77 / 82
第5章 佐久間修、ここにあり!
第67話 放課後。佐久間君、部活とかやってたの?
しおりを挟む体育館での全校集会が終わった。クラスのみんなは大混乱といった感じだったけど今はなんとか落ち着いてきて一年A組の教室に戻ってきている。ちなみに今は一日の終わりのホームルーム中、それも終わりを迎えるところで担任の|出威女(でいお)先生が最後にまとめている。
「では、今日はこれまでだ…ムッ?」
僕達に話していた先生は何かに気づいたかのような反応を見せると教壇からすぐさま横っ跳び、教室の出入り口であるスライドドアの前にスタッと着地するやいなや勢いよくドアを開けた。
「きゃあああっ!!?」
たちまち起こる悲鳴、見れば何人かの女子学生達がスライドドアの外にいた。顔だけ前に出すような不自然な体勢をしている。
「貴様ッ、見ていたなッ!?」
パアアアアンッ!!!
片手は片目を隠すように当てながらもう片方の手で驚いている女子生徒達を『ビシィッ』と効果音がつきそうな勢いで指差す、同時に怯える彼女達。
「「ヒイイイイッ!!」」
「我慢ができずついつい覗きを…といったところだろうが…、指導はせねばならん。どれ…、指導室に同行願おうか…」
そう言うと出威女先生は覗きをしていた生徒達を連れて教室を出て行ってしまった。おそらくその指導室とやらにこれから向かうのであろう。
先生が教室を後にしてそこに僕らが残された、突然の展開に唖然としていたがそこは時間が過ぎれば落ち着いてくる。さすがに現役の女子高生達、誰かが声を発するとたちまち口数も声量も増してくる。
「ねえねえ、佐久間君っ」
そんな時、近くの女子生徒から声をかけられた。
「あっ、はい。えと…大林さん」
今日一日、授業中やらなんやらかんやら時間を総動員してクラスメイト達の顔と名前を一致させるのに全力を尽くした。その甲斐あっておそらくほとんどの人を覚える事ができたと思う。
今、声をかけてきたのは大林さん。下の名前はまだ覚えてないけど背の高い女の子だ。たしかバレーボール部じゃなかったっけ…。
「あっ、名前を…。ん、んんっ、さ、佐久間君。佐久間君って部活とか入ってたの?」
「ん?部活?」
「そ、そうそうっ!」
大林さんは緊張気味に言葉を続ける。
「授業、終わったじゃない?んで、ウチらは部活…バレーボールなんだけどね、これから行くんだけど…。佐久間君は昔、どうしてたのかなあ…って気になって…」
「あっ、それっ!私も気になる!」
「ウチも、ウチも!」
大林さんとの会話に他の子達も入ってくる。軽く僕の周囲が半円状に包囲されるような…そんな感じである。ちょっとしたプレッシャーを感じつつも僕はとりあえず応じる事にする。
「え、えっと…。ぼ、僕は何も部活とかには入ってませんでした。代わりにバイトを始めて…」
「バイト?ちなみに何のバイトしてたの?」
「あっ、それ聞きたい!」
「何々?何のバイト?」
よく分からないけど、なにやらみんながグイグイくる。その詰め寄り方には答えないわけにはいかないような…、有無を言わさぬような迫力を感じる…。これが某野球ゲームに登場する威圧感というやつだろうか。
「ぎゅっ、牛丼屋さんです。そこで店員さんをしてました」
「「「「へえぇぇ~~!!!」」」」
僕がバイトについて答えるとみんなが一斉に反応する。まるで僕の一挙手一投足に注目が集まっているんじゃないかという気さえしてくる。もっとも、転校生がしばらく注目を集めるのなんてよくある話。何日かしたらこの注目も自然と薄れていくだろう。
「ち、ちなみにどこの牛丼屋さん?」
「あっ、えっと…」
何気ない質問に僕も何の気なしに答える。
「学校からも近い、県道沿いの…吉田家さんです」
「えっ、キチギュー?」
キチギューというのは吉田家の牛丼という意味だ。今でもその呼び方してるんだ、そう思うとなんだか懐かしさのようなものを感じる。
「県道沿いのキチギューってさ、あの交番がある通りのヤツ?駐車場が広くて周りが田んぼで…」
「あっ、そうですそうです。たぶん、それです。あー、まだあるんだァ…。なんか懐かしいなあ…」
実質的にはそんなに懐かしいはずもないはずだがここ最近いろいろな事が起こったせいだろうか、そんな言葉が口をついて出ていた。
「じゃ、じゃあさ…」
ベリーショートの髪型が特徴的なクラスメイトが声をかけてくる、この子もバレーボール部所属の多治見さんだ。
「よ、よかったら行ってみない?」
「え?行くって…」
僕が多治見さんの言葉の真意が分からず問い返すと多治見さんの隣に立っている子が赤面して何やら呟き始めた。この子も背が高い、大林さんや多治見さんと同じバレーボール部に所属している粟原さんだ。
「イ、イク?お。男の子がイク…、そんなお言葉が聞けるなんて…」
「…コホン、その…佐久間君がアルバイトしてたっていう牛丼屋さんに…」
多治見さんがそう言うと周りの子達もそうしようよと誘ってくる。
「は、はあ…。でも、校門の前にはテレビ局の人が結構いるみたいだしご迷惑になっちゃうんじゃ…。それにあんまりテレビカメラに撮られるっていうのも…」
僕は懸念を口にする、どうにもマスメディアの人は苦手だ。遠慮なく撮っていくし、それがさも当たり前のように振る舞うしひどいのになると撮ってやってんだからありがたく思えと言わんばかりの態度…僕にはどうやっても好きになれそうにない。
「それなら大丈夫だよ!!」
そんな僕に多治見さんがアグレッシブに切り込んでくる。
「あのテレビ局とかから佐久間君を守れれば良いんだよねっ!モコッ、メグッ、やるよっ!アレを!」
「「アコッ!ま、まさかアレをッ!!」」
モコとは大林さん、メグとは粟原さんの下の名前だ。それぞれ裳子さんに恵さんだ。その彼女達が何やら盛り上がっている。
「全員にメールしてッ、今すぐ!…佐久間君…、安心して。必ず佐久間君の事はアタシ達が守るから…」
非常にオトコ前な顔をして多治見さんが僕に力強く言った。
□ ◼️ □ ◼️ □ ◼️
次回、修は街中へ?
第68話『バレー部、大地に立つ』
お楽しみに。
4
あなたにおすすめの小説
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
男女比1:50の世界に転生したけど、前世の感覚で普通に接してたら幼馴染も姉妹もお嬢様もみんな沼にハマっていった件 ~ダンジョンにも潜ります〜
ベリーブルー
ファンタジー
男女比1:50――この世界で男は、守られ、大切にされ、穏やかに生きることを求められる存在。
だけど蓮は違った。
前世の記憶を持つ彼には、「男だから」という枷がない。女の子にも男の子にも同じように笑いかけ、距離を詰め、気負いなく手を差し伸べる。本人にとってはただの"普通"。でもこの世界では、その普通が劇薬だった。
幼馴染は気づけば目で追っていた。姉は守りたい感情の正体に戸惑い始めた。名家のお嬢様は、初めて「対等」に扱われたことが忘れられなくなった。
そして蓮はと言えば――。
「ダンジョン潜りてえなあ!」
誰も見たことのない深淵にロマンを見出し、周囲の心配をよそに、未知の世界へ飛び込もうとしている。
自覚なき最強のタラシが、命懸けの冒険と恋の沼を同時に生み出す、現代ダンジョンファンタジー。
カクヨムさんの方で先行公開しております。
男女比5対1の女尊男卑の世界で子供の頃、少女を助けたら「お嫁さんになりたい!」と言って来た。まさか、それが王女様だったなんて……。
楽園
恋愛
「将来、あなたのお嫁さんになりたい」
10年前、俺は魔法の力で一人の少女を救った。
……そして現在。ここは男女比5:1の女尊男卑の世界。
男は女に「選ばれる」ためだけの存在する。
俺、アルトは、前世の記憶と女でさえ持っていない無限の魔力を隠し、父と静かに暮らす「モブ」になるはずだった。
「待っていましたわ、アルト」
学園で再会したあの時の少女は、驚くべきことにリリアーナ王女だった。
どうやら彼女、あの日の「約束」を本気で果たしに来たらしい。
(俺の平穏なモブ生活が……!)
最強を隠したい男と、その秘密ごと彼を手に入れたい王女の、すれ違い学園ファンタジー!
貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら
普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。
そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。
男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
↓
PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる