最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第181話

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「勉強になったです」
「安く仕入れる交渉術などは、他の詳しい方から教えてもらってください」

 小岩さんのフィードバックを皆でしたが、結局小岩さんが何を目標にしていたかがあまり伝わらなかったことが問題だったらしい。
 公爵家との繋がりを持ちたかったなら、もっと序盤からアピールするべきだったし、宝石を高額で売りたかったなら、もっと極端に釣り上げてから落としていく方法もありだったのだとか。

 俺はそれを聞きながら、自分では一生やることないだろうなと聞き流していた。
 基本的に俺は相手に合わせることが多いし、多少こっちが損するようなことになってもあまり気にしない。
 そんな俺が気にするような事態となれば、そもそも相手が全くこちらに寄り添う気持ちがないということだから、その時点で相手を敵だと思うようになる。
 だから俺は今聞いたテクニックなどを試す機会はおそらく今後現れないのだ。

「ユーマさん、ありがとうございましたです」
「いや、こちらこそ交渉してくれてありがとう」
「でも、本当に王国で自分の商品を使ってもらえるですか?」
「ジェスさんがそう言ってるし、そうなんだと思うよ。公爵家の方に気に入ってもらえそうな商品を持っていって、公爵家御用達の文字を全面に出しながら販売すると良いよ」

 ただジェスさんが言うには、小岩さんのやろうとしていることに公爵家の力を使っても、2000万Gの価値はないかもしれないとのことだった。
 その理由は単純なことで、王国ではやはり王様が人気で、次いで姫様やワイバーン部隊などの騎士達が人気なんだとか。

 公爵家が使ってます! よりも、姫様が使ってます! ワイバーン部隊が使ってます! の方がウケは良いだろうし、なんならそういう商品を売っているお店が結構あるらしい。

「ではお先に失礼するです」
「また後でクランの皆とイベントのこととかは話すかも」
「分かったです」

 こうして小岩さんはマルス宝飾店を出ていき、またこの場にはマルスさんとジェスさんと俺の3人が椅子へ座り、宝石について話すことになる。

「本当に1億3000万Gで良かったのですか?」
「全然良いですよ。1億でも今の俺には高過ぎるくらいですし」
「そういう意味では、あの小岩さんという方はユーマさんよりも宝石の金額に驚いていませんでしたね」
「ユーマ様ならこのような商品を取り扱っても不思議じゃない、というような雰囲気を私は感じました」

 ジェスさん鋭い。あの人俺のファンらしいから、たぶん本当にそういう気持ちだったと思います。
 というか1億3000万の交渉をサラッとしてすぐ帰るのはちょっとカッコいいな。
 俺が呼んだんだけど、なんか自分の仕事はやりましたみたいな感じで、すぐに出ていったのは頼もしさすら感じた。

 たぶん俺達の邪魔をしないように空気を読んで帰ってくれただけだろうけど。

「では後ほど商人ギルドの方からユーマ様にお金は振り込ませていただきますね」
「了解です。じゃ、俺はこれで失礼しますね」
「またお越しください」
「ありがとうございました」

「……マルスさん、この前帝国の貴族からお金が……」
「……はい。金額としてはとても安く、私としましても許せ……」

 こうして俺達はマルスさんのお店を出たが、あの2人はまだ話があるのか奥の部屋に残っていた。

「取り敢えずこれはクラン資金にしようかな? 1億3000万もオークションで使ったら勿体ないし」

 本当に欲しい物があれば使うかもしれないが、クランのお金としてこれは置いておこう。

「じゃあ早速今ログインしてるクランの皆に、イベントに参加するかどうか聞きたいんだけど……先に装備がどうなってるか聞きに行くか」

 もうそろそろ夜になるため、皆にクランハウスへ集まってもらうのは夜で良いだろう。

「夜になったらクランハウス集合で、っと」

 俺はそうクランチャットで連絡し、お店が閉まる前に急いでおやっさんのところへ向かう。



「すみませーん」
「お、来たか」

 おやっさんは俺のことを待っていたのか、俺を見るなり奥の方へと入っていった。
 この感じだともう装備は出来上がってるって思って良さそうだ。

「これだ。仕上がりには自信があるぞ」

 そう言って見せてくれたのは、どこか俺達が倒したあのボス4体を彷彿とさせる装備だった。

「見て良いですか?」
「見るだけじゃなくて装備して良いぞ」
「確かにそうですね」

 俺は今つけている装備を外し、おやっさんの装備を着る。

名前:アネモイ(下位)の片手剣
効果:攻撃力+45、筋力+5、敏捷+4、空き
説明
製作者ドルム:アネモイ(下位)の素材から作られた片手剣。筋力値と敏捷値を上昇し、装備装飾品を1つ付けられる。

アネモイ下位シリーズ
名前:アネモイ(下位)の鎧 
効果:防御力+45、頑丈+5、敏捷+4、空き 
名前:アネモイ(下位)の小手 
効果:防御力+35、頑丈+4、敏捷+3、空き 
名前:アネモイ(下位)のズボン 
効果:防御力+42、敏捷+5、頑丈+3、空き 
名前:アネモイ(下位)の靴 
効果:防御力+38、敏捷+4、頑丈+3、空き
説明
製作者ドルム:アネモイ(下位)の素材から作られた防具。頑丈値と敏捷値を上昇し、装備装飾品を1つ付けられる。

「ありがとうございます」
「鍛冶職人カヌスの装備と比べられたら敵わねぇが、それでも俺の使い慣れた素材を使った分良い出来になったな」

 おやっさんは俺がさっきまで着てた装備を見てそう言う。

 今まで使っていた四王シリーズの装備は、カジノで鍛冶職人カヌスのオーダーメイドの権利を貰って作ってもらったものだが、おやっさんに言わせれば滅茶苦茶技術の詰まった凄い装備なのだとか。

「カヌスさんって凄い人なんですね」
「弟子もいっぱい居るって話だが、なかなか師匠を超えるような鍛冶師は今のところ居ないらしいな」
「……そんなに凄いんだ」
「顔に書いてあるから答えるが、俺なんかより全然凄いぞ。比べるまでもない」
「そんな分かりやすかったですか?」

 失礼だから聞かないようにしてたけど、カヌスさんとおやっさんにはどれくらいの差があるのか知りたいって思ってたのが顔でバレたようだ。

「悔しいが認めるしかない。カヌス程の鍛冶職人ならもっと強い装備も作ってるだろうに、いつもと違う素材でそれだけの装備を作れるのは本人の技術が高いからだ」

 やっぱりモルガ然り、カヌスさん然り、あのオークションで景品として出てた人は凄いんだな。

「ま、俺は俺の技術通りの値段でやってるから、そこは安心してくれ」

 そう言われて思い返すと、モルガの魔法指南1日券みたいなのと、鍛冶職人カヌスのオーダーメイド(素材持ち込み)券みたいなのは、どっちも1000万チップくらいの景品だった。
 そう考えると、4~500万Gこの装備にかかるのも納得だ。

「今回はこっちでバタバタしたのもあったしな、400万でどうだ?」
「それでお願いします」

 こうして俺はおやっさんに400万G支払い、新しい装備を手に入れることが出来た。
 早速この装備の使い心地を試してみたいところだけど、外はもう暗くなるしこの後予定もあるため、試すのはもう少し先になるだろう。

「バズマの馬鹿が連れてきた時はどうしようかと思ったが、俺の方が驚かされるとは思わなかった。プレイヤー様ってのはそんなに戦闘狂ばっかなのか?」
「いや、俺は装備が早く欲しくて急いでたので」
「って言ってもあんなに早く集めてくるなら、プレイヤー様相手に装備を作る時は考えねぇと」

 おそらくこれまでの経験から、おやっさんにも大体これくらいで素材を持ってくるだろうというようなものがあるのだろうが、確かにプレイヤーはこの世界の人達と比べると集めるのが早いかもしれない。

「まぁ今回は俺が早過ぎたと思います。他のプレイヤー相手ならもう少し遅いと思ってもらって良いかと」
「そうか、まぁそれも自分の目で確かめてからだな。そのアドバイスは参考にするが」
「そうですね」

 という感じでこの後も店を閉める時間まで俺はおやっさんと店の中で話していた。
 話題は共通の知人というか、友人であるバズマさんの話になり、おやっさんが迷惑をかけられた話から、初めてバズマさん達が自分のお金でオーダーメイド装備を作りに来た時のことまで、色々教えてもらった。

 バズマさんのパーティーとはもう長い付き合いらしいが、とにかくおやっさんはバズマさんのことが1番心配で、会話中に何度「あの馬鹿は」という単語が出てきたか分からない。
 それでもバズマさんが悪い人ではなく、むしろ純粋で可愛げがある大事な人だと思っているからこその言葉だというのは、会話の節々から伝わってくる。

「ユーマもアイツが馬鹿してたら助けてやってくれ。頭引っ叩いてでもいいからな」
「流石にそれはしないですけど、俺もバズマさんにはお世話になりましたから、困ってたら助けますよ」

 そんな話をしていると外は暗くなり、おやっさんもそろそろ店を閉めるとのことで、俺達は店の外に出る。

「じゃあな」
「ありがとうございました」

 こうしておやっさんと別れた俺達は、もう一度チャットで今からクランハウスに集まることをクランの皆に連絡し、俺達も急いでクリスタルへと向かうのだった。


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