大学生、みいちゃんと出会う。~オカルト研究会①~

釜借 イサキ

文字の大きさ
22 / 23
エピローグ あったかくて、あかるい、いばしょ

しおりを挟む
 春は、出会いと別れの季節。桃色に染め上げられた風景は、人々の喜びと哀しみに、そっと寄り添った。やがて桜は葉桜に変わり、時の流れは緩やかに、思い出も、痛みさえも、優しく包み込んでゆく。
 少しだけ春が遠退いた頃、相変わらず三人は、意味もなく学食に集まる。初めて出会ってから三年経つが、それは変わることなく日課となっていた。連絡先も、専攻もよく知らない二人の友人に、周は心地よさと、幾ばくかのもどかしさを感じている。
「まだ一週間かあ……」
琉依は、すっかり花を落とした桜の木を、窓越しに眺める。
「そんなに経つんだ……」
時の流れの早さににはっとする。緩慢に流れるように感じる日々は、気づけば、遠くに去ってゆく。
「でも、よかった。二人とも元気そうで。」
琉依は微笑む。
「お前が元気そうなのは、意外だった。」
その割に、秀人は本から一切視線を離さない。
「……なんかさ、俺が悲しみながら過ごすのは、ちょっと違う気がしてさ……」
自分の隣を懐かしむ。そこにはもう、気配すら感じない。
「……よかったねって……一緒に喜びたいんだ。」
周の顔に、哀愁は残っていない。
「そうだね。いい子だったよねー」
頬杖をつきながら、琉依は明らかにない記憶を捏造している。
「いや、岡さん見えてなかったよね?」
「あれはたまたま調子が悪かったんだよー!」
そんな琉依をからかう周と、頬を膨らませる琉依。
「嘘つけ!」
「むう……」
そんな応酬を続ける二人。気付けば秀人の視線は本から外れていた。
「もしかして、寂しいとか?」
少なくとも、自分が想定していた可哀想な子供がいなかったことに、内心安堵する秀人に、周は悪巧みをする子供のような表情で問う。
「何がだ。壁のシミのことか?」
表情は動かないが、少しだけ嬉しそうな秀人に、
「その設定まだ生きてたの!?」
「っていうか秀人くん、壁のシミのためにあそこまでしてたの?」
笑い半分、驚き半分で、それぞれの反応を示す。
「……うるさい。」
耳を赤くする秀人は、無表情に、再び本を読み進める。
 心地のよい沈黙の後……
「今回はいい人助けができたよね?」
不自然に、琉依は言葉をかける。唐突な問いかけに、周と秀人は思わず琉依の顔を見た。その顔には、どこか緊張と高揚が見え隠れする。
「実はね、もともとこういうのに興味があって……オカルト研究会っていう部活を作ったんだ。」
周はともかく、流石の秀人も、これには目をぱちくりさせる。
「……よかったね。」
「おめでとう。」
棒読みな二人の言葉とは裏腹にに、琉依の表情は一気に晴れる。
「そう言ってもらえてよかったあ! ってことでよろしくね、副部長」
溢れる笑みで、浮き足立つ琉依を見て、
「……え……?」
「は……?」
男二人は、豆鉄砲を喰らった鳩のように、その場で固まっていたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)

本野汐梨 Honno Siori
ホラー
 あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。 全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。 短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。 たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。 === エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中 【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

霊和怪異譚 野花と野薔薇

野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。 静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。 『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。 一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。 語られる怪談はただの物語ではない。 それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。 やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。 日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。 あなたも一席、語りを聞いてみませんか? 完結いたしました。 タイトル変更しました。 旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる ※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。 エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。 表紙イラストは生成AI

【完結】本当にあった怖い話 ~実話怪談集『図書館の“あれ”』・『旅先の怪』・『負のパワースポット』~

悠月
ホラー
実話怪談のショートショートを集めた短編集。 『図書館の“あれ”』 私の出身大学の図書館、閉架書庫には“あれ”がいる。私以外のほとんどの人が遭遇したという“あれ”。 しかし、“あれ”に遭遇した人たちの人生が、少しずつ壊れていく……。 『旅先の怪』 非日常の体験がしたくて、人は旅に出る。ときに、旅先では異界を覗くような恐怖を体験してしまうこともあるのです。 京都、遠野、青森……。 そんな、旅先で私が出遭ってしまった恐怖。旅先での怪異譚を集めました。 『負のパワースポット』 とある出版社からパワースポット本の取材と執筆を請け負った、フリーランスライターのN。「ここは、とてもいいスポットだから」と担当編集者から言われて行った場所には……? この話、読んだ方に被害が及ばないかどうかの確認は取れていません。 最後まで読まれる方は、どうか自己責任でお願いいたします。 ※カクヨムに掲載していたものの一部を修正して掲載しています。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

百の話を語り終えたなら

コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」 これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。 誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。 日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。 そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき—— あなたは、もう後戻りできない。 ■1話完結の百物語形式 ■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ ■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感 最後の一話を読んだとき、

処理中です...