最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第86話

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「ん、ユーマか。もう帰ってきたのか?」
「いや、さっきカシワドリを捕まえて家に送ってもらったんで、そろそろここに持ってきてくれるはずなんです。あと30分、遅くても1時間以内には来ると思います」
「カシワドリか。では今日は鶏肉か?」
「いやいや、そんなことはないですよ。メスのカシワドリを卵用に捕まえて来ただけですから。俺にはオスメスの区別がつかないんで全部捕まえましたし」
「そうか」

 確かにカシワドリを自分で育てて食べるのもありではあるが、育てているうちに愛情も湧くだろうし、自分で育てたモンスターを食べることはできるだけしたくない。

「なのでカシワドリ達は今まで使ってなかったもう1つの小さな厩舎で飼うことになると思います」
「あの厩舎は家から遠くて良かった」
「そうか、確かに毎朝ゴケゴケ鳴き声が聞こえてくるのは嫌ですもんね」
「あぁ。ちなみにカシワドリを飼うということは、あそこを鶏舎に建て直すのか?」
「ちょっとそれは考えてませんでしたけど、そうなるかもしれませんね」

 勢いで捕まえたけど、今考えると結構考えなしでカシワドリを捕まえてきてしまった。

「まぁレイに頼めばどうにかなるだろう」
「俺もフカさんに今頼もうと思ってました」
「お、もしかして来たのではないか?」
「そうですね。じゃあ受け取ってきます」

 玄関から既にすごい鳴き声が聞こえるためカシワドリで間違いないだろう。そのまま裏口の方に回ってもらって、使っていない小さな厩舎まで持って行ってもらう。

「ありがとうございました」
「はい。もし何か飼育する際にお困りでしたら、いつでも魔獣ギルドへお越しください」
「分かりました」
「では失礼します」
『ゴケーー』『ゴケゴケ』『ゴケ』……

 とりあえず建物の中に入れたはいいが、なかなかうるさい。

「ハセクさんにカシワドリのことを話しとくか」

 と思ったら扉が開き、肩を叩かれた。

「あ、ハセクさん。ちょうどハセクさんにもカシワドリを飼うことを話しに行こうと思ってたんです」
「(ぶんぶん)」

 俺が後先考えず捕まえてきちゃった話もしようと思ったのだが、ハセクさんはカシワドリを飼うことが嬉しいようで、後のことは全て任せて欲しいというメモを俺に渡したあと、急いでフカさんの家に駆け足で帰って行った。

「なんか分からないけど、どうにかなりそうだな」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
『ゴケー!』『ゴケゴケ』『ゴケ!』

 ハセクさんはウル達からの信頼も厚いので、ここはハセクさんにおんぶに抱っこで申し訳ないが、俺も頼らせてもらうことにする。

「ユーマ、どうなった?」
「ハセクさんに話を……」

 家に帰ってモニカさんにさっきあったことを説明し、少しリビングでくつろぐことにする。

「ハセクはモンスターが本当に好きそうだからな」
「俺がいない間ってどんな感じなんですか?」
「別に変わらないぞ。ずっと厩舎に居る」
「そ、そうですか」
「まぁレイも言っていたが、ハセクが必要になる時はどこかで飼われている家畜が病気になった時だからな。基本的にはハセクに仕事がない方が良いんだ」
「なるほど」

 モニカさんといつも通り話しているつもりではあるが、どうもさっきからモニカさんに落ち着きがない。

「あの、もしかして緊張してます?」
「ひぇっ、な、何がだ? 私は家族に会うだけだぞ。久し振りだからって緊張なんてしていにぁい!」
「そ、そうですよね(別に家族に会うことに緊張しているかなんて具体的なことは聞いてないんだけど)」

「俺の勘違いでした。じゃあまだまだ時間はあるので、ちょっと相談に乗ってくれませんか?」
「お、良いぞ。なんだ?」
「大したことじゃないんですけど、残りの時間で何をしようかなと思いまして」
「私の家族が来る時間までか?」
「はい。行ってない場所を探索するのはちょっと時間内に戻ってこれるか心配ですし、かと言って行ったことある場所に行ってもなぁって感じなんで」
「なるほどな」

 少し考えたあと、すぐにモニカさんは答えてくれた。

「ならカジノだな」
「え」
「私も家で居るとは言ったが、どうも時間の経過が遅く感じてな。それならばカジノに行って時間を有効活用しようと」
「……」
「それにカジノで稼いだお金で何か買うのもいいかもしれない。ユーマも一緒なら今日の私が負けるはずな「それ以外でお願いします!」そ、そうか」

「では、そうだな。これは私のお願いになってしまうんだが、この街を一緒に回ってみたい」
「北の街をですか?」
「あぁ。私はこれまで人を避けて来たが、自分の住んでいる街のことくらいは知っておきたいと思ってな」
「俺も1回だけ宿屋に行ってご飯食べたくらいで、あんまり歩き回ったことなかったんで、いいですね。行きましょうか」

 少しだけ準備をすると言って部屋に入っていったモニカさんを待つ間に、ゴーさんに話をしに行く。

「ゴーさん。今日カシワドリっていうモンスターがうちに増えたから、今後はそっちのお世話もお願いすることになるかも」
「ゴゴ」
「ゴーさんって何かしてもらって嬉しいことってある?」
「ゴゴ」
「お礼とかしたい時に何をすればいいのかなって」
「ゴゴ」
「宝石とかいる?」
「ゴゴ」
「欲しいものとかある?」
「ゴゴ」
「じゃあ休みの日を作ると「ゴゴゴ!!」」

 休みの日という言葉に、異常に反応したゴーさんを落ち着かせる。

「休みは欲しいの?」
「ゴゴゴ!!(ふるふるっ)」
「欲しくない?」
「ゴゴ!(コクコク)」

 メイちゃん、君はなんていうワーカーホリックを作ってしまったんだ。

「そ、そっか。休みたい時は本当に言ってね。欲しいものとかあったら用意するから」
「ゴゴ」
「ユーマ、用意できたぞ」
「分かりました。今行きます」

 仕事熱心なゴーさんに家を任せて、ウル達と共にモニカさんについて行く。

「まずはどこに行くんですか?」
「やはり最初は職人ギルドからだろう」

 モニカさんは目立ってしまうため、出来るだけ職人ギルドの辺りは避けるようにしているらしく、今はとても楽しそうだった。

「ユーマ! こんなにここは色々なものが売っているんだな!」
「あそこで俺は種とか買って、あっちがミルク保存缶とか食器を買ったところですね。その奥に小さいですけど、原石を削ってくれたり鉱石をインゴットにしてくれるお店があります」
「なるほどな。ユーマは職人ギルドには登録してないのか?」
「してないですね。冒険者、魔獣、商人ギルドは登録してますけど」
「あれだけ畑で育てたりミルクを取っているのに勿体ないな」

 他の街では鍛冶師への依頼が多いだろうが、ここではたぶん自分で育てた野菜や果物を納品する依頼が多いのだろう。

「もし納品依頼を受けていたら、今頃もっと色んな依頼を受けることが出来ただろうに」
「まぁ一応メインは冒険ですから」
「そうか。まぁユーマの好きにするといい。次に行くぞ」
「分かりました」

 そしてモニカさんと他のギルドも回り、今はお店もないただの道を歩いている。

「ユーマはこの先に行ったことがあるか?」
「いえ、お店がない場所はほぼ行ったことないですね」
「向こうに私のパーティーメンバーが住んでいるんだ。ユーマに紹介しても良いか?」
「えぇ、まぁ俺は良いですけど」
「では行こう」

 モニカさんはどんどん奥へと進んでいき、何の変哲もないただの家の前で立ち止まった。

「ここだ」
「普通の家ですね」
「ここ出身の冒険者だからな。おーい、カーシャ!」

 モニカさんが呼びかけるとものすごい勢いで扉が開かれた。

「モニカさん!! 今日はお休みでしたよね? どうしたんですか?」
「この街を歩いて回ってたんだがちょうど近くに来てな。ユーマを紹介しておこうと思って呼んだんだ」
「どうも、テイマーのユーマです」
「あ、あなたがあのモニカさんの地雷」
「カーシャ、どういうことだ?」
「い、いえ。モニカさんを救ったユーマ様ですよね!」

 何やら俺のことを地雷と呼んできたが、俺はこの人に会ったの初めてだよな?

「(あの、なんで俺モニカさんの地雷なんですか?)」
「(えっと、前にあなたの話題が雑談で出た時に、そのことでパーティーメンバーがモニカさんを怒らせてしまって)」
「お、随分と仲が良さそうじゃないか。やっぱりユーマとカーシャは仲良くなれると思ってたんだ」
「ま、まぁそうですね。あの、モニカさんは俺のことパーティーメンバーの方に話したりするんですか?」
「あぁ、たまにするな。もちろんユーマのことを悪く言ったりしないぞ。むしろユーマを知らないのに勝手なことを言ってきた時は、ちゃんとその場で全て否定しているから安心してくれ」
「そ、そうですか」
「あの、中で話しませんか? このままだと目立っちゃいます」

 どこに居てもそうだが、モニカさんは綺麗な上にオーラがあるので、人の視線を集めてしまう。

「ありがとう。そうさせてもらうよ」
「お邪魔します」

 こうして俺達はモニカさんのパーティーメンバーであるカーシャさんの家にお邪魔することになるのであった。


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