滅びゆく王国と平等の国を築く王女

第１８話：王女の静かな誓い。そして悪夢にうなされたマリク

魔法のかかった結晶の柔らかな光が薄れ、四人の旅人たちはそれぞれのベッドに身を横たえた。

エルフの聖域は、木々の梢を抜ける遠くの風の音以外は静かだった。

黒人男性たち３人はすでに穏やかな呼吸をしており、長い旅の後、ゆっくりと眠りについていた。

しかし、エヴリン王女は目を覚ましており、優雅な木の天井を見つめながら深く考え込んでいた。

彼女は少し体を横に向け、偶然にも彼女の仲間となった三人の男たちに視線を向けた。

ほんの数日前まで、彼女は貴族たちに囲まれた高貴な女性だった——彼女と同じように見え、同じように考え、同じように贅沢に生きる人々だ。

しかし、これらの男たち——かつて鎖につながれていた黒い肌の元奴隷たち——は、宮廷のどんな貴族よりも彼女に近い存在に感じられ始めていた。

ジャヒは、少年特有な活発さもある元気な子でありながら、鋭い知性と静かなユーモアのセンスを持っていた。
マリクは、思慮深い態度で、常に周りの世界を分析し、吸収していた。
アデムは、あまり喋らないタイプでありながらも最も率直で、情熱的で鋭い舌も持っていて、常に的確なアドバイスも提供できる大人しい系の青年。

彼女は彼らを救うために戦ったが、彼らもまた彼女を救ってくれた——彼女の特権的な存在の孤独から。

エヴリンはそっと胸に手を当て、自分の鼓動を感じた。

これが本当の仲間意識なのか？

彼女は常に、貴族は庶民の上に立たなければならない、王族や貴族は彼らよりも「優れている」と教えられてきた。

しかし、今ここにいる彼女は、自分では想像もできないほどの苦しみを経験した男たちに囲まれている。

殴られ、売られ、財産のように扱われた男たち。それでも、彼らは笑い、冗談を言い、彼女と共に戦い、彼女を守ってくれた——義務ではなく、自らの意思で。

生まれによって貴族が決まるなんて、私がそんな風に思っていたなんて愚かだった…

彼女の王国は分断の上に築かれていた。白い肌が価値を決めるシステムで、エルフは隠れることを強いられ、より黒い肌の人々は単なる労働の道具と見なされていた。

しかし、もしそれが変わったら？肌の色や種族、血統によって分断された王国ではなく、新しい社会が形成されたら——尊重、共有された苦しみ、異なる人種の人々の心からの関係に基づいた社会が。

彼女の父は彼女を理想主義者と呼んだだろう。彼女の兄は彼女の顔を笑っただろう。

しかし、彼女がこの三人の男たち——彼女とは大きく異なるが、今や運命によって結ばれた——を見つめると、それが現実になると確信した。

私は、すべての肌の色や背景を持つ人々が、主人と使用人ではなく、対等に立ち並ぶことができる王国を作りたい。

彼女は静かに息を吐き、微笑むことを許した。それは未来への夢だったが、初めてそれが可能に感じられた。

エヴリンは目を閉じ、そばの柔らかいシーツに手を置いた。

「私は絶対に世界を変えてみせる」

その静かな誓いと共に、彼女はついに眠りにつき、今や彼女の道を共有する者たちの存在に慰められた。

.............

と、その夜深くに.......

「た、助けー」

「助けて―！悪魔がー！」

「はああーーー！？」

「い、一体何がー？はあぁ....はあぁ....」

マリクは急に深い眠りから間を覚まして、呼吸も荒く心拍数も上がってる状態で起き上がった！
悪夢を見てしまったようだ。

「さっき、とても白い肌の女の子、......多分、エブリンよりも遥かに真っ白い陶器のような肌の女の子が、......助けを呼んでいる声が聞こえていた」

「そして、『彼女』も昔から、何度か夢の中で残像としていつも何秒間だけ見てきたんだ。でも、今回の悪夢を見せられる前は、...どれも幸せそうな場面で過ごしてきたあの女の子ばかりだった...」

マリクは尚も深く考えた、
「何か、大きな変革が......起こる予感がする！だって、さっきの『彼女』は！」

........

「漆黒も真っ黒い、触手のような物体に絡めとられながらにして...」

そして、マリクはその夢の中で、成す術もなく、助けを呼んでいる色白で濃い青色の髪してた女の子を救うことも出来ず、ただ見ていることしかできなかったことも......

「少し外を散歩しよう」

そういったマリクは、『彼女』のことを頭から考えるのを追い出すために、静かに他の３人を起こさぬよう音を立てずに、部屋の外へと出ていったのだった。