最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第139話

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「すみません、何回も来て」
「いやいや、ユーマくんに新しい魔獣が出来て良かったよ」

 俺は焼き芋おじさんに帰ることを伝え、アウロサリバで依頼達成報告をした後、北の街でキノさんの写真を撮ってもらい、今はフカさんの家までキノさんの写真を渡しに来ていた。

「アイスカップには魔獣全員を載せたくて」
「ライドホースもかい?」
「はい。あと、カシワドリもお願いします。カシワドリは他の商品で描かれると思いますけど、いれてもらってください」
「アイスカップには、本当にユーマくんのところにいる全ての魔獣とモンスターを描いてもらうってことだね?」
「はい。何度も変更してすみません。よろしくお願いします」
「分かった。伝えておくよ」

 俺はフカさんにそう伝えて、自分の家に戻る。

「キノさんはついて来る?」
「……キノキノッ」
「家に居る?」
「キノッ」
「じゃあお留守番お願いね」

 本人の意志もあり、キノさんには家でゆっくりしてもらうことになった。

「家の中に居ても良いし、裏に出てもいいからね。一応家の中はゴーさんとグーさんに入らない方が良いところだけ教えてもらって」
「キノッ」「ゴゴ」「ググ」
「待って、ゴーさんストップ!」

 俺はゴーさん達がキノさんを連れて家の紹介を始める前に、村の近くで汲んできた水を渡してからまた外へ出る。

「じゃあまたアウロサリバに戻るか」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」

 朝ご飯の時間まであと少ししかないので、残りの時間はどこかの街の周辺で探索でもしようと話していたのだが、アウロサリバで依頼達成報告をした時に、職員さんに少し話があると言われたのだ。

「すみません、さっき話があるって言われたんですけど」
「少々お待ち下さい……、ユーマ様ですね。商人ギルドの方から、ユーマさんの時間がある時に来て欲しいとのことです。あまり長時間にはならないようなので、お暇な時に足を運んでいただけますか?」
「どこの商人ギルドでもいいですか?」
「いえ、アウロサリバの商人ギルドへお越しくださいとのことです」
「分かりました、行ってみます。伝言ありがとうございました」

 何で俺が商人ギルドから呼ばれているのか分からないが、時間もそこまでかからないということだし行ってみる。

「すみません、商人ギルドへ来るように言われてきたんですけど」
「はい、ユーマ様ですね。部屋にご案内しますので、そちらでお待ち下さい」

 受付の人に案内され、西の街では自分でお金を払って借りた部屋と同じような部屋へ通される。

「あ、お久しぶりです」
「どうもお久しぶりです。あの、俺は何で呼ばれたんですかね?」

 入ってきたのは以前俺を冒険者ギルドまで追いかけ、清掃依頼で見つけた落とし物を1000万Gにしてくれた職員さんだ。

「以前1000万Gをユーマ様にお渡しさせていただいたのですが……」
「もしかして多過ぎました?」
「いえ、そういうわけではございません」
「返せって言われたら今なら返せますけど」
「どちらかといえば逆でして」
「え、まだ貰えるんですか?」
「それが少々難しくてですね。魔道具のアイテム袋(下級)や魔法の火打ち石、職員の羽根ペンとメモ帳の代金は計算して、ユーマ様へお金に代えお渡しさせていただきました」
「はい」
「ただ、アイテム袋に入っていた個人のものに関して、少し値段にするには判断が難しかったものもいくつかありまして」

 良く分からないが、値段を付けづらいって言われたら、形見の何かとか、家族の何か、とかだろうか?

「先にユーマ様へお支払いすると確定した分のお金はお支払させていただき、その後残った分について商人ギルドで話し合っていたところ、ユーマ様がクランハウスを購入されるかもしれないと西の街の商人ギルドから連絡が来まして、そちらに協力させていただくのはどうかという話が出たのです」
「え、協力ですか?」
「はい。現在は西の街、北の街、そして南の街が最近プレイヤー様にも購入していただけるようになり、3つの街で家を購入することが可能です。賃貸ですと他の街でもありますが」

 プレイヤーが買えるのは北と西の街だけだと思ってたら、知らない間に南の街でも買えるようになってたのか。

「それでその、協力というのはどういう?」
「……後10時間以内にプレイヤー様へ向けて発信される情報なのですが、ある場所にクランハウスを購入できるようになりますので、そちらの優先権をお渡ししたいと思います」
「それは凄いですね」
「ただ、まだ場所についてはお伝えできませんので、アナウンスをお待ち下さい」
「あの、これも今聞けるかわからないんですけど、クランハウスの値段っていくらくらいになりますか?」
「かなり高額となっておりますが、完全に商人ギルドからプレイヤー様へ販売する事になるものですので、商人ギルドとある程度の値段交渉は可能です。それでも高額なことには変わりないですが……」

 商人ギルドの職員さんは俺達の懐事情を知ってるだろうし、本当に値段は高いのだろう。

「分かりました。クランハウスは欲しいので、商人ギルドから優先権が貰えるならそれでお願いします」
「かしこまりました。では後2つほどお話したいことがありまして、」
「あ、これだけじゃなかったんですね」
「優先権が必要ないとなればあと1つでしたが、これからお伝えすることはユーマ様がクランハウスを購入するとなった場合にさせていただくお話でしたので」

 まぁ悪い話ではなさそうだし、商人ギルドの職員さんの話を聞く。

「こちらは商人ギルドの方でも何があったのか把握出来ていないのですが、ある方からユーマ様が大きな買い物をされる際に、何割かそちらで負担するという話がされていまして」
「え、誰ですか?」
「商人ギルドでもお名前をお伝えして良いのか確認が取れておらず、ここでは控えさせていただきます」
「あ、あの、本当に誰なんですか?」
「申し訳ありませんが、私の口からはお伝えできません」

 こ、怖すぎる。何で俺の名前を知っていて、更にこんな誰かも分からない状態で、お金を払ってくれようとするんだ。

「モニカさんとこか? いや、でもそれなら俺に手紙で連絡してくれそうだし、ハティのとこか? いや、あそこの両親はこんな事するならハティのために家を買ったりしそうだよな。本当に誰だ?」
「どうされますか?」

 この話はありがたい、ありがたいが、流石に誰か分からない人にお金を出してもらうのはやめよう。

「すみませんが断ってもらって良いですか?」
「よろしいのですか?」
「その方の名前を言って良いのか分からないってのも気になったんですけど、このまま払ってもらうと俺の方から本人に直接お礼を言えないのがちょっと。なので今回は断らせていただきます」
「……かしこまりました。ユーマ様の今のお話をそのままその方にお伝えしてもよろしいですか?」
「はい。どなたか分からないですけど、お気持ちは嬉しいですとお伝え下さい」
「ではそのように致します」

 少し勿体なかったが、お金は皆で貯めればいいだろう。どれくらいかかるのか分からないけど。

「では最後になります。ユーマ様は王国領でも少し遠くの場所でご活躍されているということもありまして、予定を少し早め商人ギルドで使用している馬車をご利用いただきたいと思います」
「馬車、ですか」
「プレイヤー様はクリスタルを移動できますが、私達はそうではありません。馬車や船、竜車やワイバーンなど、様々な交通手段を使い移動しております。プレイヤー様にも既にご利用いただいているものはありますが、基本的には誰かプレイヤー様が訪れたことのある場所までしか行くことが出来ませんでした。しかし、今回ユーマ様にご利用いただく馬車に関しましては、自由に移動していただいて構いません。王国領内であればという条件は付きますが、馬車を利用した後商人ギルドへ届けてもらえれば、好きに使っていただけます」

 これは本当にありがたい。なんなら数時間前に村へ行く時にも使いたかったくらいだ。

「本当に良いんですか?」
「他のプレイヤー様にも商人ギルドへの貢献度によってご利用いただけるようになりますし、全く問題ありません。一足先にユーマ様にはご利用いただけるというだけです」
「じゃあありがたく使わせていただきます」
「ユーマ様は一度清掃依頼で待機所へ来られたことがあると思いますが、馬車は商人ギルドの待機所からご利用できますし、馬車が必要なくなった際もそちらまで乗って来ていただくようよろしくお願いします」
「分かりました」

 待機所から乗って、もう馬車を使わないってなったらちゃんと商人ギルドの待機所に返せってことか。

「あの、同じ商人ギルドへ馬車は返さないといけないですよね?」
「いえ、今のところそういうわけではございませんが、プレイヤー様にご利用いただく馬車は数が少ないため、その商人ギルドに馬車がなければご利用できません。特定の街の商人ギルドへ馬車が集まってしまい、他の街の商人ギルドには馬車が無くなってしまう、といった事例が多発した場合はルールを変更する可能性もありますが、しばらくはユーマ様のみのご利用となるため、ご心配には及びません」

 商人ギルドもこの試みは初めてなので探り探りらしいが、取り敢えずは何も心配しなくて大丈夫そうだ。

「お伝えすることは以上です」
「ありがとうございました」
「ちなみにお聞きしてもよろしいのか分かりませんが、なぜユーマ様は職人ギルドへ登録されていないのですか?」
「突然ですね。まぁ、特に入ったところで何もしないから、ですかね?」
「ユーマ様の作られたアイスが人気だと話題になっておりますが」
「まぁアイスは作ってますね」
「職人ギルドへ少し顔を出してみると喜ばれるかもしれません」
「喜ばれる?」
「北の街にいる職人ギルドの知り合いが嘆いておりましたので」
「ちなみに何て言ってました?」
「『うちは農業関係の依頼が多いから受けてみて欲しい。何でいつも買いに来るだけなんだ。農業をしてるプレイヤー様の中でも1番種や道具を見に来てるのに。でも受付に来たわけでもないのにこっちから声はかけられないよなぁ』とのことです」
「ははは、」

 ここまで言われているなら、少し見に行ってみてもいいかもしれない。

「今度覗いてみます」
「登録はされずとも、少しでも良いので顔を出してあげてください」

 俺はもうベラさんとこに作物は卸しているので、今更行っても意味はないかもしれないが。

「では、ありがとうございました」
「こちらこそ助かりました。また今度馬車を使わせていただきますね」

 誰か分からない人にお金を出してもらえると聞いた時は少し怖かったが、クランハウスの優先権も、馬車の利用も、色んなことが動き出したように思えて、今後が楽しみになるのだった。


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