転生先が悪役令嬢モノの王子様だった件。

釜借 イサキ

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第4章 辿り着いた王子様

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 昔、考えた事がある。この世界は誰かが描いた物語で、自分達の終着点は決まっていんじゃないかって。そう、思い込みたかった事もある。
「おい、佐藤。お前、また頼まれた仕事できてないじゃねえか!」
罵声を聞きながら、何度も何度も思った。この世が物語の世界なのなら、きっと自分は、誰の目にも留まらない、一介の端役なんだろうと。
 夜も更け、今日の話し合いは一旦お開きとなった。王子以外の三人は、それぞれの馬車でそれぞれの公爵邸へ帰っていった。そういう運びだ。今までの生活、聞き取り調査、感じでいた違和感ーー全てを総合的に考慮すると、一つの、あり得ない考えに行き着いた。
 きっと、この世界の出来事は、決められたシナリオの上で動いていたのだ。つまり、物語の中身だった。それが、太郎が入り込んだ事によって、一変した。予測不可能な未来へと変換されてしまったのだ。
「フィリップ、お前……」
ヒロインはセイラ。恋に落ちる相手はフィリップ。この二人の決められた未来は、その実、キャラクターに影を落としたのではないか。
 多分、この作者は二人がくっつくこと以外、何も考えていなかったのだろう。適当に、よくある設定を混ぜ込んだこの話に、誰一人として作者の思い通りのキャラクターはいなかったのではないか。平面の物語には、やがて奥行きが生まれた。そしてーー
「お前、凄く頑張ったんだな。」
身体の持ち主を褒めてやる。きっと誰にも気付かれず、独りで抗い続けていたのだ。言うことを聞かない身体を抱えて。逆に言えば、作者は彼の想いまでをも蹂躙できなかったのだ。作者の世界に、人はいない。そこにあったのは、作者の為のコマだけだったのだから。
 静かな室内に、ノックの音が鳴り響く。
「王子!」
「入れ。」
そろそろ来たかと、身構える。
「伝令です。フィデリオ邸に向かっていた馬車が、襲撃を受けました。」
やはりだ。フィデリオ邸と言えば、エカチェリーナの実家だ。
「相手は?」
案の定、相手は仕掛けてきた。落ち着いて返す。
「はい。素性の知れない騎士たちです。」
多分、作者はエカチェリーナのことしか見ていない。そして、ぽっと出の軍隊は、恐らく何処かで作り出した作者の造物だろう。予想が的中しすぎて、段々と笑えてくる。表面上だけ取り繕えば、それは簡単に騙すことができた。
「分かった。セイラを呼んでくれ。」
「……この時間に、ですか?」
訝しげに訊く執事に、小さく頷く。こんな馬鹿らしい物語、とっとと終わらせてやろう、そう思ったからだ。
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