返して…。そうしたら久能さんが積極的になった、僕が彼女に好意を持っている…そんな風に感じたようで…。
「でも、あれは…」
「そう、あの時は君に手を振っていた久能巡査に対して行なったものがミラーリングとなり彼女の恋愛感情が一気に爆発した…」
「は、はい。で、ですけど今回はあくまで最前列で見つけた真唯ちゃんに…」
「ああ、言っていたね。佐久間君はあくまで妹さんに手を振り返しただけだと…」
再び一山さんが話し始めた。
「はい。なので…」
「だが、他の生徒達はそんな事情を知らない。受け取り方によっては自分が手を振られた、自分に好意を持っている…そう感じた者もいるかも知れない。いや、事実…そうなっている。ややもすれば…君に見初められたと感じていても不思議ではない」
「そ、そんな…」
「あのくらいの年代は良くも悪くも純粋だ。ましてや君は天然モノの男性…、自分が思っている以上に魅力的なのだよ。感受性豊かな者にはさぞや衝撃的だろう。運命的な出会い、そんな風に思っても不思議ではない」
「そう言えば…」
一山さんの言葉に僕は思わず呟いた。あの時…、女子生徒の中には『私に手を振った』『いいえ、私よ!』と言ってた人も少なくなかったっけ…。あれは真唯ちゃんに向けて手を振ったものだけど中には自分に振ったと感じた女子生徒がいたとい後ろ事なんだろうか…。
「まあ、とりあえずは…君の高校生活は仕切り直しというところだな。それにしても…、逃してくれた校長先生はまさにファインプレーだ。あのまま学校内にいては女子生徒達が押し寄せていたかも知れない。幸い一晩おけば少しはクールダウンされるだろうが…」
浦安さんがフォローするように言った。
「浦安さんの言う通りだ。だからこそ…だからこそだ、明日が大事だぞ佐久間君。簡単ではないだろうが他の生徒達から適切な距離感に戻すんだ。リスタートだ、良いね?佐久間君」
言い聞かせるように、僕に語る一山さんの言葉がやけに印象的に響いたのだった。
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