シン・三毛猫現象 〜自然出産される男が3万人に1人の割合になった世界に帰還した僕はとんでもなくモテモテになったようです〜

ミコガミヒデカズ

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第4章 不意打ちから始まる高校生活

第57話 た…、多目的…トイレ…(ゴクリ…)。

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「別の場所で着替えてきます」

 僕は体育の授業で使うジャージが入った袋を手に教室を出ようとする。

 そもそも男女比があまりにおかしくなった世界、僕がしようとした『女子もいる教室でそのまま男子が着替える』というのは元の世界で言えば『男子ばっかりのクラスで一人だけいる女子が更衣室にも行かずそのまま教室で着替える』のと同じようなものだ。し、下着とか見られちゃうじゃないか!

「で、でもさッ!さ、佐久間君!」

「はい?」

 教室を出ようとした僕は呼び止められた。

「男子更衣室…この学校には無いよ」

「なん…だって…」

 僕は思わず呟いていた。そして同時に僕を褒めて欲しいとも思った、気軽に『なん…だと…』と言わなかった僕を…。言い方をちょっと変えただけだけど…。

「そ、そうだ!それならトイレの個室とかで着替えれば…」

「この階には女子トイレだけだけど…」

「さすがに佐久間君でも女子トイレに入るというのは…」

「う、薄い本みたいな事になっちゃうでござる…」

「ア、アタシはそれも良いかなぁ~とか…ちょ、ちょっとだけ思うけど…、なぁ~んて…」

「けしからん!是非やってくれ!」

 クラスメイト達の反応は様々、それはちょっと…という人もいればなんだなんだ言いながらも望んでいる人もいる。しかし、僕の頭は一気に冷えた。そう言えば男子更衣室って案内されてなかった…。

「あっ…」

 そうだ、つい先日までここは女子高だったんだっけ。って言うか薄い本て何だ!いや、待てよ、それどころじゃない。着替えないと…そうだ。

「確か、多目的トイレって無かったでしたっけ?バリアフリーの一環で、そこだったら…」

 僕は思い出した単語を絞り出した、そこなら性別も関係なく使えるはずだ。

「多目的…」

「トイレ…」

 ゴクリ…。

 誰かが生唾なまつばを飲む音がした、言っておくけど僕ではないよ。

「そ、そっかあ!た、多目的トイレねっ!」

「ア、アレがあったかあ~!」

「そうだよ、色々な事に使えるよね、多目的だし!」

「ひ、広いから服を脱いでも平気だよね。ふ、二人で入ったり…とか。ア、アハハ…」

 妙な雰囲気と連帯感のようなものをかもし出しながらクラスメイト達が口々に色々な感想を言っている。

「えっと、場所は…?」

「あ、多目的トイレは校舎一階の真ん中へん。昇降口に近い所だよ」

「一階…、ありがとうございます。じゃあ早速…」

 僕は今度こそジャージを入れた袋を手に教室を出ようとする。

「さ、佐久間君!授業の場所まで案内するからさ、着替えたらそこで待っててね!」

 そんな声がかかった。そうだ、僕は体育の授業があるのは知ってるけど何処で何をやるかは聞いてなかったっけ…。グラウンド?体育館?集合場所を知らないんじゃ授業も何もあったモンじゃない。

 そう思った僕は教えられた通り、校舎一階の中央あたりにある多目的トイレに向かって駆け出したのだった。

……………。

………。

…。

 せっかくクラスの子が授業の場所まで案内してくれるというのにお待たせするのは申し訳ない。それにこの四時間目の体育の授業は一年A組だけではなくお隣のB組との合同で行われる、だから僕が遅れたらA組のみんなだけじゃなくB組のみんなにも迷惑がかかってしまう。

「B組か…、真唯ちゃんも一緒に授業か…」

 赤ちゃんだった真唯ちゃんと同じ学年になり、さらには同じ授業を受ける…考えて見れば不思議な話だ。

 ちなみに僕の着ている制服なのだが今まで女子校だったので当然ながら男子生徒はコレを着なさいという規定はなかった。そこでこの河越八幡女子高校の前身、河越八幡高校時代に男子生徒が着用していた学ランをそのまま使う事になった。その学ランやワイシャツなどをシワが出来ないように軽くたたみ袋に入れた。そして足早に多目的トイレを出た。

「うわっ!?」

 ずらり…。

 多目的トイレ前の廊下にはクラスの女子が勢揃いしていた。全員が夏用と言うか、ジャージではなく体操着。しかもどういう訳かハーフパンツではなくブルマである。

「み、皆さん…お、お揃いで…」

 僕より着替えに手間取るはずなのに勢揃いしている女子生徒達に尻込みしながらも僕はなんとか声をかけた。

「はあはあ…。う、うん、ダッシュで来た」

「そ、そうですか…」

「そ、それよりもさッ!」

「そうだよ、四時間目だよ!」

「今日はマラソンだったよね」

「グラウンド集合!」

 クラスメイト達の話を総合するとどうやら今日の体育は外でマラソンをするらしい。

「じゃあ急いで外に行かないと…。お待たせしてすいません、案内をお願いします」

「「「「「はーい!!」」」」」

 見事にハモるクラスメイト達。

「じゃあ、行こう!佐久間君!体育の先生は失敗しても怒ったりはしないけど遅刻とかにはうるさいんだぁ」

「そうなんですね」

「うんうん、沢野先生は基本優しいんだけどふざけたりはダメなんだよ」

「だいぶ年齢は上の人なんだけどすっごく元気…って言うか、パワフル?」

「うん、野生児って感じ!」

「へえ…」

 そんな会話をしながら靴を履き替えグラウンドに向かう。その中でクラスメイトの一人が気になる発言をした。

「さぁて、今日も元気に修行しようか!」

「ん?修行…?」

 授業の間違いじゃなくて…そんな風に思った時が僕にもありました。だけどクラスメイトの子が教えてくれた。

「沢野先生の体育はね、授業じゃなくて修行って言うんだよ」

 え…、なにその変わった言い方…。そうこうしているうちに授業を行うグラウンドにやってきた。B組の人達も既に到着している、その彼女達は僕の方を見るとザワザワし始めた。

「キャッ!?男子…」

「お、男の子だあ…」

「A組じゃなかったのは残念だったけど体育はB組も一緒だから私達も十分勝ち組かも」 

「ぐぬぬ…。A組の女子オンナどもめ、旧式陸戦型戦闘服《ブルマー》を着用しておる…」

「こ、こいつら、肌色面積を激しく変化させやがる…」

 口々に色々な事を言っているB組の女子達。よく見ればこちらのクラスの女子達はジャージを、中にはハーフパンツを着ている子もいる。B組の生徒である真唯ちゃんもジャージだ。小柄な彼女はジャージもよく似合っている、可愛い。

「B組はジャージやハーフパンツ…、あのウチのクラスのみなさんはとうして…その…ブルマーを…?」

 疑問に感じクラスメイト達に尋ねてみた。

「布地なんて飾りですよ」

「B組さんにはそれが分からんのです!」

 なんだか分からないけどウチのクラスの子達は凄い自信だ。ま、まあ良いと言うならそれで良いのだろう…多分。そう思っていたらやってくる人がいた。オレンジ色の髪が眩しい、ジャージを着たやや年配の女性だ。

「おーう、おメエ達、集まってるな。早速、修行を始めっぞ!」

 今、修行って言った!修行って言った!きっとこの人が体育の授業…じゃなかった、修行を担当する沢野先生なのだろう。その沢野先生は僕を見るとニッコリと笑って元気に声をかけてきた。

「オッス!オラ、沢野!おメエがウワサの男子生徒だな。オラ、わくわくしてきたぞ!」

「は、はい。よろしくお願いします」

 僕はなんとか返事をする事ができた。…それにしてもこの学校、特徴的な先生しかいないみたい…そんな事を思いながら僕は体育の授業ならぬ体育の修行を受けるのだった。
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