滅びゆく王国と平等の国を築く王女

第１０話：エルフの森、『エルダーツリー』への道

ルシャール侯爵の邸宅の広間は薄暗く、ランタンの光が磨かれた石の床に長い影を落としていた。

夜の空気は張り詰めており、エヴリン王女、アデム、マリク、ジャヒが出発の準備を整えていた。

ルシャールは彼らの前に立ち、腕を組み、真剣な表情を浮かべていた。
「わたしも同行したいところだが、ここに残らなければなりません」

エヴリンは眉をひそめた。
「なぜ？この計画はあなたの考えだったはずだよね？」

侯爵はうなずいた。
「そうですね。ですが、わたしの領地は監視されていますよ？」

彼は広大な農地を見渡す大きな窓を指さした。
暗闇の中でも、遠くで松明の光が畑を移動しているのが見えた。

「王宮からの監察官が警告なしに巡回してくることはあります」
ルシャールは重々しく説明した。
「彼らは不忠を探しています——特に、彼らが『財産』と呼ぶ者たちに共感しすぎる貴族をね」

アデムの拳が固く握りしめられた。
「つまり、あんたは演じなければならないんだな。立派な奴隷所有者の貴族のように振る舞い、疑われないように」

ルシャールはため息をついた。
「そうです。もしわたしが突然奴隷を解放したり、彼らをあまりにも良く扱ったりすれば、王太子は審問官を送り込み、わたしのすべての計画が暴露されるでしょう。そうなれば、軍隊を集める望みも…すべて失われます...」

マリクは舌打ちした。
「ひどい話だ...」

「これがわたしたちの王国の現実だ」
ルシャールは厳かに言った。
「だが、わたしの無行動を臆病と誤解しないで欲しい。もしわたしが捕まれば、わたしが蓄えた金、集めた兵士…すべてが崩れ去る。だからこそ、代わりに君たちが行かなければならないのです」

彼はエヴリンに向き直った。
「あなた様は王女です。妖精族は王家の血を尊重します。もし彼らの助けを得る望みがあるなら、それは王女様にかかっていると言っても過言ではありません」

それから、三人の黒人の男たちを見た。
「そして君たち…君たちはこの戦いで最も多くを得る者たちのはずです。もし妖精族がわたしたちの大義を正しいと認めれば、人間の軍隊が持つ力をはるかに超えた力を与えてくれるかもしれません」

ジャヒは腕を組んだ。
「神話にかなりの期待を寄せてるねー？」

ルシャールは笑みを浮かべた。
「わたしは可能性に期待している。そして今、それがわたしたちに残された唯一の打開策です」

グループの間に沈黙が広がった。

そして、エヴリンは背筋を伸ばし、決意を固めた。

「わかった」彼女は宣言した。
「夜明けに出発する」

ルシャールはうなずいた。
「よろしい。わたしの部下が食料、馬、そして森の地図を提供します。だが、一つ警告しておく…エルダーツリーに入ったら、二度と同じ者では戻れないかもしれないことを」

マリクはくすくす笑った。
「今まで経験してきたことを考えれば、もう同じ者じゃないだろうよ」

ルシャールはかすかに微笑んだ。
「では、幸運を祈りましょう」

王女と三人の仲間がこれからの旅の準備をするために去っていくのを、ルシャールは見送った。
彼の表情は読み取れなかった。

彼はできる限りのことをしたはず。あとは、彼ら次第だ。