転生先が悪役令嬢モノの王子様だった件。

釜借 イサキ

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第5章 完結させた王子様

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 カーテシーをしてみせるエカチェリーナの頬は、少しだけ朱い。
「ねえ、やっぱり、このドレス変じゃないかしら……?」
戸惑うように聞いてくる彼女に、
「いいや、とても綺麗だよ。」
と返す。
「エカチェリーナ様、美しいです。」
「きゃあ、エカチェリーナ様、一番ですよ!」
今朝、火急の伝令で、伝書鳩を飛ばしておいたのだ。エカチェリーナのドレスと、侍女を寄越すように。やってきたのは、エシャルとマートル。エカチェリーナのことを一番慕っていた侍女達だ。
 今日は、記念すべき式典の日。一ヶ月前、彼女を裁くために行なった儀礼は、今日、彼女に再度婚約を申し込む為の祝典へと、その姿を変貌させた。
「ねえ、でも私、太っちゃって……」
昨夜、彼女は恥ずかしそうに呟いた。確かに、最初出会った時よりも、ふっくらしているようにも見える。
「そうかなあ……」
太郎は逡巡する。女の子の体型が、いかほどのものなのか、分からない。
「でもさ、なんだかエカチェリーナは幸せに見えるよ?」
「……え?」
少なくとも、今の方が精神的に余裕があるように見える。締め付けていたものを取り払った解放感とでも言うのか。
「俺さ、エカチェリーナはとても綺麗だと思う。」
真っ直ぐ、彼女の瞳を見て伝える。フィリップの姿で、だ。
「でも、なんだか息苦しそうにも見えるんだ。」
「……」
目の前の彼女は目を伏せる。彼女にとって、我慢はある種、当たり前のものなのだろう。それでも、
「もう十分綺麗だし、エカチェリーナは素敵な女性だよ。」
段々と、瞳が潤んでくる。
「だからどうか、フィリップとお幸せに。」
やっぱり、一目惚れした、初恋の女の子に似ている彼女には、とびきり幸せになってほしい。
「……ありがとう。」
抱きついてくるエカチェリーナ。太郎の服は、段々と濡れていく。小刻みに震えるせなかを、そっとさする。多分画になるんだろう……太郎は心の中で呟いた。
 そんなこんながあって一夜明け、ようやく四人は揃った。
「なあ、皆、今までありがとう。」
多分、この件はこれで完結。今のうちに、礼は言っておきたいと思った。神妙な様子の太郎に、場が凍る。
「今までって、なんですか……太郎さん」
はぐらかそうとするエドガー。声は少し、震えている。
「まだ分からんだろう。」
そう言うとクロードはそっぽ向く。
「……こちらこそありがとうね、タロウ。」
悲しげに礼を言うエカチェリーナ。
「俺、皆のお陰で助かったよ。ありがとな!」
太郎は、とびきりの笑顔を見せる。その目は少しだけ潤んでいた。
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