飼われる側って案外良いらしい。

なつ

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2.救い?

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「言っておくけど君の自宅には行かないよ。そのまま帰って出てこなくなるだろうからね」

今は別の目的があるためやはりそうか、とあまり大きなショックは受けなかった。といっても、面と向かって本人にそう言われては良い気はしない。

「はぁ、でしょうね…違います、僕が行きたいのは───」

そのまま素直に告げればタルアは何故?と首を傾げる。だがそれだけで深くは聞いてこなかったので、凄く、物凄く安心した。

今からすることもきっと、普通じゃないから。

「分かった。クローゼットに紫ヶ崎君が着てた服、掛かってるから行こう」

クローゼット、とは僕が横になっていた部屋にあったものだろう。こくりと頷き部屋に戻ると、なんと後ろからタルアまで着いてきたのだ。

「何してるんですか、あんた」

さて着替えるので扉を閉めよう、と振り返れば大きな身体が見えたので思わず"あんた"と言ってしまうくらいビックリした。

「え?着替え。手伝わないとでしょう?」

「は?僕のことまだ幼体だと思ってるんですか、服くらい自分で着れます」

僕をなんだと思ってるんだ。

「というか…まさかこの無駄にお高そうなパジャマを着せたのは…」

「俺だね?」
 
お前かよ。朦朧とする中、己で着替えたかもと希望を抱いていたのに。

「……はぁぁぁぁ……………あのですね、ほんと、結構なんで。とりあえず部屋から出てってもらいます?」

呆れたように言えば、しょんぼりしつつ「今度散歩用のお洋服一緒に見ようね」とか宣いながら去ってった。

要らん、買わん、行かん。

…気を取り直して、着替えだ。今月は倒れた所為で、銀行に寄るのがいつもより数日遅れている。急がなければ。

「あー…これ、だよな…?」

謎の洒落た模様が掘られた白いクローゼットを恐る恐る開けて唯一見覚えのあるスーツを手に取る。
普段はシワシワで小汚かったそれは、埃や皺ひとつ無く輝いて見えるほどに大変身を遂げていた。

「しかもなんか良い匂いするし…」

普段己が着ているものの筈なのにまるで全くの別物に見え、指先でそっと摘んで丁寧に扱ってしまった。
その所為かたった1着のスーツを着るのに時間が掛かり、タルアには心配された。

「また倒れたのかと思っていよいよ須磨君を呼ぶ所だったよ」

諸々準備を整え家を出て、タルアのエスコートをスルーし、これまたお高そうな車に乗り込んで暫くした頃そんなことを言われた。

「勘弁してください。一々大袈裟な…」

ピロン!と、タルアのスマホが鳴る。

「まあ須磨君にメッセージはしちゃったんだけどね…」

ピロン、ピロン!続けて鳴る。

「嘘でしょ貴方…」
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