最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第179話

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「ん、今は昼か」

 現実での12時と24時は、コネファンでも同じ時間なんだよななんて思いながら、俺はベッドから起きて歯を磨く。

「ぁ、いえんおおひょうはいあはっひょうはえあおあイベントの詳細が発表されたのか

 歯磨きしながらスマホを少し確認すると、明日の夜7時からイベントに参加するプレイヤーは別空間に飛ばされ、そこでイベントが行われるらしい。

「やっぱり最初は討伐系だよな」

 今回は皆で協力してモンスターを倒すようなイベントらしく、ガイルやメイちゃんのような生産職もまだ参加しやすいタイプのイベントではある。
 それでも結局戦闘職が1番活躍できるイベントであることに変わりはないが……

「よし、早速コネファンやるか」

 イベントのことについてクランの皆と話したいため、俺は急いで家事や動画の確認を終わらせると、カプセルベッドへと入るのだった。



「おはよ」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」「キノ!」

 俺が起きるとすぐにウル達が俺の側に寄ってくる。

「ゴーさん、ご飯用意してもらってもいい?」
「ゴゴ」
「ありがとう」

 リビングには誰も居らず、時間的にウル達も少し前にご飯は食べたはずなので、俺1人だけで食事をする。

「ググ!」
「どうしたのグーさん?」
「ググ!」

 グーさんがそう言って俺に見せてきたのは、もうこのまま売ればすごい金額になりそうな宝石だった。
 そういえば以前グーさんへ原石を渡して加工を全部任せたような気はするけど、まさか形まで綺麗に整えてくれるとは思ってなかった。

「えっと、どうしようかな。これをそのまま売っても良いし、更にチェーンとか付けてもらってアクセサリーに加工とか? 宝石の種類によっては装備にも使えるって話だし……グーさんはどうしたい?」
「ググ」

 グーさんは加工までが自分の仕事で、ここからは任せる、というような感じだ。
 ただ、俺に任せられても知識がないため、どうしようか迷う。

「まぁそれなら専門家に聞くか。ご馳走様でした」
「ゴゴ」

 俺はグーさんの加工してくれた宝石達をどうにかするため、クリスタルから西の街のマルスさんの店へと向かう。
 マルスさんと知り合った当初はここまでお世話になるような関係になると思ってなかったが、気付けば定期的にここへ来るようになっていた。

「あ、ユーマさん!」
「こんにちは」

 今はお店にお客さんが居ないのでちょうど良かった。

「宝石を受け取りに来られたんですか?」
「え?」
「あれ、違いましたか。以前加工を任された宝石の受け取りだと思ったのですが」

 確かにそう言われたら加工をお願いしていた気がする。マグマの置物から出た宝石の加工をお願いしてたんだっけ。

「すみません、ちょっと忘れてました。今日来たのは違う宝石のことで相談したくて」
「ではこちらは最後にしましょう。少し宝石のことで話したいこともあるので……」

 ということで取り敢えず今俺の持っている宝石について、マルスさんにどうすれば良いかのアドバイスを求める。

「……うーん、どれも加工が素晴らしいので、宝石のまま売ってしまうのは少し勿体ないと思います」
「じゃあアクセサリーにした方がもう少し高く売れますかね?」
「売るのであればその方がよろしいかと思います。ですが、以前お伝えした通り、装備で使うことの出来る宝石は分けた方がよろしいかと」

 ということで、基本的に芸術品としての価値が高いものはマルスさんにアクセサリーへと加工してもらい、それ以外は装備装飾品としてうちの鍛冶師達に使ってもらうことにする。

「そちらの宝石もとても綺麗なので、勿体ない気もしますが」
「装備装飾品に使うような宝石は普通磨いたりしないんですか?」
「ある程度形は整えますが、これ程丁寧な加工をすることは少ないです。装備装飾品で使う場合形によって性能に違いが出ることは無いそうなので」

 紅い瞳や漆黒石などの宝石は装備装飾品として使われることが多く、どうせ装備装飾品として使うならここまで綺麗に磨いた労力が勿体ないとのこと。
 いつもは原石を宝石にするところまで職人ギルドか自分達でやって、その後の宝石をカットする作業からはマルスさんに任せるのだが、今回グーさんは宝石のカットまでやってくれたため悩ましい状況になった。

「今度からグーさんには宝石のカットをやめてもらうか? いやでも結構本人は楽しんでる可能性もあるしなぁ」

 取り敢えず装備装飾品に使うことはないであろう、エメラルドやサファイアはグーさんに加工を任せて、それ以外は今後どうするか考えよう。

「それにしても多いですね」
「運が良いだけですよ。ちなみに次のオークションっていつぐらいにありますか?」
「次は確か10日後くらいだったと思います」

 10日後ということは、現実の時間で3日と少しだから、第3陣が来る少し前くらいだ。
 前回はプレイヤーだけのオークションだったし、俺は欲しいものを落札できたけど、次のオークションはこの世界の人達とも競り合わなければならないため、お金は出来るだけ今のうちに稼いでおきたい。

「マルスさんに今預けた宝石を、オークションで売ることは出来ますか?」
「可能ではありますが、購入される方が居るかどうかは分からないですね。オークションだけを考えるのであれば、エメラルドのような宝石よりも、装備装飾品として使われる紅い瞳等はアクセサリーとして珍しいですし、購入したいと思われる方は居るかもしれません」

 ダイヤモンドは別格らしいが、エメラルドなんかの良くアクセサリーに加工されるものは、オークションで出すには珍しさがないとのこと。
 それなら装備装飾品で使われることが多く、あまり出回らない紅い瞳や漆黒石、聖光石なんかの方がウケが良いかもという話だった。

「どういたしますか?」
「そうですね……」

 勿論お金は欲しいが、装備装飾品に使う宝石が足りていないことも事実。
 宝石は自分達で掘るか購入するしか無いが、購入する場合はとにかくお金がかかる。

 装備装飾品は強力なものであるが、後に新しく強い装備装飾品が出るかもしれないのに、高い宝石を買う程の価値があるのかと言われれば微妙なところだ。
 攻撃力を+40して更に能力値を+8くらいする普通の武器に100万Gかけるのと、ステータス値を+7とか8する装備装飾品に100万以上かけるのは価値が全く釣り合っていない。

 ここは比較的多くの宝石を手に入れがちな俺が、宝石をうちの鍛冶師達に回してあげるべきだろう。お金は他のとこでどうにかすれば良い。

「装備装飾品に使える宝石は持って帰ります」
「そうですか。そうですね、私もそれが良いと思います」
「相談に乗ってくれてありがとうございました」
「いえいえ、では少々お待ちください」

 そう言うとマルスさんはお店の奥へ行ったため、おそらく前に預けた宝石を持ってきてくれるのだろう。

「ん、ユーマ様?」
「あ、ジェスさん」

 俺がマルスさんを待っていると、亡くなったフォルスさんの兄であるジェスさんがお店に入ってきた。

「お久しぶりです」
「久しぶりですね。マルスさんはどこに居ますか?」
「今お店の奥に行ってます」
「そうですか」

 この様子だとジェスさんはマルスさんに用事があるらしい。

「ユーマ様はクランハウスを購入されたんですよね?」
「あ、そうなんですよ。運良くクランハウスを購入出来たので、助かりました」
「クランハウスを購入するにあたって、何割かの負担を申し出た人が居たと聞きましたが」
「あぁ、そうですね。結局誰だか分からなくてその人のはお断りさせてもらった後に、マルスさんから全額出してくれるっていう話が来て、ちょっとびっくりしました」

 今思うとあの時は本当に助かった。もしマルスさんからのお金がなかったら、今もまだ俺達のクランハウスは無かったかもしれないし、奥にある小さなクランハウスを買ってた可能性が非常に高い。
 まぁそれはそれで楽しいだろうけど、折角クランハウスの優先権まで貰って、あの大きいクランハウスのどれかを買えないのは悔しいしな。

「お待たせしました……ジェスさん!?」
「こんにちは。丁度さっき来たのですが、もしかして?」
「ジェスさんの想像通りです。この後私の方からユーマさんに宝石のお話をするところでした」

 何やらマルスさんとジェスさんの2人で話が展開されていて、俺は置いてけぼりだ。
 ただ、話の内容的には俺にも関係がありそうなので、ここを離れるわけにもいかない。

「ユーマさん、こちらが以前預かった宝石です。私におまかせしていただけるとのことでしたので、無理にアクセサリーなどにはせず、観賞用として作らせていただきました」
「すごっ」

 俺は心の声が漏れてしまうくらい、この宝石に目を奪われる。
 マルスさんと一緒に貴族へ渡しに行った宝石と比べれば全然小さいけど、それでもこの迫力は宝石に詳しくない俺でも凄いものだと分かる。

「ありがとうございます。どこに飾れば良いのか分からないですけど、大事にします」
「大変嬉しいのですが、少し相談がありまして」
「? はい、何ですか?」

 マルスさんはそう言うと、ジェスさんに目配せする。

「ユーマ様」
「はい」
「私からお願いがあるのですが、少しだけ話を聞いてくれないでしょうか?」
「それは全然良いですけど、何でしょう」



「……その宝石を私にいただけませんか?」


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