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第一章 田舎暮らしの神殺し

二十三章 とある四護聖の分析 其の陸

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「ジータ、落ち着いて。今回はシンクも本気じゃないし、僕も彼の実力を測ってみたかったから。別に何かを要求する気はないよ」

 しかし、バサラがそう言うもジータが指でバツマークを作り、声を上げた。

「それはノーです、御師様」

「ええ、理由は?」

「我々は騎士であり、四護聖という地位を受け持ってる身です。それが決闘をして、本気で無くても負けたと言う事実。それを噛み締めるのと決闘での敗北は勝者への対価です! なので、遠慮なさらず! 四護聖の地位とかどうですか?! 御師様が望むのであればシンクも納得するでしょう! ね! シンク!」

「お前に決定権はない。だが、先生が望むなら俺は構わんぞ」

「いやいや! そんなことしないよ?!」

 バサラは手を大きく振り拒否をするとジータが少しつまらなそうな表情をし、シンクは知っていたかのように笑っていた。

「なら、うーん、あ、今日の夕飯をシンクがご馳走して欲しいとかはどうだい? シンクの料理良くやってたから」

 バサラの言葉を聞くとシンクは先ほどよりも嬉しそうに笑うとそれに応えた。

「ククク、先生、本当にあなたは人がいい。良いだろ、準備をする。ジータには食わせたくないが、先生の前では良い顔をしたいからな。一緒に食べていけ」

***

 そこからはものの数十分で研究所のテーブルの上に様々な料理が並んだ。

 野菜の盛り合わせには様々なチーズが上に添えられており、鶏肉のステーキには程よくハーブに漬けられている。

 メインには一人一皿に海鮮を用いたリゾットが分けられ、バサラとジータは舌鼓をを打った。

「昨日のジータのご飯も美味しかったけど、シンクもすごいね!」

 バサラの賞賛を聞き、シンクは普段ではしないような嬉しそうな笑みをこぼすとジータがムスッとした表情で彼を見ていた。

 その視線に気づいていたシンクはバサラから見えない様、ジータを煽りに煽った。

「まぁ、料理は俺の得意分野だからな。そう惜しむな」

「そうね、強さなら私が一番だから」

「よし、ジータ、お前を調理してやる。おもてに出ろ」

「寂しんぼなの? 一人相撲でもしてなさい」

「ストップ! ストップ! 喧嘩はやめようね?!」

 お互いにバチバチと火花を散らす中、バサラが割って入ると二人とも睨み合いながらも言い合いをやめた。

 それを止めたバサラは内心誰よりもヒヤヒヤしており、かつての弟子達がものすごく強くなっても尚、変わらないことに喜びながらも変わらなすぎることに肝を冷やした。

(昔からこうだったけど今もこうなのか~。仲良いのか仲悪いのか。分からないや。でも、もう僕一人じゃ止められない。昔、四人で喧嘩してた日とかは止めれたけど今は無理、絶対に無理だよ!)

 心の叫びは聞こえておらずとも、ジータとシンクは席に座り、黙々と食事を進める。

 気不味い空気が流れる最中、バサラは切り出した。

「そうだ、シンク。今日、会った機械ってやつなんだけど。持ってきた部品を見ての所感を聞きたいんだけどいいかな?」

 先ほどまではいつもと変わらない愛弟子の顔であったがバサラが話を切り替えるとシンクも同時に表情を変え、応えた。

「所感、か。ふむ、見た感じは今では考えられない加工技術で作られてるモノと言うしか他にないな」

(これもそうだが、先生が持っているあの剣。二つともこの時代では考えられない物。聖遺物レリクイアと呼ばれる物だが、今は伝えなくてもいいか)

 そんなことを考えながら、シンクは続けて口を開く。

「だが、こう言うのは専門内だ。先生がいいなら、この腕を精密に調べることも出来るがどうする?」

 シンクの問いに対して、バサラもその四つの腕の正体を知りたいがためにすぐさま答えた。

「うん、お願いするよ」

「心得た、四護聖シンク・ホーエンハイムが責任を持って分析しよう」
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