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第四章 人神代理戦争 霹靂
四十九話 人神代理戦争 其の参拾弍 戦鬼召使⑤
しおりを挟むタオの最後の依頼。
好きに生きろと言われたヴェルトが最初にしたことは依頼主を殺すことであった。タオとの婚約関係、それもまた依頼であり、その依頼はいつでも反故出来るといったもの。
「のう、ヴェルト、余は主が気に入った。だから、余の夫となれ」
「いや、ならないよ。僕は依頼があるからと呼び出されたんだ。依頼がないなら」
「クフフ、なら、それが依頼だ。ヴェルト、余の夫として過ごせ」
それがタオと出会いであり、ヴェルトは依頼だからという理由でそれを受けた。そして、タオと過ごす中で、ヴェルトもまた、彼女に惹かれていった。
そんな彼女を自らの手で依頼ということで殺した。ヴェルト・デッドに自我は殆どなく、ただ、依頼を必ずこなすという機械のような人である。
そんな彼に、愛を教えた存在を殺させた。
機械のような男が覚えたこの瞬間に芽生えた感情を頼りに
「おいおい!? まてよ、ヴェルト?! 仕方なかったんだ!? お前以外に頼める男なんて居ない! それにウェイ・ファミリーの勢力がデカくなりすぎて俺達の仕事が何にもなくなっていたんだぞ?! なぁ!? ヴェルト!? お前なら分かるよな?! 俺とお前の」
引き金は引かれ、綺麗に眉間に穴を開けた。目の前にある椅子に座る肉塊を退け、ヴェルトは座ると自身の頭に銃口を突きつけた。
「好きに生きた。なら、好きに死ぬのもいいよね、タオ」
引き金を引くと同時に、目を開けるとそこには見たこともない世界が広がっていた。
***
(あれ、なんか一瞬飛んでた)
召使が意識が飛んでいた時間はおよそ2秒にも満たない。それでも、体に残る気怠さや、痛みは広がっており、今でも倒れてしまった方がいいと感じていた。
「空間捕食V」
エイブラハムはそんな彼に対しても容赦はしなかった。
召使、彼が優秀な戦士であり、自身をも追い詰める存在であることをエイブラハムは知っていだが故、それは尊敬の念を込めた追撃である。
召使は迫るエイブラハムを見て、彼になら負けて良いと感じ、受け入れるつもりで動かなかった。
(タオ、ようやく、僕は)
かつて躊躇いも、躊躇も一切無く、命乞いにも耳を傾けず、彼は常に依頼を全うしてきた。そんな自分が初めて抱いた後悔という名の感情、それを知ったのは愛する人を自分で手にかけた時。
あの時の言葉、額に開ける直前の台詞。
「のう、ヴェルト。愛を知らぬ獣よ。その涙は余を愛していたから物か? なら、見れただけで余は十分だ。そうだな、主に最後の依頼だ。好きに生きろ。依頼を受けてではなく、やりたいことをやれ」
好きに生きろ。
「ん、だよ、それ」
好きに生きろ、言われても分からない。
何故なら、彼女に全て教えてもらったから。
好きも、嫌いも、彼女と過ごした三年の中で知った。そんな彼女を殺した時点で彼の運命は決まっていた。
「ん、だよ! それ!」
エイブラハムから迫る天空行進曲の刃がぶつかる直前、召使は思い出したかのように叫んだ。
「何が、好きに生きろだ! 僕に、好きを教えたのは君だろうが!」
エイブラハムの一撃を両手に六波羅蜜により作り出した斧で防ぐとその目にはかつてないほどの闘争心が芽生えていた。
自分が生きる意味を見出せなかった青年の叫び。六波羅蜜はその声に呼応する。
「我が運命は壊滅。至る終焉、来たる破壊者。共鳴器・六波羅蜜よ、我が運命の燈を贄に現せ、新たなる姿を」
六波羅蜜の第二共鳴解放。エイブラハムを前にして、その覚醒を遂げた。
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