滅びゆく王国と平等の国を築く王女

第３６話：悪夢と剣の絆

二日後の夜、エブリンとマリクは馬に乗って基地を破壊しに向かう予定だった。

しかし、今夜、マリクは短いながらも強烈な悪夢にうなされた：

...............

「たー助けて――！！」

「闇がーー」

「あたしをーー！」

「！！待てー！直ぐに助けに！」

夢の中では、青白い肌と濃い青い髪の小さな女の子が、影のような手に引きずり込まれ、暗闇に消えていった。

マリクはその光景に無力感を覚え、必死に手を伸ばそうとしたが、届かない。

「嫌あああああぁ――――――――！」

女の子の悲鳴が耳に残り、マリクは汗びっしょりで目を覚ました。

朝の光が部屋に差し込み、彼は布団から起き上がり、額の汗を拭った。

悪夢の余韻がまだ体に残っていたが、彼はそれを振り払うために頭を何度も揺らしている。

「昔からも、あの女の子と同じ子らしき残像がいつも夢の中で見てきたが、あの子が闇に引きずり込まれていく悪夢として見るのがこの前と今日で２回目になって、初めて体験した変化だ。.......一体どうして......」

......
バター！

考えるのも億劫になったか、気分転換のために早くベッドから起き上がったマリクは、自室から出ていくのだった。

...............

朝食後の剣の訓練で：

朝食を終えると、マリクは屋敷の庭に出て、剣の訓練を始めた。

彼は剣を握り、空気を切り裂くように素早く動いた。一撃一撃に力を込め、悪夢の記憶を剣の動きにぶつけていく。

彼の動きは力強く、そして洗練されていた。

ホモンクルスと遭遇する前は元々戦闘の経験がなかったにもかかわらず、元奴隷の彼は驚くほど速く上達していた。

彼の剣は風を切り、地面に足音を響かせながら、集中力は研ぎ澄まされていった。

その様子を偶然目にしたモンテクレール公爵は、興味深そうに彼を見つめていた。

公爵は自身も剣の達人であり、マリクの技量に感心を覚えた。

「お前、なかなかやるな」
と公爵が声をかけた。

マリクは振り返り、公爵を見つめた。
「ただの訓練だ。気を散らすためにやっているだけだよ」

公爵は笑みを浮かべ、自身の剣を手に取った。
「それなら、相手をしてやろう。一人で練習するより、実戦に近い方が良いだろう？」

マリクは一瞬ためらったが、やがてうなずいた。
「喜んで」

二人は庭の中央に立ち、互いに向き合った。

公爵はゆっくりと剣を構え、マリクもそれに応じた。

........

一瞬の静寂の後、二人は同時に動いた。

剣がぶつかり合う音が庭に響き渡った。公爵の技は洗練されており、長年の経験が感じられる動きだった。

一方、マリクの動きは力強く、そして驚くほど素早かった。彼は公爵の攻撃を巧みにかわし、時には鋭い反撃を見せた。

「なるほど…」
と公爵は唸りながら、マリクの剣を払いのけた。

「お前は確かに才能がある。元奴隷で、軍事経験もないというのに、これほどの技量とはな」

マリクは笑みを浮かべながら、次の攻撃に備えた。
「生きるために覚えただけだ。でも、まだまだ学ぶことは多い」

公爵は彼の言葉に感心したようにうなずき、再び剣を交えた。

キーン！キーン！キーン！キーン！

二人の戦いはますます熱を帯び、庭には剣の火花が散った。

キーン！キーン！キーン！キーン！

その様子を途中から見ていたエヴリンは、驚きと感心の混じった表情で二人を見つめていた。

彼女はマリクの成長ぶりに目を見張り、彼がこれほどまでに剣の腕を上げていたことに驚いた。

「マリクは本当にすごいわね…」
と彼女は呟いた。
「あんなに速く上達するなんて」

仮にも戦闘訓練を子供時代から疾うに叩き込まれた公爵だった。
そして、実際に公爵自らも騎士団長になった経験のある昔からの猛者だ。

そんな熟練度高い剣士を、マリクが互角に渡り合えるほどの戦いぶりを見せているのだ。
すごくないはずがないだろう。

公爵とマリクの戦いはしばらく続き、最終的には引き分けに終わった。

二人は剣を下ろし、互いにうなずき合った。

.........

公爵は汗を拭いながら、マリクに歩み寄った。
「お前は確かに強い。元奴隷だろうが、黒人だろうが、そんなことは関係ない。剣の前では実力がすべてだ」

マリクはその言葉に少し驚いたが、やがて笑みを浮かべた。
「ありがとう、公爵。貴方もまた、素晴らしい剣の使い手だよ？」

公爵は彼の肩を叩いた。
「はは！儂のは昔からの遊びみたいなもんだ。儂よりも遥かに呑み込みの早いお前の方がずっと素晴らしいはずだ。だから、儂よりずっと強くなれるようこれからもっと鍛えてやる。なにせ、お前のような男がいるのは、我々の強みになるからな、がはは！」

エヴリンが二人の関心すべき友情にほっこりとした気分になりながら二人に近づき、微笑んでから言った、
「まるで兄弟のようね。二人とも、とても素敵だったわ」

マリクは彼女を見て、少し照れくさそうに笑った。
「まだまだです、陛下。でも、これからもっと強くなってみせる！」

公爵は彼らを見て、満足そうにうなずいた。
「よし、３日後の作戦に向けて準備を整えよう。陛下たちの力が、我々を勝利を導くはず...です！」

.........

その日、マリクは悪夢の記憶を剣の訓練で振り払い、新たな自信を得ていた。

公爵との絆も深まり、彼は自分がこの戦いで重要な役割を担っていることを再認識した。

エヴリンもまた、マリクの成長と彼の強さに感銘を受けていた。

彼女は彼がただの元奴隷ではなく、この戦いの鍵を握る戦士であることを確信した。

夜が訪れ、彼らは馬に乗り、基地へと向かう準備を整えた。

破壊の時は近づいていた。

そして、彼らの絆と決意が、この戦いの行方を大きく左右するだろう。