神様に愛されなかった僕、貴族に転生した2秒後に平民落ちしたけど、メイドが愛してくれるので今日も幸せです

水の入ったペットボトル

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第24話 初めての長期休業?

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「パートナーに感謝しな。後遺症が残ってもおかしくなかったよ」
「……はい」
「ルイ様が私達を庇って負った傷です!」
「はいはい分かった分かった。別に感謝しなって言っただけで、あたしゃこの子を責めてるわけじゃないよ」

 ここは前に来た少し街から離れている教会、の離れらしい。

「1週間は寝たまま、その後は様子を見てだね。この娘が治癒魔法を使えるし、ここを出たいならそのタイミングで良いよ」
「分かりました、ありがとうございます」
「あたしは運ばれてきた患者を治療しただけさ。感謝は神様にでもしとくれ」

 そう言って高齢のシスターは部屋を出る。

「あの、アンナさん、コールさん達は?」
「コール様とザール様もこちらに居ますが、どちらもルイ様のような怪我はしておりません。明日にでもここを出て行かれるでしょう」
「そうですか、良かったです」

 今この部屋には僕とアンナさんだけ。
 隣にベッドがあと2つ並んでいるので、新しい患者が来ればそこに入るのだろう。

「ルイ様、私ルイ様を置いて……」
「いや、あの時はアンナさんの行動が正解でしたよ。それに正直僕は結構諦めかけてましたけど、アンナさんは僕のことを信じてたからこそ、コールさん達を連れて街まで戻ったんでしょうし」

 あの場でアンナさんだけは最善の動きをしていたと思う。
 僕もザールさんもコールさんも、皆何かしらのミスを犯した中で、アンナさんだけは冷静に自分のできることをやっていた。

「私は全くお役に立てませんでした」
「いや、アンナさんの治癒魔法がなければそもそもザールさんは助かってなかったですし、僕も言われたように後遺症が残ってましたよ」
「もっと私が強ければ……」
「それこそ無理ですよ。冒険者は自分達の実力を考えて森の奥へ進むんですから。今回はあんな強いモンスターが出るはずのない浅い場所で出てきたんです。アンナさんは何も悔やむことはありません。むしろ救ったことを誇ってください」

 と、僕はアンナさんに言うが、もし逆の立場だったら僕もそう考えてしまうだろう。
 もっと自分に力があれば、あの時加勢していれば、色んなタラレバが頭に浮かんでおかしくなる気がする。

「アンナさん、日課はしましたか?」
「……いえ、ルイ様は先程まで眠っていらっしゃったので、今日はまだです」
「じゃあ今しましょう」
「いえ、ルイ様のお体に悪い影響が」
「じゃあ僕は寝転がったままでいるので、アンナさんは体を僕に近づけてください。そしたら僕が抱き締めますから」
「……」
「駄目ですか?」
「……いえ、では失礼します」

 アンナさんは体を寄せてくれたので、僕は腕を背中へ回し、しっかりと抱き寄せる。

「ルイ様、怪我をされている場所に当たってしまいます」
「たぶん大丈夫です。あと少しで終わりますから」
「……」
「心は覗いてくれましたか?」
「……はい」
「はい、嘘ですね。覗いてください」
「……覗かないと駄目ですか?」
「アンナさんが日課をやめたいと言うなら、僕は止めません」
「……」
「あぁ、早くしないと他の人が来ちゃうかもなぁ」
「それは別に構いません」
「あ、確かにアンナさんは周りが気にならない人でしたね」

 アンナさんが心を覗いてくれるまで、僕はずっと抱きしめ続ける。

「……あの、もうそろそろ」
「じゃあ早く覗いてくださいよ」
「……分かりました」

 そう言うとアンナさんは本当に僕の心を覗いてくれてるのだろう。
 僕は少し体を離してアンナさんの表情を見ると、僕の心に釣られて嬉しい表情をしている。

「今回は覗いてくれたみたいですね。どうですか?」
「とてもいい気分になれました。私は何もしていないのに」
「それがアンナさんのすごい能力の1つだって、僕に最初説明してくれたじゃないですか」
「そうですけど……」

 アンナさんが何も出来なかったと落ち込んでいるところ申し訳ないが、僕はあの猛獣を倒せたことを本当に嬉しく思っていた。

 仲間を助け、勇気を振り絞り、強敵を倒す。
 この経験が僕に自信を付けてくれた。
 寝たきりの身体じゃなかったとしたら、今すぐに飛び跳ねて喜びたいくらいだ。

「アンナさんも分かったと思いますけど、僕は冒険者として成長できたことが本当に今嬉しいんです」
「……」
「アンナさんに治療してもらったおかげで今後も活動できますし、最高の結果だと思っています」
「……」
「だから、その、……アンナさんに褒めてほしいなって」
「…………良く頑張りました」
「はい」
「ルイ様は勇敢でした」
「はい」
「カッコよかったです」
「はい!」
「私、ルイ様のこともっと好きになりました」
「は、はい!」
「なので、これはご褒美です!」
「えっ」

 ……チュッ

 僕のほっぺたに少し湿った唇の感触が伝わる。

「で、ではまた夜来ますので、私は失礼します」
「……はぃ」

 アンナさんはそう言うと急いで部屋を出て行った。

「ち、ち、ちゅ、ちゅー、チューされた!?」

 脳が現実を受け止めきれない。
 急激に上がりだす体温。
 心臓は張り裂けそうなくらい活発に活動している。
 無意識に唇で触れられたほっぺたを触る。

「ア、アンナさんが、僕に、ち、チュウ……」

 脳が沸騰し目が回りだした僕は、そのまま意識を失った。

 
「(ご、ご褒美なんて私、何様のつもりで!!)」

 そして部屋の外では顔を真っ赤にして歩く濃紫の瞳をした女性が、ぶつぶつと口の中で独り言を言いながら歩いていたのだった。



「何か運動でもしたかい?」
「いえ、僕は今日しっかりと寝てましたよ」
「そうかい。まぁ少し多めに血が出てるだけだから心配はしなくていいさ」
「そ、そうですか」

 それは本当に心配しなくて良いのだろうか。

「あとあんたの連れがここで寝るってうるさくてね。本当は夜の面会は断ってるんだけど、あんたは色んな冒険者の安全を守ってくれたからね。特別だよ」
「ありがとうございます」
「寝るなら同じベッドで寝な。横のは勝手に使うんじゃないよ」
「はい」

 そう言うとシスターはアンナさんを呼びに行った。

「し、失礼します!」
「ど、どうぞ」
「……」
「……」
「「……あの!」」

「アンナさんからどうぞ」
「い、いえ、ルイ様から」

 気まずい。
 お昼くらいにあったあの出来事が、僕の頭から離れない。

「じゃ、じゃあ僕から。シスターが寝るなら一緒のベッドで寝てと言ってました。あっちのベッドは使わないようにと」
「分かりました。もとより私はそのつもりですので大丈夫です」
「そ、そうですよね」

「……」
「……」

「ア、アンナさんは何を言いかけたんですか?」
「私は今日戦闘指南を受けてきました」
「え、しんどくなかったですか?」
「正直に言うと疲れました。ですが大丈夫です」
「あの、もうアンナさんはすぐに眠れる状態ですか?」
「はい」
「……じゃあその、どうぞ」
「……ありがとうございます」

 いつもはアンナさんが僕の右側に居るけど、僕は右脇腹を怪我しているため、今日は左側にアンナさんが寝転がる。

「ルイ様は眠たくないですか?」
「いや、不思議なことに眠たいです。ずっと眠ってるはずなんですけどね」
「では、すぐに寝ましょう」
「そうですね」

 いつもと逆にいるアンナさんに少し違和感を感じながらも、アンナさんが居ない違和感を感じながら寝ていた今までとは違って、アンナさんの存在によって体が眠る時間だと僕に告げてくる。

「……少しだけ寄りかかっても良いですか?」
「はい。僕は大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
「……」
「……」
「……アンナさん寝ました?」
「……まだ起きてます」
「……手を握っても良いですか?」
「許可など必要ありません。ルイ様のお好きなように」
「ありがとうございます」
「……」
「……あの、アンナさん」
「……はい」
「……僕もアンナさんのこと、好きです」
「……!? あ、ありがとうございます」
「僕、お昼の時からアンナさんにそれだけ伝えたくて、じゃあおやすみなさい!」
「……はい。おやすみなさいませ」

 こうして僕はすぐ眠気に襲われ、小さなベッドに2人で寝ているにも関わらず、不自由を感じることなくぐっすりと眠ることが出来るのだった。



「幸せそうに2人して眠ってるねぇ。朝だよ、起きな」
「……」
「……」
「眠るのは結構だけどご飯はしっかり食べとくれ!」
「……ぁ、シスター。おはようございます」
「……わ、私またルイ様より遅く起きるなんて。おはようございます!」
「起きたなら後でこれ食べて怪我を治しな」
「分かりました」
「ルイ様、私が食べさせますから待っててください」

 僕は朝の準備をしに行ったアンナさんを待つ間に、シスターに怪我の状態を確かめてもらう。

「治りが速いね。怖いくらいだよ」
「え、そんなにですか?」
「あんたの体も凄いんだろうねぇ」
「僕の体も?」
「たぶんあの娘が治癒魔法かけてるんだよ」
「え、でも昨日は一緒に寝たはずで」
「まぁその後起きてかけたんだろうね。こういうのは怪我した本人より周りの人間の方が敏感になるのさ」
「……」
「ま、あの様子だとしっかり眠れてるようだし、あたしは放っといて良いと思うよ」
「分かりました。ありがとうございます」
「あたしゃ何もしてないよ。それじゃ、また来るよ」

 シスターはそう言って部屋を出ていく。

「ルイ様! まだ食べてないですよね?」
「はい。待ってましたよ」
「では何から食べますか?」
「そうですね、まずは……」

 このあとの日課で、アンナさんが治癒魔法を夜中にかけてくれたんじゃないかな? と心の中で思うと分かりやすく動揺したため、僕は他にも頭の中で考え事をし、アンナさんの反応を楽しんだ。


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