滅びゆく王国と平等の国を築く王女

王族好きな鳥ちゃん

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第33話:豪華な朝食と重大な取引

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モンテクレール公爵の屋敷の大食堂は、貴族の優雅さを象徴する見事な空間だった。

高くそびえる大理石の柱、金色のシャンデリア、精巧に彫られた木製のパネルが広大な部屋を飾り立てていた。

マホガニーの長いテーブルは、30人以上の貴族を収容できるほど大きかったが、今日はたった三人のために豪華にセットされていた——モンテクレール公爵、エブリン王女、そしてマリクだ。

朝の陽光がステンドグラスの窓から差し込み、磨かれた床に色とりどりの影を落としていた。

銀の大皿には贅沢な朝食が並んでいた。

バターたっぷりのクロワッサン、黄金色に焼けたソーセージ、ローストハム、さまざまな調理法で作られた卵、新鮮な果物、そしてスパイスの効いた紅茶が湯気を立てている。

公爵自身はすでにテーブルの上座に座っており、金の縁取りと家紋が施されたネイビーブルーの上着を身にまとっていた。

彼は威厳に満ち、落ち着いた様子で、鋭い灰色の目で客人たちが席に着くのを見つめていた。

「どうぞ」
と彼は手を差し伸べた。
「まずは食事を。腹が満たされてから、話をしよう」

エブリン王女は優雅にうなずき、王女としての称号を剥奪されたばかりの者とは思えぬ程の王族然とした品格を保ちながら紅茶のカップを手に取った。

彼女の隣に座ったマリクはより慎重で、公爵の態度を観察しながら控えめに料理を取った。

食事をしながら、モンテクレールは礼儀正しい会話を続けた......宮廷の話題、地域の貿易、彼の街の状況について語ったが、双方が本当に重要な話を待っていることは明らかだった。

皿が半分空になり、使用人たちが退くと、公爵はナプキンを置き、手を組んだ。

「さて」
と彼は声を上げ、声は平穏だが力強かった。
「本題に入ろう」

エブリンは紅茶のカップを置き、青い瞳で彼を見つめた。
「ええ、モンテクレール公爵。私は父に対する反乱において、あなたの支援を正式に求めたい。あなたの軍隊は、王立親衛隊を除けば最も精鋭だ。あなたの力があれば、私たちの大義は止められないものになるでしょう」

公爵は少し身を乗り出した。
「お世辞は嬉しいが、儂は現実的な男だ。戦争は費用がかかる。そして現国王を裏切ることもまた、大きなリスクを伴う。もし儂がそなたの側に立つなら、儂の領地と財産が生き残るだけでなく、そなたが築こうとする新王国で繁栄するという保証が必要だ」

エブリンはこれを予期していた。
彼女は背筋を伸ばし、手を優雅に膝の上に組んだ。
「条件を聞かせてください」

公爵は指を組んだ。
「まず、そなたが王位についたら、儂の領地、都市、そして屋敷は10年間の免税とする。これにより、儂の民は戦争からの回復を果たし、財政的な負担なく繁栄できる」

マリクは眉を上げたが、黙っていた。

要求は大胆だが、予想外ではなかった。

エブリンは軽くうなずいた。
「豪胆な要求だけれど、検討する価値はあろう」

モンテクレールは続けた。
「次に、儂の都市の統治に関しては完全な自治権を維持する。儂に、そなたを新たなる女王陛下として忠誠を誓うが、そなたを中心とした新しい王冠に対する犯罪が証明されない限り、王室の監察官が儂の都市の内政に干渉することは許さない」

エブリンの顎がわずかに引き締まった。

これは直接的な支配権の大幅な喪失を意味したが、彼女は冷静さを保った。

「そして三つ目だ」
と公爵の灰色の目が鋭くなった。

「儂の家から、そなたの新しい統治ラインに貴族の女性を嫁がせることを要求する。娘でも、姪でも、従姉妹でも構わない——この婚姻により、儂の家の威信が新時代においても保たれるだろう」

マリクの手がテーブルの上でわずかに握りしめられたが、すぐに力を抜いた。

彼は婚姻を政治的な道具として使うことに賛成ではなかった。

特にそれがエブリンに関わることなら尚更だ。しかし、彼は口を閉ざした。

王女は公爵を見つめ、彼の決意を測った。

彼は交渉の達人であり、自分の民のために最善の結果を引き出そうとしていた。

ついに、彼女は口を開いた。
「あなたの要求は厳しいね、モンテクレール公爵」

「それは公平な要求だ、エブリン『王女』よ」
と彼は反論した。

「儂は自由な人間による労働力で、自身の領地の経済がもっと活性化すると信じる男だ。よって、そなたらの大義にも理解はあるつもり。しかし、理想と忠誠心だけで戦う感傷的な愚か者でもない。儂は投資する価値のある未来のために戦うだろう。そなたにはそのことを理解してもらわなければならない」

長い沈黙が二人の間に広がった。

そして、エブリンは息を吐き、表情を崩さずに言った。
「わかりました。もしあなたが私と共に立ち、私たちが勝利を収めるなら、これらの約束を守りましょう」

モンテクレールは満足そうにうなずいた。
「では、エブリン王女——いや、エブリン『新女王陛下』、私の軍を陛下に預けよう」

部屋の空気が軽くなったが、責任の重さはまだ彼らの上にのしかかっていた。

彼らは王国で最も強力な軍事力の一つを手に入れた。

しかし、戦争はまだ始まってもいない。

........

エブリンはテーブルに手を置き、公爵に真っ直ぐに見つめた。「ただし、一つだけ条件がある」

公爵は興味深そうに眉を上げた。「それは?」

「あなたの軍隊が私たちの指揮下に入るなら、その指揮は私と私の信頼する者たちが執ります」
と彼女は言った。

「あなたの将軍たちは優秀でしょうが、この戦争は私の大義です。最終的な決定権は私が握ります」

モンテクレールは一瞬黙り、それからエブリンを新しい女王として認めたように、敬語に切り替えた話し声でゆっくりと頷きながら返事した、
「理にかなっている話です。しかし、儂の将軍たちが陛下の戦略に疑問を抱いた場合、彼らの意見を聞くことを約束してくれますかなー?」

「もちろんだ」
とエブリンは即座に答えた。

「私は独裁者ではない。意見を聞き、最善の策を選ぶ。しかし、最終的な責任は私が負おう」

公爵は満足そうに微笑んだ。
「では、その条件も受け入れましょう」

マリクはテーブルの下で拳を握りしめた。

彼はエブリンの決断力に感心すると同時に、彼女が背負う重荷を心配していた。20代前半のマリクと比べて、18歳のエブリン新女王はまだ若いが、その目には確固たる意志が宿っていた。

「もう一つ」とマリクが突然口を開いた。

二人の視線が彼に向けられた。「俺たちの大義は、貴族や軍隊だけのものではない。平民や、この王国で虐げられてきた者たちのためでもある。彼らもまた、新たな王国の一員として認められるべきだ」

エブリンはマリクを見つめ、彼の言葉に深くうなずいた。
「その通りだ。モンテクレール公爵、あなたの領地でも、白人黒人エルフ関係なく、平民たちがみんな平等に扱われることを保証してもらいたいけれど、どうだろう?」

公爵は少し考え込み、それからゆっくりとうなずいた。
「黒人はともかく、エルフともなると…確かに挑戦の多い要求でしょう。未だにエルフを化け物か得体の知れないものとして怖がっておる民も一定数はいるからな。しかし、もしそれが新たなる王国の礎となるなら、儂もその考えに賛同しましょう」

エブリンの唇に微笑みが浮かんだ。
「では、私たちの同盟は成立ね」

公爵は立ち上がり、彼女に向かって手を差し伸べた。
「では、エブリン陛下、...儂らの未来のために」

彼女も立ち上がり、彼の手を握り返した。
「私たちの未来のために」

マリクは二人を見つめ、心の中で誓った。

彼はこの戦いでエブリン新女王を守り、今この国の王都に君臨している敵の現国王達を倒せるような日になるまでに絶対に彼女の夢を実現させるため全力を尽くすと。

戦争の道は険しいが、彼らは一歩を大きく踏み出した。

そして、その一歩が王国の運命を変えることになることは言うまでもない話。
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