9 / 13
大学生、変な奴に憑かれてしまう。
7
しおりを挟む
何処だか分からない場所、彼岸の淵か、此岸の果てか、はたまたその両方か。見渡す先は闇、闇、闇ーー
「ねえ、君。」
癇に障る声が聞こえる。
「横溝秀人くん。」
声の主は、興味なさげに呼びかける。
「……なんだ。」
声の方を向くと、そこには一人、男が立っている。何やらポーズを決めながらこちらを見ている。
「いやあ、一つだけ気になったことがあってねえ……」
思わせぶりに、男は笑う。
「ああ、自己紹介がまだだったね。僕の名前は鳴野裕太。」
唐突な自己紹介に、秀人は沈黙だけを返す。
「君さあ、なんであんなことをしたの?」
ぶつけられた純粋な疑問に、秀人の表情はぴくりとも動かない。
「わからないんだ。何が原因なのか。」
裕太は、小首を傾げる。
「……お前に関係ないだろ。」
そう言う秀人の表情は、やはり変わらない。目の前の男は、見た目ほど軽薄な奴ではないらしい。
「まあ、人には言いたくないことの一つや二つ、あるものだからね。」
諦めたように、裕太は呟く。それを、秀人は無表情に睨めつける。
「でもさ、君には大切にしてくれるお友達がいるんだろう……?」
裕太の声に、憂いが混じる。
「いや。」
短い否定。秀人の表情は、やはり動かない。
「……僕は君が羨ましい。」
「……そうか。」
どこか遠くを見つめる裕太の目は、懐かしいものを顧みるような慈しみを秘めていた。秀人はただ、それを聞いている。
「じゃあ、僕は行くべき場所に行くよ。」
そう言うと、裕太は一歩、また一歩と秀人に歩み寄り、やがて二人は互いに背を向け合う。
「……はあ。」
秀人の溜息は静かに闇へと溶けていく。
「ねえ、君。」
癇に障る声が聞こえる。
「横溝秀人くん。」
声の主は、興味なさげに呼びかける。
「……なんだ。」
声の方を向くと、そこには一人、男が立っている。何やらポーズを決めながらこちらを見ている。
「いやあ、一つだけ気になったことがあってねえ……」
思わせぶりに、男は笑う。
「ああ、自己紹介がまだだったね。僕の名前は鳴野裕太。」
唐突な自己紹介に、秀人は沈黙だけを返す。
「君さあ、なんであんなことをしたの?」
ぶつけられた純粋な疑問に、秀人の表情はぴくりとも動かない。
「わからないんだ。何が原因なのか。」
裕太は、小首を傾げる。
「……お前に関係ないだろ。」
そう言う秀人の表情は、やはり変わらない。目の前の男は、見た目ほど軽薄な奴ではないらしい。
「まあ、人には言いたくないことの一つや二つ、あるものだからね。」
諦めたように、裕太は呟く。それを、秀人は無表情に睨めつける。
「でもさ、君には大切にしてくれるお友達がいるんだろう……?」
裕太の声に、憂いが混じる。
「いや。」
短い否定。秀人の表情は、やはり動かない。
「……僕は君が羨ましい。」
「……そうか。」
どこか遠くを見つめる裕太の目は、懐かしいものを顧みるような慈しみを秘めていた。秀人はただ、それを聞いている。
「じゃあ、僕は行くべき場所に行くよ。」
そう言うと、裕太は一歩、また一歩と秀人に歩み寄り、やがて二人は互いに背を向け合う。
「……はあ。」
秀人の溜息は静かに闇へと溶けていく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ワシの子を産んでくれんか
KOU/Vami
ライト文芸
妻に先立たれ、息子まで亡くした老人は、息子の妻である若い未亡人と二人きりで古い家に残された。
「まだ若い、アンタは出て行って生き直せ」――そう言い続けるのは、彼女の未来を守りたい善意であり、同時に、自分の寂しさが露見するのを恐れる防波堤でもあった。
しかし彼女は去らない。義父を一人にできないという情と、家に残る最後の温もりを手放せない心が、彼女の足を止めていた。
昼はいつも通り、義父と嫁として食卓を囲む。けれど夜になると、喪失の闇と孤独が、二人の境界を静かに溶かしていく。
ある夜を境に、彼女は“何事もない”顔で日々を回し始め、老人だけが遺影を直視できなくなる。
救いのような笑顔と、罪のような温もり。
二人はやがて、外の世界から少しずつ音を失い、互いだけを必要とする狭い家の中へ沈んでいく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる