メリーさん、変な奴と出会ってしまう。~オカルト研究会②~

釜借 イサキ

文字の大きさ
9 / 12
メリーさん、出会ってしまう。

7

しおりを挟む
 大学での諸々が終わった頃、日はどっぷり落ちていた。満天の星々が、学食帰りの三人と一体を見守っている。
「一緒に帰りましょうねー、メリーさん」
一日中変わらぬ喜びを胸に、琉依は弾む声を掛ける。
「いやよ。」
相変わらず電話越しに聞こえるメリーさんの声には、気恥ずかしさが滲む。
「いや、それはちょっと……」
「なによあんた。」
奥歯に物が挟まったような口振りの周に、メリーさんは鋭く返す。
「おい、岡。」
「……?」
急に自分に振られた話に、琉依が目を丸くしていると、
「お前今、人形と話してるヤバイ奴だぞ。」
秀人はばっさりと切り捨てる。
ーー言っちゃったよ、この人……
周が言うか言うまいか考えあぐねていた言葉を、躊躇いもなく告げてしまう。
「……あ……」
「……」
はっとする琉依と、無表情だが微かな憂いを滲ませる人形。
「……」
秀人はバツが悪そうに頭を掻く。
「いいもん、連れて帰るもん!」
「おい……」
それでもなお、メリーさんを離さない琉依に、秀人は若干の戸惑いを見せる。
「メリーさん、おうちは?」
ただならぬ二人の空気から逃げるようにして、周はとりあえず、琉依の胸中にいる人形の瞳を見る。吸い込まれるような、硝子の目ーー
「……ないわよ。」
携帯越しの声に、涙が混ざる。今までどこで何をしてきたのか、周はふと、思いを巡らせる。
「やっぱり連れて帰る!」
「岡さん、いつになく押しが強いよ!?」
ぷっくりと頬を膨らませる琉依は、子供のように拗ねたような顔をする。意外な側面に、周が呆気にとられていると……
「……じゃあ、部室に置いておいたらどうだ。」
見かねた秀人は、溜め息混じりに提案する。
「メリーさん、寂しくないですか?」
琉依は、メリーさんの脇を抱えて、自分の方にその綺麗な顔を向ける。ブロンドの髪が、風に靡く。
「……どうしてもって言うんなら……そこに居てやっても良いわよ。」
「本当に?」
憐憫でも恐怖でもない、ただ心配するような琉依の瞳に、メリーさんはこそばゆささえ感じる。
「……その携帯をもってれば、私は誰とでも会話できるんだからね!」
先程までの哀愁はどこへやら、目の前のメリーさんは得意気に、携帯越しに笑って見せた。
「へへ、嬉しい!」
そう言って綻ぶ無垢な笑顔に、
「……」
メリーさんは優しい沈黙を返した。
そして、部室に一つ、呪物が増えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

怪異語り 〜世にも奇妙で怖い話〜

ズマ@怪異語り
ホラー
五分で読める、1話完結のホラー短編・怪談集! 信じようと信じまいと、誰かがどこかで体験した怪異。

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)

本野汐梨 Honno Siori
ホラー
 あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。 全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。 短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。 たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。

【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし

響ぴあの
ホラー
【1分読書】 意味が分かるとこわいおとぎ話。 意外な事実や知らなかった裏話。 浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。 どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。

百の話を語り終えたなら

コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」 これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。 誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。 日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。 そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき—— あなたは、もう後戻りできない。 ■1話完結の百物語形式 ■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ ■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感 最後の一話を読んだとき、

処理中です...