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メリーさん、出会ってしまう。
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大学での諸々が終わった頃、日はどっぷり落ちていた。満天の星々が、学食帰りの三人と一体を見守っている。
「一緒に帰りましょうねー、メリーさん」
一日中変わらぬ喜びを胸に、琉依は弾む声を掛ける。
「いやよ。」
相変わらず電話越しに聞こえるメリーさんの声には、気恥ずかしさが滲む。
「いや、それはちょっと……」
「なによあんた。」
奥歯に物が挟まったような口振りの周に、メリーさんは鋭く返す。
「おい、岡。」
「……?」
急に自分に振られた話に、琉依が目を丸くしていると、
「お前今、人形と話してるヤバイ奴だぞ。」
秀人はばっさりと切り捨てる。
ーー言っちゃったよ、この人……
周が言うか言うまいか考えあぐねていた言葉を、躊躇いもなく告げてしまう。
「……あ……」
「……」
はっとする琉依と、無表情だが微かな憂いを滲ませる人形。
「……」
秀人はバツが悪そうに頭を掻く。
「いいもん、連れて帰るもん!」
「おい……」
それでもなお、メリーさんを離さない琉依に、秀人は若干の戸惑いを見せる。
「メリーさん、おうちは?」
ただならぬ二人の空気から逃げるようにして、周はとりあえず、琉依の胸中にいる人形の瞳を見る。吸い込まれるような、硝子の目ーー
「……ないわよ。」
携帯越しの声に、涙が混ざる。今までどこで何をしてきたのか、周はふと、思いを巡らせる。
「やっぱり連れて帰る!」
「岡さん、いつになく押しが強いよ!?」
ぷっくりと頬を膨らませる琉依は、子供のように拗ねたような顔をする。意外な側面に、周が呆気にとられていると……
「……じゃあ、部室に置いておいたらどうだ。」
見かねた秀人は、溜め息混じりに提案する。
「メリーさん、寂しくないですか?」
琉依は、メリーさんの脇を抱えて、自分の方にその綺麗な顔を向ける。ブロンドの髪が、風に靡く。
「……どうしてもって言うんなら……そこに居てやっても良いわよ。」
「本当に?」
憐憫でも恐怖でもない、ただ心配するような琉依の瞳に、メリーさんはこそばゆささえ感じる。
「……その携帯をもってれば、私は誰とでも会話できるんだからね!」
先程までの哀愁はどこへやら、目の前のメリーさんは得意気に、携帯越しに笑って見せた。
「へへ、嬉しい!」
そう言って綻ぶ無垢な笑顔に、
「……」
メリーさんは優しい沈黙を返した。
そして、部室に一つ、呪物が増えた。
「一緒に帰りましょうねー、メリーさん」
一日中変わらぬ喜びを胸に、琉依は弾む声を掛ける。
「いやよ。」
相変わらず電話越しに聞こえるメリーさんの声には、気恥ずかしさが滲む。
「いや、それはちょっと……」
「なによあんた。」
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「おい、岡。」
「……?」
急に自分に振られた話に、琉依が目を丸くしていると、
「お前今、人形と話してるヤバイ奴だぞ。」
秀人はばっさりと切り捨てる。
ーー言っちゃったよ、この人……
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「……あ……」
「……」
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「……」
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それでもなお、メリーさんを離さない琉依に、秀人は若干の戸惑いを見せる。
「メリーさん、おうちは?」
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「……ないわよ。」
携帯越しの声に、涙が混ざる。今までどこで何をしてきたのか、周はふと、思いを巡らせる。
「やっぱり連れて帰る!」
「岡さん、いつになく押しが強いよ!?」
ぷっくりと頬を膨らませる琉依は、子供のように拗ねたような顔をする。意外な側面に、周が呆気にとられていると……
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琉依は、メリーさんの脇を抱えて、自分の方にその綺麗な顔を向ける。ブロンドの髪が、風に靡く。
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