転生先が悪役令嬢モノの王子様だった件。

釜借 イサキ

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第4章 辿り着いた王子様

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ところは変わり、王城の一角、薄暗い部屋の中で、女は一人、布団の中でほくそ笑む。
「ざまあみろ!」
目障りな女が消えたことを心の底から喜ぶ。所詮はコマ。お前を作り上げた私に、お前が勝てるはずないだろうと嘲る。あれぐらいの軍勢ならば、たとえ付き人がついていたとしても、エカチェリーナは一溜りもないはずだ。
「セイラ様。」
止まらない笑いを遮るように、ドアを叩く音が聞こえる。
「どうぞ。」
努めて冷静に、柔らかく返す。セイラの品位を損なう訳にはいかない。許しを得た侍者がこちらに頭を下げる。とても良い気分だ。
「王子がお呼びです。」
侍者はそう言うと、部屋を後にする。おおよそ、セイラのことをよく思っていないんだろう。エカチェリーナの影は濃く、城内を蝕んでいるらしい。だが、いずれセイラは王子と婚姻する。そうすれば、
「誰も私に、逆らえないもの。」
浮き足立って、セイラはベッドから出る。王子から呼び出されるということは、大方、婚約者が死んだから、自分に鞍替えでもする気なんだろう。シナリオ的にも、それが妥当なのだ。胸を弾ませ、王子の部屋へ向かう。
 胸を弾ませながら、王子の寝所へ急ぐ。ついに選ばれた。ついに、この日がやってきたのだ。本当は、あの日ーー悪女エカチェリーナを断罪するための、あの場で婚約を告げられる筈だったのに。何かが邪魔をしたのだ。待ち侘びた言葉を貰いに、その部屋に向かう。
「フィリップっ!」
思わず抱きつきそうになる。もう、誰も自分を見下せないのだ。やっと……
「お前さあ、昼間も言ったよね? 人の部屋に入るんならノックくらいしろよって。」
抱きつこうとするセイラの身体を払いのけ、フィリップは不機嫌そうに椅子に腰掛ける。
「ああ、ごめんなさい。」
なぜ、作者たる自分がお前に説教されなければならないのかと言いたくなるのを抑え込み、促されるままフィリップと向かい合せになって座る。
「水でも飲むか?」
「……ええ、じゃあ……」
やたらと勿体ぶるフィリップに苛つきながら、セイラは出された水で、喉を潤す。それをじっと見つめる瞳は、ガラス細工のように綺麗だ。
「ねえ、怖い顔しないで?」
顔に触れようとする。フィリップは、セイラに対してだけ、笑顔を見せる筈。それにも拘らずしかめっ面を崩さないのは、
「フィリップ、緊張しているの?」
きっと、これから起こることを、心待ちにしているから。ロマンチックな演出のように、窓の外には大きな月。
「ははっ……」
急に、フィリップは笑い出す。微笑みかけるでもなく、単純に、面白そうに。
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