24 / 43
第3章 疑う王子様
6
しおりを挟む
改めて、応接用のテーブルを、三人で囲む。鏡面のように透き通るそこに乗っかっているのは、三人分カップと茶菓子。ある日はフィリップ、エカチェリーナ、エドガー、クロードが、ある日は、フィリップとエカチェリーナが二人で、またある時はーー
「それで、これからどうする。」
クロードの言葉が、太郎を今ある現実に引き戻す。
「超常的な力ってなると、なあ……」
顎に手をやるエドガーは、神妙な面持ちで天を仰ぐ。
「その話、信じてくれるのか?」
昨日の流れで、流石に本気にされるとは思っていなかった。
「え、だって……」
今更というように、エドガーは目を丸くする。
「まず、タロウさん自体、あり得なくないですか?」
そう言うと、曇一つない顔でニカッと笑う。
「……これが本人だとすれば、それはそれで恐ろしいがな……」
クロードは、お茶を啜りながら憎まれ口を叩くが、それはどこか、親しみに満ちている。
「確かに……」
「認めちゃうんですか!?」
いつの間にか打ち解けた二人の親友とも、いつかは別れるのだろうかーー
和やかな執務室に、ノックの音が響く。
「入れ。」
緩んでいた顔を引き締め、努めてフィリップらしく振る舞おうとする視線の先に、
「ご機嫌よう。」
エカチェリーナが立っていた。
久々にテーブルを囲む四人の表情に、親しみはない。あるのはただ、張り詰めた緊張感だけだ。
「えっと……」
言葉が、上手く出てこない。
「あら、お邪魔だったかしら。」
「……いや……」
エカチェリーナは、気丈に振る舞っているが、その実、心の内は分からない。
「あなた、私に事件のことを聞きたいと仰ってたのでしょう?」
こちらを覗き込む瞳から、目を離せない。
「だから、証言しようと思ったのですけれど……」
少しだけ目を伏せるエカチェリーナ。
「ああ、貴女の話を聞かせてほしい。」
太郎も、真っ直ぐに彼女の方を見る。こちらに来て、初めて会ったときからすると、大分ふっくらした彼女は、以前よりも健康そうに、生き生きして見えた。
「ええ……あの日……」
「ねえ、フィリップ!」
何故この女はノックすることを覚えないのか。別の意味で頭痛を覚える。この世界の平民には、豆粒程度の常識さえも存在しないのか。エカチェリーナの顔が曇る。
「あのね……」
何が悲しいのか、薄っすらと目に涙を浮かべながら話しかけてくるセイラに、
「あのさあ、お前……」
堪忍袋の緒が切れる。
「人が人と話してんの。」
怒りの大きさと裏腹に、その声のトーンは低い。
「……へ?」
怒られると思っていなかったのだろうこの女、素っ頓狂な声を短くあげる。
「あのさあ、人の部屋に入るときにノックする、人の話に割り込まない……」
どうして、この女の事が嫌いなのか、今日見た夢も相俟ってようやく合点がいく。
「常識叩き込んで出直してこいよ。このぶりっ子女。」
「……」
怯むセイラは、部屋から駆け出して行った。
ーー似ているのだ、仕事を押し付けてくる、あの、ぶりっ子女に。
「それで、これからどうする。」
クロードの言葉が、太郎を今ある現実に引き戻す。
「超常的な力ってなると、なあ……」
顎に手をやるエドガーは、神妙な面持ちで天を仰ぐ。
「その話、信じてくれるのか?」
昨日の流れで、流石に本気にされるとは思っていなかった。
「え、だって……」
今更というように、エドガーは目を丸くする。
「まず、タロウさん自体、あり得なくないですか?」
そう言うと、曇一つない顔でニカッと笑う。
「……これが本人だとすれば、それはそれで恐ろしいがな……」
クロードは、お茶を啜りながら憎まれ口を叩くが、それはどこか、親しみに満ちている。
「確かに……」
「認めちゃうんですか!?」
いつの間にか打ち解けた二人の親友とも、いつかは別れるのだろうかーー
和やかな執務室に、ノックの音が響く。
「入れ。」
緩んでいた顔を引き締め、努めてフィリップらしく振る舞おうとする視線の先に、
「ご機嫌よう。」
エカチェリーナが立っていた。
久々にテーブルを囲む四人の表情に、親しみはない。あるのはただ、張り詰めた緊張感だけだ。
「えっと……」
言葉が、上手く出てこない。
「あら、お邪魔だったかしら。」
「……いや……」
エカチェリーナは、気丈に振る舞っているが、その実、心の内は分からない。
「あなた、私に事件のことを聞きたいと仰ってたのでしょう?」
こちらを覗き込む瞳から、目を離せない。
「だから、証言しようと思ったのですけれど……」
少しだけ目を伏せるエカチェリーナ。
「ああ、貴女の話を聞かせてほしい。」
太郎も、真っ直ぐに彼女の方を見る。こちらに来て、初めて会ったときからすると、大分ふっくらした彼女は、以前よりも健康そうに、生き生きして見えた。
「ええ……あの日……」
「ねえ、フィリップ!」
何故この女はノックすることを覚えないのか。別の意味で頭痛を覚える。この世界の平民には、豆粒程度の常識さえも存在しないのか。エカチェリーナの顔が曇る。
「あのね……」
何が悲しいのか、薄っすらと目に涙を浮かべながら話しかけてくるセイラに、
「あのさあ、お前……」
堪忍袋の緒が切れる。
「人が人と話してんの。」
怒りの大きさと裏腹に、その声のトーンは低い。
「……へ?」
怒られると思っていなかったのだろうこの女、素っ頓狂な声を短くあげる。
「あのさあ、人の部屋に入るときにノックする、人の話に割り込まない……」
どうして、この女の事が嫌いなのか、今日見た夢も相俟ってようやく合点がいく。
「常識叩き込んで出直してこいよ。このぶりっ子女。」
「……」
怯むセイラは、部屋から駆け出して行った。
ーー似ているのだ、仕事を押し付けてくる、あの、ぶりっ子女に。
0
あなたにおすすめの小説
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
女性が少ない世界でVTuberやります!
dekoma26+ブル
恋愛
ある日朝起きてキッチンに行くとそこには知らない男性たちが! …え、お父さん⁉
なぜか突然女性の少ない世界に来てしまった少女がVTuberをしたり、学校に通ったりするお話。
※恋愛大賞ラストスパートなので24日火曜~27日金曜日まで連日投稿予定!
参加してるみんな!あと少しだよ頑張ろう!(>▽<)/作者ブル
前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる