4 / 12
2ー2
しおりを挟む
内心舌打ちしながら目の前の美女に作り物の笑顔を差し出す。
「ハルカちゃんは美人で、頭も良くて、みんなの人気者で……ずっと私の憧れだったんだよ」
コハルにそう言われて悪い気はしないらしく、ハルカは嬉しそうにはにかんだ表情を見せる。
「ありがとう」
そう返すと、ハルカはコハルに優しく微笑み掛ける。
「あ、そうだ……」
ハルカは、何かを思い付いた様に握りこぶしをもう一つの掌に打ち付ける。
「コハルちゃん、秘密基地の場所覚えてる?」
可愛らしく首を傾げながら問い掛けるハルカの言葉に、静かに頷くと、ハルカは目を輝かせながら言葉を続ける。
「折角だからさ、もう一度、あそこに行かない?」
コハルも、嬉々とした表情で首を縦に振る。
「うんっ!」
2人で顔を見合わせると、ハルカがコハルの手を握ってくる。
「あ、でも、お仕事大丈夫?」
気持ちが早りすぎてがっついてしまった事に内心焦りつつ、相手の都合を一応確認する。無論、彼女が出してきた案なのだ。大丈夫でない訳がない。
「ええ。大丈夫よ。コハルちゃんは?」
ふわりと笑いながらそう言うと、ハルカは上目遣いで問い返す。
「私も大丈夫!」
コハルも声を弾ませながら、右手の親指と人差し指で丸を作る。他の三本の指は、スラリと細く、綺麗に立っている。それを見たハルカの顔が一瞬歪んだ事に、コハルは気づかないフリをする。
「じゃあそうと決まれば早く行っちゃおっ!」
ハルカは、首を傾げながら肘を肋につけて両の拳を肩の位置まで持ってくると、首を傾げながら満面の笑みを浮かべる。
「行っちゃおっ!」
態とらしく、大げさな素振りでその動作をするハルカを暖かい目で見守ると、コハルもそれに続く。2人は颯爽とマンションの敷地を後にする。
ヒールがアスファルトに叩きつけられる音を2つ並べながら、同じ様な格好をした仲良し2人組は、全く同じ方向に歩き出す。
「そう言えば、ハルカちゃんは今どこに勤めてるの?」
コハルは、他愛もない会話……昔馴染みに遭ったときの、ごく普通の世間話を、ハルカに持ちかける。
「うん。今は◇◇証券に勤めてるの。」
気取った様子など一切見せず、ハルカはにこやかにそう伝える。◇◇証券と言えば、日本でも大手の外資系企業だ。
「えっ……そうなの? それ、すごくない?」
誰もが羨むであろう経歴に内心ほくそ笑みながら、コハルは驚いたような表情を浮かべる。
「そんな事ないよぉ……」
照れ笑いを浮かべながら顔の前でこちらに左の掌を向けて、コハルの言葉を打ち消す動作をする。
「ハルカちゃんはやっぱりすごいや……」
懸命に綺麗な笑みを作ったまま、相手のことを賞賛する言葉を掛ける。コハルは、この後のことを考えながら舌なめずりをする。
相変わらず澱んだ雲が日光を覆い隠す空の下、残らない足跡を刻みながらアスファルトを叩きつける2つの靴音は、並んで"思いでの場所"へと歩みを進めてゆく。
「ハルカちゃんは美人で、頭も良くて、みんなの人気者で……ずっと私の憧れだったんだよ」
コハルにそう言われて悪い気はしないらしく、ハルカは嬉しそうにはにかんだ表情を見せる。
「ありがとう」
そう返すと、ハルカはコハルに優しく微笑み掛ける。
「あ、そうだ……」
ハルカは、何かを思い付いた様に握りこぶしをもう一つの掌に打ち付ける。
「コハルちゃん、秘密基地の場所覚えてる?」
可愛らしく首を傾げながら問い掛けるハルカの言葉に、静かに頷くと、ハルカは目を輝かせながら言葉を続ける。
「折角だからさ、もう一度、あそこに行かない?」
コハルも、嬉々とした表情で首を縦に振る。
「うんっ!」
2人で顔を見合わせると、ハルカがコハルの手を握ってくる。
「あ、でも、お仕事大丈夫?」
気持ちが早りすぎてがっついてしまった事に内心焦りつつ、相手の都合を一応確認する。無論、彼女が出してきた案なのだ。大丈夫でない訳がない。
「ええ。大丈夫よ。コハルちゃんは?」
ふわりと笑いながらそう言うと、ハルカは上目遣いで問い返す。
「私も大丈夫!」
コハルも声を弾ませながら、右手の親指と人差し指で丸を作る。他の三本の指は、スラリと細く、綺麗に立っている。それを見たハルカの顔が一瞬歪んだ事に、コハルは気づかないフリをする。
「じゃあそうと決まれば早く行っちゃおっ!」
ハルカは、首を傾げながら肘を肋につけて両の拳を肩の位置まで持ってくると、首を傾げながら満面の笑みを浮かべる。
「行っちゃおっ!」
態とらしく、大げさな素振りでその動作をするハルカを暖かい目で見守ると、コハルもそれに続く。2人は颯爽とマンションの敷地を後にする。
ヒールがアスファルトに叩きつけられる音を2つ並べながら、同じ様な格好をした仲良し2人組は、全く同じ方向に歩き出す。
「そう言えば、ハルカちゃんは今どこに勤めてるの?」
コハルは、他愛もない会話……昔馴染みに遭ったときの、ごく普通の世間話を、ハルカに持ちかける。
「うん。今は◇◇証券に勤めてるの。」
気取った様子など一切見せず、ハルカはにこやかにそう伝える。◇◇証券と言えば、日本でも大手の外資系企業だ。
「えっ……そうなの? それ、すごくない?」
誰もが羨むであろう経歴に内心ほくそ笑みながら、コハルは驚いたような表情を浮かべる。
「そんな事ないよぉ……」
照れ笑いを浮かべながら顔の前でこちらに左の掌を向けて、コハルの言葉を打ち消す動作をする。
「ハルカちゃんはやっぱりすごいや……」
懸命に綺麗な笑みを作ったまま、相手のことを賞賛する言葉を掛ける。コハルは、この後のことを考えながら舌なめずりをする。
相変わらず澱んだ雲が日光を覆い隠す空の下、残らない足跡を刻みながらアスファルトを叩きつける2つの靴音は、並んで"思いでの場所"へと歩みを進めてゆく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし
響ぴあの
ホラー
【1分読書】
意味が分かるとこわいおとぎ話。
意外な事実や知らなかった裏話。
浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。
どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる