滅びゆく王国と平等の国を築く王女

王族好きな鳥ちゃん

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第37話:炎と怒りの夜(アルゼミン基地破壊作戦)

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3日後の夜、フェルダリスカ王国軍の『アルゼミン基地』:


月が高く空に浮かび、広大な軍事キャンプの上を淡い月光で照らしていた。

5千以上の兵士を収容する国王の予備兵基地は、平原に広がり、兵舎や補給庫、武器庫が並んでいた。

兵士たちは夜の訓練を終えたり、休息の準備をしたりと動き回っていた。

キャンプファイアが揺らめいていたが、彼らは丘の向こうに潜む破滅の影に気づいていなかった。

影に覆われた丘の上で、エヴリン王女とマリクは並んで立ち、闇に包まれていた。
彼らの背後には、契約した精霊2体が完全な姿で立ちはだかっていた。
それは破壊そのものの化身だった。

エヴリンの傍らには、輝く戦乙女アイリスが立っていた。
彼女は金色の鎧をまとった巨大な天界の存在で、純粋な光の翼を広げていた。その目は神々しい怒りに輝き、裁きを下す準備ができている彫刻のような整っている容姿をしている女王騎士のようだった。

マリクの傍らには、燃え盛る紅蓮の巨人な鳥、ヴォルカニスが姿を現した。進化した姿になったその鳥は赤黒い炎と揺らめく影で淡く覆われている精霊で、その体は破壊そのものの証だった。溶けたような真紅の目は、破滅への飽くなき飢えを燃やしていた。

エヴリンは常に持参してきた王族用の杖を握りしめた。
「時だ」

マリクは厳しい表情でうなずいた。
「生き残りは許さない」

地獄が基地に降り注ぐ時が来たー!

エヴリンのわずかな仕草で、アイリスは輝く剣を掲げ、天から真っ白い光の柱が降り注ぎ、キャンプの中心を直撃した。

ド――――――――ン!!!

眩しい爆発が兵舎を包み込み、一瞬にして数百の兵士を聖なる裁きの光で焼き尽くした。

基地にはパニックが広がった。

「がああーー!?一体なんだったんだー!?」

「敵襲かー!?おい、指揮官はどこだ!?」

「た、助けて―!!死にたくないよぉ~~ママあ――!」

悲鳴が空気を震わせた。

兵士たちが反応する間もなく、今度はヴォルカニスの方が怒りを解き放つ番だ。

燃え盛る巨鳥は巨大な爪を地面に叩きつけ、地の底から赤黒い炎の嵐が湧き上がり、部隊全体を轟音と共に飲み込んだ。

兵士たちは紅蓮の炎に焼かれながら悲鳴を上げ、鎧は熱で溶けていった。
空そのものが暗くなり、風は焼け焦げた肉の臭いを運んだ。

慈悲なき虐殺が始まった!

必死の将校たちは命令を叫び、兵士たちをまとめようとした。
弓兵たちは矢を放ったが、的につく前に灰と化した。

一団の兵士が突撃してきた——しかし、アイリスはただ手を伸ばし、光の刃を降らせながら無表情で彼らを虫けらのように切り裂いただけだ。

マリクは一歩前に出て、その目には混沌が映っていた。
「もっと炎の燃料を」

彼は指を一本前に向け、ヴォルカニスが咆哮した。

赤黒いエネルギーの波が前方に押し寄せ、兵士たち、テント、防壁を引き裂き、骨を砕き、体を押しつぶしていった。

何時間にもわたっての虐殺が続き、ついに残ったのは炎に包まれた廃墟と焦げた死体だけだった。

かつて活気に満ちていた基地は、灰燼と廃墟の墓場と化した。

..................


夜明けまでに、その知らせは野火のように広がった。

国王の直結領で統治している王都や駐屯地は、その恐ろしい報告に震え上がった。

5千の兵士、は一晩で消え去った。

語り部となる生存者は一人もおらず、かつての王権の砦は焼け焦げた残骸だけだった。

どの街でも、囁きが広がっていた。

「聞いたか?元王女の精霊が一晩で全軍を滅ぼしたらしいぞ!」

「基地にいた国王陛下の熟練度高いらしい将官ひとりですら、あの力には敵わない!」

「王立軍に加わるのは自殺行為だ——手遅れになる前に戦う側を変えるべきだ!」

恐怖は新兵や予備兵の間に広がった。

その夜、公爵領にもっとも近い町々からは何人かが脱走し、モンテクレール公爵の領地へと逃げ出した。町人たちは王立軍入隊を躊躇い、あの基地と同じ運命をたどりたくないと思った。

王立軍の中でも、兵士たちは忠誠心に疑問を抱き始めた。

そして、首都では、初めて国王自身が不安の震えを感じた。

.....................

モンテクレールの要塞に戻ったエブリン新女王とマリクは、公爵の前に立った。

公爵は彼らを見て、知っていたような笑みを浮かべた。

「よくやった」
とモンテクレールはワインを一口飲みながら言った。

「国王軍は震え上がっていると聞きましたぞ!これで徴兵は鈍化し、恐怖があの地を覆っている最中だろう」

エヴリンは息を吐き、まだ虐殺の重みを感じていた。

しかし、彼女は自分を奮い立たせた——これは戦争であり、自軍にはあらゆる有利な条件が必要だった。

マリクはただ腕を組み、無表情のままでいた。

モンテクレールは身を乗り出し、目を輝かせた。

「真の戦争は今から始まる。...そして、何としても王都を1日でも早く陥落させねばならん」

..............

......

『アルゼミン基地』周辺の町々がエブリン女王陛下率いる『新王国エブリク女王軍』に無血開城された1週間後のこと:

............

戦場の廃墟に立ち、エヴリンは焼け焦げた地面を見下ろした。

彼女の目には複雑な感情が浮かんでいたが、彼女はそれを押し殺し、冷静さを保った。

「これで十分なメッセージを送れたわ」
と彼女はマリクに言った。

「国王の兵士たちは、もう二度と私たちを軽視しないでしょう」

マリクはうなずき、焼け野原を見渡した。
「でも、これで終わりじゃない。むしろ、これからが本当の戦いだな」

彼女は彼の言葉に深くうなずいた。
「その通り。私たちはこの恐怖を利用し、さらに私の掲げた奴隷解放という大義にも多くの支持を集めなければならない」

その時、遠くから馬の蹄の音が聞こえた。

偵察隊が戻ってきたのだ。彼らはこの地域の周辺に潜んでいた王立軍の残党が恐怖に震えながらあっちこっちで武器を捨て降参してくる様子を報告した。

「彼らはもう戦う意志を失っているようです」
と偵察隊長は言った。

「王女とマリクの精霊の話を聞き、脱走する者が後を絶ちません」

エヴリンは満足そうに微笑んだ。
「それでいい。今の私たちがやるべきことは次の作戦を考えるだけだろう」

マリクは彼女を見て、少し笑みを浮かべた。
「陛下は本当に素晴らしいリーダーだな。この戦いで、貴女は多くの者たちの希望になっている」

彼女は彼の言葉に頬を染め、
それから真剣な表情に戻った。
「でも、まだ終わっていない。私たち、エブリク女王軍はこの勢いを保たなければならないわ。何があっても、早く奴隷制度を廃止にして、この悪夢を終わらせたいの」

二人は廃墟の中を歩き、次の戦略を話し合った。

彼らの背後には、焼け焦げた基地が静かにくすぶり、彼らが成し遂げた破壊の証となっていた。

そして、彼らが去るとき、風は灰を運び、王立軍の兵士たちの心に深く刻まれた恐怖を広げていった。
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