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エピローグ あったかくて、あかるい、いばしょ
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春は、出会いと別れの季節。桃色に染め上げられた風景は、人々の喜びと哀しみに、そっと寄り添った。やがて桜は葉桜に変わり、時の流れは緩やかに、思い出も、痛みさえも、優しく包み込んでゆく。
少しだけ春が遠退いた頃、相変わらず三人は、意味もなく学食に集まる。初めて出会ってから三年経つが、それは変わることなく日課となっていた。連絡先も、専攻もよく知らない二人の友人に、周は心地よさと、幾ばくかのもどかしさを感じている。
「まだ一週間かあ……」
琉依は、すっかり花を落とした桜の木を、窓越しに眺める。
「そんなに経つんだ……」
時の流れの早さににはっとする。緩慢に流れるように感じる日々は、気づけば、遠くに去ってゆく。
「でも、よかった。二人とも元気そうで。」
琉依は微笑む。
「お前が元気そうなのは、意外だった。」
その割に、秀人は本から一切視線を離さない。
「……なんかさ、俺が悲しみながら過ごすのは、ちょっと違う気がしてさ……」
自分の隣を懐かしむ。そこにはもう、気配すら感じない。
「……よかったねって……一緒に喜びたいんだ。」
周の顔に、哀愁は残っていない。
「そうだね。いい子だったよねー」
頬杖をつきながら、琉依は明らかにない記憶を捏造している。
「いや、岡さん見えてなかったよね?」
「あれはたまたま調子が悪かったんだよー!」
そんな琉依をからかう周と、頬を膨らませる琉依。
「嘘つけ!」
「むう……」
そんな応酬を続ける二人。気付けば秀人の視線は本から外れていた。
「もしかして、寂しいとか?」
少なくとも、自分が想定していた可哀想な子供がいなかったことに、内心安堵する秀人に、周は悪巧みをする子供のような表情で問う。
「何がだ。壁のシミのことか?」
表情は動かないが、少しだけ嬉しそうな秀人に、
「その設定まだ生きてたの!?」
「っていうか秀人くん、壁のシミのためにあそこまでしてたの?」
笑い半分、驚き半分で、それぞれの反応を示す。
「……うるさい。」
耳を赤くする秀人は、無表情に、再び本を読み進める。
心地のよい沈黙の後……
「今回はいい人助けができたよね?」
不自然に、琉依は言葉をかける。唐突な問いかけに、周と秀人は思わず琉依の顔を見た。その顔には、どこか緊張と高揚が見え隠れする。
「実はね、もともとこういうのに興味があって……オカルト研究会っていう部活を作ったんだ。」
周はともかく、流石の秀人も、これには目をぱちくりさせる。
「……よかったね。」
「おめでとう。」
棒読みな二人の言葉とは裏腹にに、琉依の表情は一気に晴れる。
「そう言ってもらえてよかったあ! ってことでよろしくね、副部長」
溢れる笑みで、浮き足立つ琉依を見て、
「……え……?」
「は……?」
男二人は、豆鉄砲を喰らった鳩のように、その場で固まっていたのだった。
少しだけ春が遠退いた頃、相変わらず三人は、意味もなく学食に集まる。初めて出会ってから三年経つが、それは変わることなく日課となっていた。連絡先も、専攻もよく知らない二人の友人に、周は心地よさと、幾ばくかのもどかしさを感じている。
「まだ一週間かあ……」
琉依は、すっかり花を落とした桜の木を、窓越しに眺める。
「そんなに経つんだ……」
時の流れの早さににはっとする。緩慢に流れるように感じる日々は、気づけば、遠くに去ってゆく。
「でも、よかった。二人とも元気そうで。」
琉依は微笑む。
「お前が元気そうなのは、意外だった。」
その割に、秀人は本から一切視線を離さない。
「……なんかさ、俺が悲しみながら過ごすのは、ちょっと違う気がしてさ……」
自分の隣を懐かしむ。そこにはもう、気配すら感じない。
「……よかったねって……一緒に喜びたいんだ。」
周の顔に、哀愁は残っていない。
「そうだね。いい子だったよねー」
頬杖をつきながら、琉依は明らかにない記憶を捏造している。
「いや、岡さん見えてなかったよね?」
「あれはたまたま調子が悪かったんだよー!」
そんな琉依をからかう周と、頬を膨らませる琉依。
「嘘つけ!」
「むう……」
そんな応酬を続ける二人。気付けば秀人の視線は本から外れていた。
「もしかして、寂しいとか?」
少なくとも、自分が想定していた可哀想な子供がいなかったことに、内心安堵する秀人に、周は悪巧みをする子供のような表情で問う。
「何がだ。壁のシミのことか?」
表情は動かないが、少しだけ嬉しそうな秀人に、
「その設定まだ生きてたの!?」
「っていうか秀人くん、壁のシミのためにあそこまでしてたの?」
笑い半分、驚き半分で、それぞれの反応を示す。
「……うるさい。」
耳を赤くする秀人は、無表情に、再び本を読み進める。
心地のよい沈黙の後……
「今回はいい人助けができたよね?」
不自然に、琉依は言葉をかける。唐突な問いかけに、周と秀人は思わず琉依の顔を見た。その顔には、どこか緊張と高揚が見え隠れする。
「実はね、もともとこういうのに興味があって……オカルト研究会っていう部活を作ったんだ。」
周はともかく、流石の秀人も、これには目をぱちくりさせる。
「……よかったね。」
「おめでとう。」
棒読みな二人の言葉とは裏腹にに、琉依の表情は一気に晴れる。
「そう言ってもらえてよかったあ! ってことでよろしくね、副部長」
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「……え……?」
「は……?」
男二人は、豆鉄砲を喰らった鳩のように、その場で固まっていたのだった。
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