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Episode2:No spice,No life
2-5 おもしれー女を焚きつける【累視点】
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才造さんがバスルームへ向かうと、莉子ちゃんは食器を洗い始めた。二人の間で家事の分担が決まっているようだ。今日は才造さんが料理をしたので、後片付けは莉子ちゃんの当番。
その莉子ちゃんと一緒にキッチンに立ち、お皿拭きを手伝っていると、彼女は恐る恐る僕に尋ねてきた。
「累くん……さっき言ってたアレ、どーいうこと?」
「あぁ、アレね。あのね、さいぞーさんに片思いしてる女の子がいるよ」
サクッとカラッとそう伝えると、彼女はハッキリ分かりやすく、困ったような表情を浮かべた。
「どどっ、どーいう……えっ、誰??? 会社の人?」
「郡さんって言って、今年入ってきた新人。すっごく真面目で、おカタい感じの子。仕事はできるけど、雑談には一切乗ってこなくて、喋り方もロボットみたいでさ。見た目も地味~な感じ」
「そっ……その人が、さいぞーのことを……?」
「多分ね。さいぞーさんと話してる時だけほんの微か~に嬉しそうなオーラを放ってたり、さいぞーさんにもらった本をすっごく大事そうに抱きかかえてたり……そうそう、あと、この前の残業の時、夕飯をカレーにしようって提案したのもその子なんだ。『草田主任がカレーお好きだとおっしゃっていたので』……って、ほんのり照れながらそんなこと言ってた。それで、さいぞーさんのこと好きなのかって聞いたら、『個人的な質問にはお答えしかねます』って事務的に言われた」
「そういう人にもズバッと聞いちゃうあたり、さすが累くんだよね……でも、ひっ、否定しないってことは……やっぱりそうなのかなぁ?」
「どうだろうね。まぁ、そんなに警戒することもないんじゃないかな。一応、さいぞーさんは恋人がいるってクギを刺しておいたけど」
「でもそれ……さいぞーは好意を寄せられてるって知らないの?」
「気付いてないだろうねぇ。僕も話してはいないよ」
「いっ……言わない方がいい……かな」
「うーん。男って単純な生き物だから、知ってしまうと意識しちゃうってことはあり得るかもね。あ、あくまで一般論ね。あの人に限ってそんなことはないと思うけど」
サーッと、莉子ちゃんの顔が青ざめた。
「や……うん。ないない。さいぞーに限ってそんなことは……他の子に目移りしちゃうとか……ないナイない。だってホラ……信じてるし?」
って言いながら焦ってる焦ってる。思惑通りだ。
――そう、僕は底意地が悪い。
でも、何も二人の仲を引っ掻き回したいわけじゃない。むしろ莉子ちゃんに危機感を与えて、彼女がより大胆に才造さんを誘惑するように仕向け……ゴホン。
二人の絆をより盤石にさせることが僕の目的。
これが僕の生きがい――『推し活』だ。
ドサクサに紛れて洗い物をする莉子ちゃんの髪を撫で、できる限り甘い声で彼女に囁く。
「信じたいけど不安を拭いきれないっていうのはよく分かるよ。でも、僕がちゃんと目を光らせておくから安心して。莉子ちゃんは莉子ちゃんにしかできないことをしたらいいよ」
「あたしにしかできないこと……って?」
「そりゃあ……」
意味ありげに微笑み、僕は彼女が洗い物から手を離せないのをいいことに、その顎をクイッと持ち上げてやった。
「さいぞーさんのハートをガッチリ掴んでおくことさ♡」
ドガッッッ!!!!!
莉子ちゃんの美脚による蹴りが僕の脛にヒットした。手は塞がっているが足は空いていたようだ。
「僕を足蹴にする女性なんて君くらいなもんだよ」
「ごめん、反射で。さいぞーに窓から投げられるよりマシでしょ。あたしもさいぞーを裏切りたくはないから」
さぁ。莉子ちゃんがこれからどんな行動に出るのか楽しみだ。できればとびっきりの色仕掛けだといいな。
◇
その翌日、莉子ちゃんは早速動いたらしい。
「草田主任~、社食行きます?」
ランチタイム、同じチームの部下たちが才造さんにそんな声をかけたが、彼は小さなトートバッグを取り出して断っていた。
「今日、弁当あるから」
「あれっ、もしかして愛妻弁当ですか? いいですねぇ」
「まだ妻じゃないけど」
莉子ちゃん、才造さんの胃袋を掴む線で来たらしい。刺激的な夜の営み方向を期待していたけれど、これはこれで可愛らしい。
部下に冷やかされた才造さんは、耳を少し赤くして、満更でもなさそうな顔をしながら自分のデスクで弁当の包みを開けた。
「でも何ていうか……個性的? な弁当っすね……」
「見た目個性的だけど、味は割と普通だから」
「玉子焼きですか、それ。焦げてません?」
「焦げてんのが好きなの」
残念なことに、どうも莉子ちゃんは料理のセンスが皆無らしい。一応努力はしているようだが、一向に腕が上がらない。目玉焼きを作ればスクランブルエッグになるし、ハンバーグを作ればそぼろになる。ネイルはあんな器用に塗るのに、不思議でならない。
でも、彼女なりに考えた上での行動なのかと考えると非常に健気だと思える。萌える。僕でさえそうなのだから、才造さんはなおさらだろう。
その証拠に、非常に幸せそうにリコ弁当をかき込んでいる。表情には出さないが、周囲に漂うオーラが明らかに暖色系だ。
その様子は、僕の隣の郡さんにも見えていたはずだ。
彼女はキリのいいところで仕事を中断し、表情を変えずに席を離れた。昼休憩を取るのだろう。
僕は何とはなしに、彼女の後を追いかけてみた。単なる気まぐれで。
その莉子ちゃんと一緒にキッチンに立ち、お皿拭きを手伝っていると、彼女は恐る恐る僕に尋ねてきた。
「累くん……さっき言ってたアレ、どーいうこと?」
「あぁ、アレね。あのね、さいぞーさんに片思いしてる女の子がいるよ」
サクッとカラッとそう伝えると、彼女はハッキリ分かりやすく、困ったような表情を浮かべた。
「どどっ、どーいう……えっ、誰??? 会社の人?」
「郡さんって言って、今年入ってきた新人。すっごく真面目で、おカタい感じの子。仕事はできるけど、雑談には一切乗ってこなくて、喋り方もロボットみたいでさ。見た目も地味~な感じ」
「そっ……その人が、さいぞーのことを……?」
「多分ね。さいぞーさんと話してる時だけほんの微か~に嬉しそうなオーラを放ってたり、さいぞーさんにもらった本をすっごく大事そうに抱きかかえてたり……そうそう、あと、この前の残業の時、夕飯をカレーにしようって提案したのもその子なんだ。『草田主任がカレーお好きだとおっしゃっていたので』……って、ほんのり照れながらそんなこと言ってた。それで、さいぞーさんのこと好きなのかって聞いたら、『個人的な質問にはお答えしかねます』って事務的に言われた」
「そういう人にもズバッと聞いちゃうあたり、さすが累くんだよね……でも、ひっ、否定しないってことは……やっぱりそうなのかなぁ?」
「どうだろうね。まぁ、そんなに警戒することもないんじゃないかな。一応、さいぞーさんは恋人がいるってクギを刺しておいたけど」
「でもそれ……さいぞーは好意を寄せられてるって知らないの?」
「気付いてないだろうねぇ。僕も話してはいないよ」
「いっ……言わない方がいい……かな」
「うーん。男って単純な生き物だから、知ってしまうと意識しちゃうってことはあり得るかもね。あ、あくまで一般論ね。あの人に限ってそんなことはないと思うけど」
サーッと、莉子ちゃんの顔が青ざめた。
「や……うん。ないない。さいぞーに限ってそんなことは……他の子に目移りしちゃうとか……ないナイない。だってホラ……信じてるし?」
って言いながら焦ってる焦ってる。思惑通りだ。
――そう、僕は底意地が悪い。
でも、何も二人の仲を引っ掻き回したいわけじゃない。むしろ莉子ちゃんに危機感を与えて、彼女がより大胆に才造さんを誘惑するように仕向け……ゴホン。
二人の絆をより盤石にさせることが僕の目的。
これが僕の生きがい――『推し活』だ。
ドサクサに紛れて洗い物をする莉子ちゃんの髪を撫で、できる限り甘い声で彼女に囁く。
「信じたいけど不安を拭いきれないっていうのはよく分かるよ。でも、僕がちゃんと目を光らせておくから安心して。莉子ちゃんは莉子ちゃんにしかできないことをしたらいいよ」
「あたしにしかできないこと……って?」
「そりゃあ……」
意味ありげに微笑み、僕は彼女が洗い物から手を離せないのをいいことに、その顎をクイッと持ち上げてやった。
「さいぞーさんのハートをガッチリ掴んでおくことさ♡」
ドガッッッ!!!!!
莉子ちゃんの美脚による蹴りが僕の脛にヒットした。手は塞がっているが足は空いていたようだ。
「僕を足蹴にする女性なんて君くらいなもんだよ」
「ごめん、反射で。さいぞーに窓から投げられるよりマシでしょ。あたしもさいぞーを裏切りたくはないから」
さぁ。莉子ちゃんがこれからどんな行動に出るのか楽しみだ。できればとびっきりの色仕掛けだといいな。
◇
その翌日、莉子ちゃんは早速動いたらしい。
「草田主任~、社食行きます?」
ランチタイム、同じチームの部下たちが才造さんにそんな声をかけたが、彼は小さなトートバッグを取り出して断っていた。
「今日、弁当あるから」
「あれっ、もしかして愛妻弁当ですか? いいですねぇ」
「まだ妻じゃないけど」
莉子ちゃん、才造さんの胃袋を掴む線で来たらしい。刺激的な夜の営み方向を期待していたけれど、これはこれで可愛らしい。
部下に冷やかされた才造さんは、耳を少し赤くして、満更でもなさそうな顔をしながら自分のデスクで弁当の包みを開けた。
「でも何ていうか……個性的? な弁当っすね……」
「見た目個性的だけど、味は割と普通だから」
「玉子焼きですか、それ。焦げてません?」
「焦げてんのが好きなの」
残念なことに、どうも莉子ちゃんは料理のセンスが皆無らしい。一応努力はしているようだが、一向に腕が上がらない。目玉焼きを作ればスクランブルエッグになるし、ハンバーグを作ればそぼろになる。ネイルはあんな器用に塗るのに、不思議でならない。
でも、彼女なりに考えた上での行動なのかと考えると非常に健気だと思える。萌える。僕でさえそうなのだから、才造さんはなおさらだろう。
その証拠に、非常に幸せそうにリコ弁当をかき込んでいる。表情には出さないが、周囲に漂うオーラが明らかに暖色系だ。
その様子は、僕の隣の郡さんにも見えていたはずだ。
彼女はキリのいいところで仕事を中断し、表情を変えずに席を離れた。昼休憩を取るのだろう。
僕は何とはなしに、彼女の後を追いかけてみた。単なる気まぐれで。
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