コピーキャットの仮面

釜借 イサキ

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 一人の女性が、独居房の中で膝を抱えて座っていた。
 作り上げられた美しい顔は皺が寄り、姿はすっかり草臥れてしまっている。
 それでも、彼女は満ち足りている。だからだろうか、彼女は常に微笑んでいるのだ。いつ何時、自分にその時が訪れるのかも定かではないのに、だ。
 やっと憧れの人になれた。やっと、昔から焦がれた、あの人に取って代われた。それだけで、彼女は満足だったのだ。
 同じだけ罪を背負い、そしてその罪を受け取って罰を受ける。
「うふふふふ、あはははははは」
濁った瞳は焦点が合わぬまま。
 延々と続く廊下に、狂った呵い声が響く。
 晴れ渡った仄かな朝日に照らされながら彼女が聞いたのは、無機質な靴音だった。

コピーキャットの仮面【完】
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