コピーキャットの仮面

釜借 イサキ

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 最近、巷を賑わしていた女性の連続失踪事件の犯人が逮捕されたらしい。
 犯人の名前は新庄春香。動機は若い女性への嫉妬。
 事件当時、腐敗臭がするとの通報を受け駆け付けた警察官の応援要請によって現場に到着した警察官が、血塗れの女性を発見、職務質問したところ、犯行をを仄めかす証言をしたため、警察に連行されたのだ。
 率先して臨場した警察官は精神を患い、廃人同然となってしまったらしい。言い換えれば、それだけ現場は凄惨だった。
 しかし、それは序の口。この事件の真相は、加害者宅にあったのだ。加害者宅では、件の現場で見つかった遺体から全て欠損していた右の中指が発見された。
 そして、加害者宅の隣人も行方不明であることから、一番新しい遺体は彼女であると推定されている。
 一時は様々な憶測が飛び交い、人々が興味を寄せていたが、最近は違う様相を呈している。
 いつもは面白がって頼んでもいないような情報まで掘り起こしては報道するメディアも、今回ばかりは報道を差し控えており、一応の終息を見せた事件に対し、世間の関心も薄れてきており、事件は風化の一途を辿っている。
 それから数年の月日が流れ、人々が事件の事を忘れ去った頃に細々と、その事件に関る一報が流れた。
 『〇〇女性連続失踪猟奇殺人事件、被告人の死刑が確定』
 その他大勢の群衆にとっては取り留めのない、事件関係者にとっては長い間待ち侘びた速報だった。
 ただ、この事件には不審な点も多く、事実確認にもかなりの時間を要した。というのも、自分がやったという割に、被告人に主体性が無かったからだ。本当は別の犯人もいるのではないかという説も一時期出たものの、いくら警察が強制せずとも、彼女の供述は全く変わらなかった。それには、被告人側の弁護士も手を焼いたとか。
 しかし、心神耗弱が認められるような状況でもなく、彼女は常に正気で、正気の沙汰とは思えないような供述ばかりしていた。
 結審を迎えてもなお、真実は闇の中。こう見る捜査関係者が大半だという。
 きっと、彼らが真相に辿り着くことは、一生ないだろう。
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