167 / 311
第三章 人神代理戦争 勃発
四十章 五大王国会議 其の陸
しおりを挟む
ヴィクターの体は一度バラバラになりかける。涅焔の斬撃は静謐の運命の治癒能力を阻害し、全身を格子状にカッティングされたヴィクターであったがそんな状況の中でも、彼の中で過去一番に人生を謳歌していた。
痛みによる快楽、ヴィクターが戦いに求めるのはそれである。
幼い頃から他人よりも自分の肉体の再生が早く気味悪がられ、両親からも捨てられた自分に居場所を与えてくれたシャロンであった。戦場という居場所を、自分の生を感じれる世界を与えてくれた彼女には感謝しかないが今の自分はそんな事はどうでも良く、バサラという存在に惹かれていた。
切り落とされる肉片を無理矢理神経を繋げ、自身の首を大鎌で切り落とす。切り落とされた首をバラバラになる直前の体で蹴り上げるとそれだけがバサラの目の前に飛んできた。
ヴィクターの再生、それは死ぬ直前、彼が死を感じる瞬間に最大値となる。コンマ数秒の間に首から下が瞬く間に再生すると生えたての腕でバサラに突きを放つ。涅焔で防ぐも自身と同じ程の力で殴られると若干よろめいた。
「死ぬところだった! バサラ殿ぉ! 最高だよ! いや、死んでたな、うん。気持ちいい。死んでたのに再生したってことは自分の能力の限界が思ってたよりもまだまだ上回るな。うん、うん! 死ぬほど、気持ちがいい!」
素っ裸のヴィクターは背後に転がり落ちているかつて自分であった肉塊の腕らしきものを動かし、血で塗れた不死王行進曲を持って来させた。
(肉塊を動かしたのか。あれもしかしたら死体であれば誰でも動かせるのか? 自分のモノと思っているものだけを動かせるのか? どっちにしても能力の底が見えないな、面白い)
バサラはそんなことを考えながら、涅焔を前にすると体に回る再生による肉体への痛みが回るのを彼目掛けてヴィクターは述べ、それに対して狩れぬ獲物を見て嬉しそうに応えた。
「元気がいいな、ヴィクター。あんなん受けてたら普通は死んでるぞ?」
「そうか? 俺は生きてるから関係ないだろう?」
「はは、イカれてるな。でも、そういう奴は嫌いじゃない。寧ろ好きだ」
両者は言い終えると同時に再び互いの得物を構え、試合を続けようとした。だが、その時、彼らの真ん中に割って入るようにシャロンがいつの間か現れた。
「シャロン様?!」
先ほどまで頭になかった自国の王女の姿を見て、ヴィクターは驚くとシャロンは再び口を開いた。
「そこまでだ、ヴィクター」
「いや、でも、これからが」
「私との約束忘れたのか? 一度死ねばそこで終了。バサラ、すまないね、急なお願いしてしまって」
シャロンが頭を下げるとバサラもそれを見てもう戦うことはないと感じたのか鞘に涅焔を仕舞う。
「別に気にしないさ。僕も楽しかったし」
「なら良かった。明日帰るって聞いたからな。今日は宴会の準備をしたんだ、今日の詫びと言ってらなんだがな、楽しんでくれ」
それを聞き、ヴィクターは渋々諦めるも素っ裸のままでいた。シャロンはそんなヴィクターにローブのような物を渡し、彼はそれに身を包み、その場を後にする。
バサラはため息を吐き、吟千代とメタリカの二人と合流すると練習場の外に歩いて行った。吟千代はバサラと共に歩く中で、考え事をし、今日のヴィクターとの戦いを見て、とある確信を得るとそれを伝えようと彼に喋りかけた。
「なぁ、バサラ殿」
「? なんだ? 吟千代」
「今のバサラ殿は、本当にバサラ殿か?」
「どうしてそんな事を?」
バサラは本当に何の疑問にも思っていないこたを感じ取りながら、一度深呼吸をすると吟千代は彼の目を見て、ハッキリとその違和感を口にする。
「氣が違うんだ、以前の静かに滾る様な物ではない。今は、時折見せていた圧倒的なまでの強者の氣。なぁ、バサラ殿、本当のお主はどっちなんだ? 拙者は分からなくなっている」
「本当、ってなら。こっちの方が本来だよ、吟千代。それ以上でも、それ以下でも無い。僕は僕だ」
痛みによる快楽、ヴィクターが戦いに求めるのはそれである。
幼い頃から他人よりも自分の肉体の再生が早く気味悪がられ、両親からも捨てられた自分に居場所を与えてくれたシャロンであった。戦場という居場所を、自分の生を感じれる世界を与えてくれた彼女には感謝しかないが今の自分はそんな事はどうでも良く、バサラという存在に惹かれていた。
切り落とされる肉片を無理矢理神経を繋げ、自身の首を大鎌で切り落とす。切り落とされた首をバラバラになる直前の体で蹴り上げるとそれだけがバサラの目の前に飛んできた。
ヴィクターの再生、それは死ぬ直前、彼が死を感じる瞬間に最大値となる。コンマ数秒の間に首から下が瞬く間に再生すると生えたての腕でバサラに突きを放つ。涅焔で防ぐも自身と同じ程の力で殴られると若干よろめいた。
「死ぬところだった! バサラ殿ぉ! 最高だよ! いや、死んでたな、うん。気持ちいい。死んでたのに再生したってことは自分の能力の限界が思ってたよりもまだまだ上回るな。うん、うん! 死ぬほど、気持ちがいい!」
素っ裸のヴィクターは背後に転がり落ちているかつて自分であった肉塊の腕らしきものを動かし、血で塗れた不死王行進曲を持って来させた。
(肉塊を動かしたのか。あれもしかしたら死体であれば誰でも動かせるのか? 自分のモノと思っているものだけを動かせるのか? どっちにしても能力の底が見えないな、面白い)
バサラはそんなことを考えながら、涅焔を前にすると体に回る再生による肉体への痛みが回るのを彼目掛けてヴィクターは述べ、それに対して狩れぬ獲物を見て嬉しそうに応えた。
「元気がいいな、ヴィクター。あんなん受けてたら普通は死んでるぞ?」
「そうか? 俺は生きてるから関係ないだろう?」
「はは、イカれてるな。でも、そういう奴は嫌いじゃない。寧ろ好きだ」
両者は言い終えると同時に再び互いの得物を構え、試合を続けようとした。だが、その時、彼らの真ん中に割って入るようにシャロンがいつの間か現れた。
「シャロン様?!」
先ほどまで頭になかった自国の王女の姿を見て、ヴィクターは驚くとシャロンは再び口を開いた。
「そこまでだ、ヴィクター」
「いや、でも、これからが」
「私との約束忘れたのか? 一度死ねばそこで終了。バサラ、すまないね、急なお願いしてしまって」
シャロンが頭を下げるとバサラもそれを見てもう戦うことはないと感じたのか鞘に涅焔を仕舞う。
「別に気にしないさ。僕も楽しかったし」
「なら良かった。明日帰るって聞いたからな。今日は宴会の準備をしたんだ、今日の詫びと言ってらなんだがな、楽しんでくれ」
それを聞き、ヴィクターは渋々諦めるも素っ裸のままでいた。シャロンはそんなヴィクターにローブのような物を渡し、彼はそれに身を包み、その場を後にする。
バサラはため息を吐き、吟千代とメタリカの二人と合流すると練習場の外に歩いて行った。吟千代はバサラと共に歩く中で、考え事をし、今日のヴィクターとの戦いを見て、とある確信を得るとそれを伝えようと彼に喋りかけた。
「なぁ、バサラ殿」
「? なんだ? 吟千代」
「今のバサラ殿は、本当にバサラ殿か?」
「どうしてそんな事を?」
バサラは本当に何の疑問にも思っていないこたを感じ取りながら、一度深呼吸をすると吟千代は彼の目を見て、ハッキリとその違和感を口にする。
「氣が違うんだ、以前の静かに滾る様な物ではない。今は、時折見せていた圧倒的なまでの強者の氣。なぁ、バサラ殿、本当のお主はどっちなんだ? 拙者は分からなくなっている」
「本当、ってなら。こっちの方が本来だよ、吟千代。それ以上でも、それ以下でも無い。僕は僕だ」
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる