【完結!】田舎暮らしの神殺し、二度目の神殺しに挑む〜余生は静かに暮らしたいのに弟子達がさせてくれない件〜

文字の大きさ
200 / 311
第四章 人神代理戦争 霹靂

六話 High voltage! 其の伍

しおりを挟む
 治癒した左腕を前にして、ナナシはその指を鳴らした。パチリと音を立てるとその瞬間、ヴォルカヌスの体に切り傷が生まれる。

救世真愛セイヴァー、その本質は親愛。君が最初に打ち、最初に産んだ最高傑作」

 そう言うと再びパチリと指を鳴らし、ヴォルカヌスの体に傷がついた。

「能力は単純明快、斬撃を放つ。見えない斬撃をね」

 パチリ、指を鳴らしてはヴォルカヌスは切り刻む。

「舐めるなよ!」

 ヴォルカヌスはユピテルの神技グランスキルを使う為に口を開いた。

偽技フェイクスキル全知全能の神G・オールマイティ!」

 時を圧縮し、世界の動きを止める。
 ヴォルカヌスは止まった世界の中、ナナシを刻もうとするとその瞬間、彼の右腕が吹き飛んだ。

「な!?」

 右腕にはユピテルの神器が握られており、それが手放された時、時間の圧縮は強制的に絶たれ、世界は元通りに動き出す。

「隣人を愛せよ。だが、愛と憎は表裏一体。この剣は愛を語るからこそ、相手に切り傷を施す。矛盾の中で産まれたのは凡ゆる事象を無視して刻む。ヴォルカヌス、君は自分が生んだ武器である救世真愛セイヴァーとは違う能力になっていると思っているね。違う、それは違うぞ。この剣は魂を知覚する。を捉えてるんだ。だから、私の斬撃は世界を圧縮しようが君を刻む。魂の世界の時は止めれっこないだろうしね」

 余裕綽々と高弁を垂れるナナシ。しかし、ヴォルカヌスはそんなことを聞いても尚、残った腕ですぐさま次の武器を抜いた。

「だからと言って諦めるわけないだろ」

 ヴォルカヌスはまだ諦めておらず、そんな彼を見て、ナナシは微笑むと救世真愛セイヴァーを自身の魔術で宙に浮かす。

 そして、そこからは一方的であった。
 全ての神器、そこに備わる神技グランスキル、それらを用いてナナシにヴォルカヌスは立ち向かうも、一つまた一つと失っていく。

 光速の一撃は防御魔術に阻まれ、海水の槍は斬撃に割かれ、神殺しの剛腕も自身が産んだ剣に刻まれた。幾十重にも重ねた攻撃が一切通じず、一切通されず、ただただ追い詰められる。

 肉体は削られ、左足は無くなり、切り裂かれた箇所から大量の出血をしており、つい先ほどまで自分と相手の立場が逆転していた。

 ヴォルカヌスは戦いの最中、自身が彼女に勝てないことを理解している。理解していても尚、抗った。

 残った腕で神器を拾い、何度も何度もナナシにその刃を突き立てようとするもののその健闘虚しく否定された。

(なんとなく分かった。あの斬撃を喰らえば俺は死ぬ。涅槃静寂ニルヴァーナ同様の能力が備わっている。片腕が回復しない)

 殆どの武器が失われ、僅かに残った武器では彼女を傷つけるに至らないことは見ずとも知っていた。

 たが、それでもヴォルカヌス、彼のその瞳に宿る炎は尽きない。

「今、俺がお前を倒せる手段は無い! だが! 俺は諦めない。鍛治士ヴォルガ、鍛治神ヴォルカヌスとして、最後の大勝負、最後の大仕事だ! 見せてやるよ、創造主!」

 ヴォルカヌスの宣言にナナシは何も答えず、笑顔で指を鳴らした。

 迫る斬撃、それに向かってヴォルカヌスは避けようとせず、いつのまにか残った腕には剣を打つための鎚が握られていた。

(魂の知覚、ナナシが言っていた言葉。俺、いや、俺達神であれば、それを捉えれる!)

***

 ヴォルカヌスが魂というものを意識して目を瞑った瞬間、目の前に真っ白な空間が広がった。音も感じぬ静寂の中、ヴォルカヌスは呟いた。

「ここは。そうか、ここが魂の世界か。ここでならば、打てるのであろう、俺の最後の一振りが。素材は俺の魂、一太刀浴びせてやるよ」

 意識すれば魂の世界は変化して、鍛冶場となる。そして、自分の身を焦がしながら、ヴォルカヌスは神として、人としてその剣、かつて神を殺した少年に託した剣を打った。

***

 ヴォルカヌス、彼の腕には鎚では無く、その手には涅槃静寂ニルヴァーナが握られていた。

「バサラ、最後に力を貸してくれ」

 ヴォルカヌスはそう言うと見えない斬撃を弾いた。もう一つの涅槃静寂ニルヴァーナ、それはヴォルカヌスが自身の魂で生み出した究極の一振り。

 魂を知覚することでヴォルカヌスは救世真愛セイヴァーの見えない斬撃を見ると彼は最後の一撃を加える為に構えた。既に足は無く、走ることなど出来ないからこそ、彼は仕掛けるのでは無く、ナナシを待った。

「ヴォルカヌス、君は今まで生み出した神の中でも最高傑作だ。褒美に受けて立ってあげる」

 そんな、彼に己が生んだつるぎの一撃をぶつけようとナナシは走り出す。神なる愛を与える為に、小細工一つも無しにヴォルカヌスとの距離を詰めた。

 救世真愛セイヴァーに彼の魂を傷つけ、殺そうとする意思を込めると間合いに入った瞬間、ナナシは振るう。

 殺意と愛が混ざり合う一太刀を。
 ヴォルカヌスもまた、涅槃静寂ニルヴァーナを振るった。

 そこに込めたのはかつての自分と今の自分。

 二つの己を解き放つ。

 涅槃静寂ニルヴァーナ救世真愛セイヴァーの刃を弾いた。

「うおおおおおお!!!!」

 ナナシの重心がぐらりと揺れ、手元が空いた時、振り上げた涅槃静寂ニルヴァーナを彼女の体に叩き込む。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...