7 / 14
優しき青年との出会い(2/3)
しおりを挟む
ーーーそして一人で寒さに震えながらも、目を閉じて体力の温存を試みる事、どのくらいの時間が経ったのか。寒気が落ち着く事は未だに無いものの、少なくとも髪の毛から水分がポタポタと落ちて来ないだけの時間は過ぎたと思う。
しかし私の聴覚はこの短時間でかなり洗練したのかコツコツと誰かが歩いてくる足音が聞こえてきた。久しぶりの人の足音に感動して涙が出てしまいそうになるものの、可能性としてはウィンストンである事を考えるとまた胃がズキズキと痛くなってくる。舌を出しておく準備でもした方が良いのだろうか。
「あ、あの。大丈夫ですか?死んでますか?」
しかし予想に反して聞こえてきた声は、若い男の人の声だった。門番か何かの見張り人であろうか?それにしてもやけに不謹慎な声掛けをされたものである。
「ご飯ですか、飲み物ですか。それ以外なら要らないです」
やけにぶっきらぼうな言い方になってしまって申し訳なさもあるが今は生きるか死ぬかのサバイバルの真っただ中なのである。他人を気遣う思いやり精神はいまここで発揮なんてしている場合じゃないのだ。すると何やら扉越しでガチャガチャ音がすると思ったらゆっくりと扉が開いた。
「ご、ごめん。ウィンストン様怖かったよね。君が連れていかれるのを見てしまって、妹達を思い出したらいてもたってもいられなくて、入るね」
そして入ってきたのは大学生くらいの年齢の、まあとにかく若い男だった。この世界にきてから日本人離れした人しか見かけてこなかったから栗色の髪に茶色のおっとりとした瞳をみて、ほんの少し安堵した。しかしそんなに私はこの世界では幼く見えるのだろうか?それにこの言い方から察するに彼はウィンストンの目を盗んでここに来たように見えるが色々と大丈夫なのだろうか。
「ウィ、ウィンストン様に言わないでもらえると助かるよ。ちょっと縄を外すね。うわーー、かなりきつく結んでるなあ。でも君が幼くてよかったよ。大人なら足も腕も切り落とされていたかもしれないから」
やはり彼はこっそりと助けに来てくれたらしい。しかし見ず知らずの私を助けても私は彼に何かお礼を渡す事も出来ないしデメリットがあるようにしか思えない。
それにしても最後の言葉に恐怖でふるりと震えてしまった。え、なに。手加減って、このキツキツの縄そのもの?これこそがその手加減だったの?え、もしも私が彼らにとって幼く見えていなければ腕も足も無かったって事?
そして彼は数分間、苦戦したのちにようやく解けた縄を解く事に成功していた。手首には赤黒い跡が残ってしまったものの久しぶりの解放感に嬉しくなる。そして私は立ち上がって腰を丁寧に曲げてお礼をする。
「あはは、君はやっぱり迷い込んじゃっただけなんだね。だめじゃないか、解けたら逃げないと。しかしよりにもよって城に侵入するだなんて、、そんな発想はなかったて顔をしないでおくれ」
私も馬鹿な事をしたと思い。お礼をしないで一目散に逃げればよかった。彼はお腹を抱えて笑っているが、横を通り抜けようとすれば腕を広げて止められた。
「助けてあげたいのは山々だけど、ごめんね。いま逃げ出して見つかったら切り殺されちゃうかも。ウィンストン様が君の仲間が来るのを警戒して城内ピリピリしているんだ」
しかし私の聴覚はこの短時間でかなり洗練したのかコツコツと誰かが歩いてくる足音が聞こえてきた。久しぶりの人の足音に感動して涙が出てしまいそうになるものの、可能性としてはウィンストンである事を考えるとまた胃がズキズキと痛くなってくる。舌を出しておく準備でもした方が良いのだろうか。
「あ、あの。大丈夫ですか?死んでますか?」
しかし予想に反して聞こえてきた声は、若い男の人の声だった。門番か何かの見張り人であろうか?それにしてもやけに不謹慎な声掛けをされたものである。
「ご飯ですか、飲み物ですか。それ以外なら要らないです」
やけにぶっきらぼうな言い方になってしまって申し訳なさもあるが今は生きるか死ぬかのサバイバルの真っただ中なのである。他人を気遣う思いやり精神はいまここで発揮なんてしている場合じゃないのだ。すると何やら扉越しでガチャガチャ音がすると思ったらゆっくりと扉が開いた。
「ご、ごめん。ウィンストン様怖かったよね。君が連れていかれるのを見てしまって、妹達を思い出したらいてもたってもいられなくて、入るね」
そして入ってきたのは大学生くらいの年齢の、まあとにかく若い男だった。この世界にきてから日本人離れした人しか見かけてこなかったから栗色の髪に茶色のおっとりとした瞳をみて、ほんの少し安堵した。しかしそんなに私はこの世界では幼く見えるのだろうか?それにこの言い方から察するに彼はウィンストンの目を盗んでここに来たように見えるが色々と大丈夫なのだろうか。
「ウィ、ウィンストン様に言わないでもらえると助かるよ。ちょっと縄を外すね。うわーー、かなりきつく結んでるなあ。でも君が幼くてよかったよ。大人なら足も腕も切り落とされていたかもしれないから」
やはり彼はこっそりと助けに来てくれたらしい。しかし見ず知らずの私を助けても私は彼に何かお礼を渡す事も出来ないしデメリットがあるようにしか思えない。
それにしても最後の言葉に恐怖でふるりと震えてしまった。え、なに。手加減って、このキツキツの縄そのもの?これこそがその手加減だったの?え、もしも私が彼らにとって幼く見えていなければ腕も足も無かったって事?
そして彼は数分間、苦戦したのちにようやく解けた縄を解く事に成功していた。手首には赤黒い跡が残ってしまったものの久しぶりの解放感に嬉しくなる。そして私は立ち上がって腰を丁寧に曲げてお礼をする。
「あはは、君はやっぱり迷い込んじゃっただけなんだね。だめじゃないか、解けたら逃げないと。しかしよりにもよって城に侵入するだなんて、、そんな発想はなかったて顔をしないでおくれ」
私も馬鹿な事をしたと思い。お礼をしないで一目散に逃げればよかった。彼はお腹を抱えて笑っているが、横を通り抜けようとすれば腕を広げて止められた。
「助けてあげたいのは山々だけど、ごめんね。いま逃げ出して見つかったら切り殺されちゃうかも。ウィンストン様が君の仲間が来るのを警戒して城内ピリピリしているんだ」
1
あなたにおすすめの小説
ふしあわせに、殿下
古酒らずり
恋愛
帝国に祖国を滅ぼされた王女アウローラには、恋人以上で夫未満の不埒な相手がいる。
最強騎士にして魔性の美丈夫である、帝国皇子ヴァルフリード。
どう考えても女泣かせの男は、なぜかアウローラを強く正妻に迎えたがっている。だが、将来の皇太子妃なんて迷惑である。
そんな折、帝国から奇妙な挑戦状が届く。
──推理ゲームに勝てば、滅ぼされた祖国が返還される。
ついでに、ヴァルフリード皇子を皇太子の座から引きずり下ろせるらしい。皇太子妃をやめるなら、まず皇太子からやめさせる、ということだろうか?
ならば話は簡単。
くたばれ皇子。ゲームに勝利いたしましょう。
※カクヨムにも掲載しています。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
氷の王妃は跪かない ―褥(しとね)を拒んだ私への、それは復讐ですか?―
柴田はつみ
恋愛
亡国との同盟の証として、大国ターナルの若き王――ギルベルトに嫁いだエルフレイデ。
しかし、結婚初夜に彼女を待っていたのは、氷の刃のように冷たい拒絶だった。
「お前を抱くことはない。この国に、お前の居場所はないと思え」
屈辱に震えながらも、エルフレイデは亡き母の教え――
「己の誇り(たましい)を決して売ってはならない」――を胸に刻み、静かに、しかし凛として言い返す。
「承知いたしました。ならば私も誓いましょう。生涯、あなたと褥を共にすることはございません」
愛なき結婚、冷遇される王妃。
それでも彼女は、逃げも嘆きもせず、王妃としての務めを完璧に果たすことで、己の価値を証明しようとする。
――孤独な戦いが、今、始まろうとしていた。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる