転生先が悪役令嬢モノの王子様だった件。

釜借 イサキ

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第5章 完結させた王子様

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 荘厳なホールには、既に多くの野次馬が押しかけていた。そこに、王子・フィリップと悪女・エカチェリーナは堂々と腕を組んで入場する。ざわつく会場。無理もない、一ヶ月前で話が止まっている観衆には、到底予期できない事態だろう。
「静粛に。」
しんと静まり返るホール。国王の声が、ホールに響く。さて、もう一つ、戦いが残っていた。ここで勝ち取らなければ、今までの努力が全て無駄になる。
「フィリップ、これはどう言うことだ。」
王は訝しげに睨む。公爵とはまた違った重圧に、太郎は押し潰されそうになるが、
「セイラは、私が思っていたような純真無垢な女性ではありませんでした。」
はっきりと申し送る。もう二度と、この二人の間に邪魔が入らないように。
「セイラは、エカチェリーナのことを陥れ、挙げ句の果てに殺そうとしました。」
今度は別の意味でざわつく会場に、虫酸が走る、
「証人を喚問します。」
「よかろう。」
王が厳かに頷くと、クロードが一歩前に出る。
「昨日、セイラ嬢は、自室で……」
昨晩のことをクロードが話し出すと、王の表情がみるみる変わる。
「しかし、なぜ……」
「私が命じました。どうも様子がおかしかったもので。」
王に余計な質問は挟ませない。一気に捲し立てる。
「更に、昨日エドガー卿を襲った出所不明の兵士たちは、フィデリオ公爵邸に向かっていた馬車を襲撃してきました。」
「……」
王は思案する。突拍子もないことを言い出す王子が、デタラメを並べ立てているとと到底思えない。
「つまり、エカチェリーナ嬢の命を狙っていたともとれる。」
太郎は、最後の仕事をやり遂げなければならないと思った。きっと、これが終わったら……誰にも見えないよう、そっと微笑む。
「クロード卿の話によれば、セイラ嬢は、それを予見していたことになる。」
「しかし……」
後もう少し、時間がない。意識が、身体から遠退いていく感覚。きっともう、長くここには居られない。
「それに、エカチェリーナ嬢の一連の事件の捜査資料には、セイラ嬢の発言しか記載がなかった。」
ざわめく野次馬どもには、目もくれない。
「つまり、セイラ嬢が、エカチェリーナ嬢を陥れたとされる十分な状況証拠は揃っている。」
本当は、物的証拠を突き付けたいところだが、当然、そんなものはありもしない。悔やまれるが、そこをつついても仕方がない。
「だから私はエカチェリーナを無罪としたい。そして……」
目が霞む。もう限界だ。
「赦されることなら、この婚約を解消したくないのです。」
そう宣言する。唇に、柔らかく温かい感覚を覚えながら、太郎の意識は闇に引き込まれていった。
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