滅びゆく王国と平等の国を築く王女

王族好きな鳥ちゃん

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第40話:訓練と夢の予言

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その日の午後、モンテクレール公爵の広大な訓練場で、マリクとエヴリン陛下は素手による格闘技のスパーリングを行うことになった。

二人は互いに距離を取り、軽い防具を身に着けていた。

エヴリンは金色のハイヒールを履いたままだったが、彼女の動きは軽やかで優雅だった。

「いつものように手加減なしで行くわよ、マリク」
とエヴリンは笑みを浮かべながら言った。

マリクは腕を組んで彼女を見つめ、自信たっぷりにうなずいた。
「わかってる。でも、陛下が倒れるときは優しく受け止めてやるよ」

エヴリンは目を細め、遊び心のある笑みを浮かべた。
「その言葉、後で悔やむことになるわよ」

激しい試合が開始された!

マリクは鋭いパンチを繰り出し、エヴリンはそれを軽やかにかわしていった。
彼女の動きは流れるように滑らかで、まるで風を操っているかのようだった。

マリクは一瞬の隙をついて突進し、強烈なストレートを放ったが、エヴリンは素早く身をかわし、彼の攻撃を無効化した。

「まだまだね、マリク」
と彼女は笑いながら言った。

マリクは笑みを浮かべ、再び攻撃を仕掛けた。
彼の動きは力強く、そして速かったが、エヴリンはそれをすべて読み切り、巧みに防御した。

幼少期からの戦闘訓練を経験したことがないはずの王女だったが、9歳になってからは我流で本を読んだりホームスクールの先生に紹介してもらった格闘家のエキスパートから学んだことで大抵の技は習得してきたらしい。

それも、王女だった今の新女王は『その時』に備えるためにずっと自分の豪華な私室で毎日の訓練を怠っていないから身に着いた瞬発力と敏捷性の高い戦い方だ。

そんな勤勉な生活を送ってきた王女だった陛下だから、決定的な一撃を狙おうと思うならエブリンは容易くそれを実現できるだろう。

戦いが佳境に入ると、エヴリンは自分の勝利を実現させるべく一瞬の隙を見せたように見えた。
マリクはそれに飛びつき、強烈なフックを放ったが——それは罠だった。

エヴリンは素早く身をかわし、彼の攻撃を完全に外した。

そして、彼女は回転しながら強烈な回し蹴りを放った。その蹴りはマリクの胸の防具に直撃し、彼を数歩後退させた。

マリクはバランスを失い、地面に膝をついた。

彼は驚きと感心の混じった表情でエヴリンを見つめた。

「くっ…陛下は本当に強いな」
と彼は息を切らしながら言った。

エヴリンは彼に白い手を差し伸べ、優しく微笑んだ。
「あなたも負けてないわ。でも、今回は私の勝ちね」

マリクは彼女の手を握り、立ち上がった。
「次は負けないよ」

エヴリンは笑みを浮かべ、彼の肩を軽く叩いた。
「楽しみにしてるわね、私の『騎士さん』、ふふふ...」

........................

その夜、マリクは深い眠りについた。

彼の夢の中では、異世界の風景が広がっていた。

そこには、アフリカという大地からのシャーマンであると名乗る、自分の肌色と似ている黒人男性が現れた。
でも髪型はマリクの綺麗に整えられている、清潔感のある短いアフロヘアではなく、もっとワイルドな感じのドレッドヘアをしているようだ。

彼の名はトゥレク・ヴァレスと言い、遠い異世界である『地球』から来たと語った。

トゥレクは笑みを浮かべながらこう言った、

「僕は地球から君の夢を訪れたアフリカ人のシャーマン、トゥレク・ヴァレスではあるが、実は僕のいた地球では次元上昇シフトに伴い、いくつかのタイムラインもしくは時間軸が複数ある仕組みだったから、たまたま僕のタイムラインでは神秘と魔術的なものが発生しやすく、それで違う世界にいる君と夢の中で会えて会話できたという訳だ」

そして、彼も続いた、

「僕は今、スカンジナビアという『北ヨーロッパ』の白人の王女、マルガリート=ルイーザ・オラフスダッターと結婚した身だ。だから、僕と同じ肌をしている君もエヴリンのような若くて綺麗な白人の王族女性と結婚できるように応援しているよ」

マリクは驚き、ためらいながら答えた。
「それは…難しいだろう。元奴隷の俺が王族と結婚するなんて、大きな反対の声に遭うに違いない」

トゥレクは大声で笑い、彼の肩を叩いた。
「心配するな、友よ。愛はすべての壁を乗り越える。ペテン師だと言われていた僕だってそうだった。でも実際、僕は嘘なんかついておらず、本当に魔術的なものや神秘に詳しいことは事実のはずなんだけどね、こうして君と会話できたことが証だ」

そして、トゥレクは真剣な表情に変わった。
「さて、君に一つ贈り物をしよう」

彼は手を上げ、アフリカの神々からの特別な呪文を唱えた。

その呪文は、マリクが戦いで死んでも二度まで復活できる力を与えるものだった。

「この呪文は、戦いや戦闘に関連する死から君を守る。ただし、病気や事故での死には効かないから気をつけてくれ」

マリクは驚きと感謝の混じった表情でトゥレクを見つめた。
「なぜ…俺にそんな力を?」

トゥレクは笑みを浮かべ、彼の肩を叩いた。
「君はこれから大きな戦いを迎える。そして、君の運命はまだ終わっていない。それに、何よりも僕の奥さんまでもが君を支援するよう頼まれたから。だからこの力を使って、君の未来をこれで切り開いてくれ」

マリクは深く頷き、トゥレクに感謝の言葉を伝えた。
そして、夢が終わり、彼は目を覚ました。

新たな決意が芽生えたマリク!

朝日が窓から差し込み、マリクはベッドから起き上がった。

彼は夢の内容を思い出し、胸に湧き上がる決意を感じた。

エヴリンとの試合、トゥレクからの贈り物——すべてが彼に新たな力を与えていた。

彼は窓の外を見つめ、静かに呟いた。
「これからが本当の戦いだ。そして、俺は必ず生き残ってみせる」

その日、マリクは新たな決意を胸に、戦場への準備を整えた。

彼の心には、エヴリンとの未来への希望が芽生え始めていた。

そして、彼らは新たな時代の夜明けを信じて、次の日を迎える準備をした。
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