滅びゆく王国と平等の国を築く王女

王族好きな鳥ちゃん

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第5話:王女の私室での一夜

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蝋燭の柔らかな光が豪華な部屋を温かな色調で包み、エヴリン王女は大きくて豪華な天蓋付きベッドの端に硬く座り、白い指で金色の刺繍が施された寝間着の裾を握りしめていた。

彼女の向かい側には、アデム、マリク、ジャヒが入り口の近くにぎこちなく立ち、互いや豪華な室内を交互に見つめていた。

彼らの間に広がる沈黙は、言葉にされない緊張で重く淀んでいた。

三人の男たちはこれまでに多くのものを見てきた——残酷さ、苦難、人間の苦しみの深淵——しかし、王女の私室で一夜を過ごすことになるとは夢にも思っていなかった。

エヴリンは軽く咳払いをし、頬に淡い赤みを浮かべた。
「えっと…これは…珍しい状況ね」
彼女は認め、視線をそらした。

少年のジャヒは笑みを浮かべた。
「ここで休むべきだって言ったのは王女様でしょー?」

「わ、わかってるわよ!」
彼女はふんっと息を吐き、
腕を組んだ。
「でも、こんな…状況になるとは考えてもみなかったのだ」

マリクはくすくす笑った。
「つまり、高貴な王女が三人の男と寝室を共にするってことか?」

エヴリンの頬の赤みがさらに深まった。
「そ、そんなんじゃないわ!ただ…夜中に宮殿を歩き回るのは危険だって思ったの。兄の衛兵たちに見つかったら…」
彼女は言葉を途切れさせ、腕をさすりながら、その考え自体に震えるかのようにした。

三人の中で最も落ち着いていたアデムがついに口を開いた。
「じゃあ、ちゃんと整理しよう。オレたちは床で寝る」

エヴリンはまばたきした。
「え?」

マリクは肩をすくめた。
「道理だ。だって、これは貴女のベッドだろ。俺たちが立場を超えるつもりはない」

「でも、床は——」

「僕達が知ってるものよりはマシだよ」
ジャヒが小さな笑みを浮かべて遮った。

「王女、温かい部屋の上質な絨毯の上で寝るのは、牢屋の冷たい石や奴隷用の庭の土よりずっといいさ」

エヴリンヌは唇を噛み、目に罪悪感が浮かんだ。
「でも…不公平に感じるんだわ」

アデムは優しく微笑んだ。
「オレたちはもっとひどい状況を耐えてきた。これくらいは、オレたちにとっては贅沢だな」

王女はためらってからうなずいたが、まだこの状況に不安を感じていた。
「わかった。毛布を余分に持ってくる」

ジャヒは手を振って拒んだ。
「いらないよ?ただ休ませてくれればそれでいい」

恥ずかしさの中にも、エヴリンヌは小さく感謝の笑みを浮かべた。
「ありがとう…理解してくれて」

彼女は席から立ち上がり、ロイヤルブルーのシルクで覆われた大きなベッドに向かった。

布団の中に入りながら、彼女は振り返り、三人の男たちが暖炉の近くの柔らかい絨毯の上に落ち着き、マントを簡易的な寝具として使っているのを見た。

部屋が静寂に包まれたとき、エヴリンの声が突然沈黙を破った。
「…私がばかげてると思わない?」

アデムは彼女の方に顔を向けた。
「ばかげてる?」

「この王国を変えようとしていること。兄に逆らっていること」
彼女はシーツに指を絡ませた。

「みんなを死に追いやるかもしれない何かを信じていること」

一瞬の沈黙の後、マリクが口を開いた。
「もし貴女がばかげてるなら、俺たちはここで王女と共に寝室を共にしていないはず。ずっと奴隷の身で過ごしていくしかない、今でも」

ジャヒはくすくす笑った。
「ああー。僕は愚か者について戦いに行ったりしない。夢を現実にする意志を持った夢追い人にしかついていかないよー?」

彼らの言葉に、エヴリンの心臓が一瞬止まりそうになった。

ゆっくりと、彼女はリラックスし、ベッドの温かさに身を沈めた。

「おやすみなさい」
彼女は囁いた。

三人の男たちは互いを見つめ、声を揃えて返した。

「おやすみ、王女様」

蝋燭の火が消えると、彼らの間に静かな理解が生まれた。

今夜、彼らは直ぐに寝ることにした。なぜなら、明日の朝早くから、本当の戦いが始まるからだ。
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