滅びゆく王国と平等の国を築く王女

王族好きな鳥ちゃん

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第42話:神の声と裏切りの決意

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王都の中心にそびえる聖エレサール大聖堂は、静寂に包まれていた。

巨大なステンドグラスから差し込む光が、荘厳な祈祷堂を優しく照らし出していた。

その中心には、聖なる女神エレサールの祭壇が置かれ、その前に一人の女性がひざまずいていた。

彼女の名はジェネヴィエーヴ。

王国で最も崇敬される聖エレサール教会の大司祭だ。とても敬虔な信徒として有名で、歴史上最も若い大司祭として就任した彼女は21歳の女性で、長い銀色の髪を背中になびかせ、純白の司祭服を身にまといながら静かに祈りを捧げていた。

「女神エレサールよ、どうかこの王国に平和と正義をもたらしてください…」

彼女の声は静かに響き、祭壇に吸い込まれていくようだった。
しかし、その瞬間——

女神様の啓示がー!

突然、ジェネヴィエーヴの視界が揺らめき、彼女の意識は別の場所へと引き込まれた。

彼女の目の前に、王座の間の光景が浮かび上がった。ヴァルデン王とフレデリック王太子が密談を交わしている——その会話が、まるで目の前で行われているかのように聞こえてきた。

「我々は冥界から最強の悪魔を召喚する。その力でエブリンと薄汚い黒ゴミ共を消し去るのだ」

ジェネヴィエーヴの心臓が高鳴った。

悪魔の召喚——それは聖エレサールの教えにおいて、最も忌まわしく、許されざる行為だった。

「これは…女神様からの啓示ですねー!」
と彼女は呟き、震える手で胸に十字を切った。

ジェネヴィエーヴはゆっくりと立ち上がり、祭壇を見つめた。彼女の目には決意の光が宿っていた。

「わたしはこれまで、王国のために祈り、導いてきました。しかし、今の王は女神様の教えに背き、闇に手を伸ばしているのようです…」

彼女は静かに息を吐き、心の中で誓った。「わたしはもう、このような邪悪な儀式に参加した王に仕えることはできません!エヴリン王女、...いや、エブリン新女王陛下こそが、真の王国を導く者になるはずです!」

ジェネヴィエーヴはすぐに行動を起こした。

彼女は自分の部屋に戻り、必要なものをまとめ始めた。司祭服を脱ぎ、質素な旅装に着替え、重要な書物と聖なる遺物を小さな袋に詰めた。

彼女は密かに自分の家族に連絡を取った。

ジェネヴィエーヴの家は古くからの貴族で、王都でも一定の影響力を持っていた。

彼女の兄、アルフォンスはすぐに返事をくれた。

「ジェネヴィエーヴ、君の決断を支持する。我々は君を王都から脱出させる手配をする。しかし、これは危険な賭けだ。失敗すれば、我々全員が反逆者として処刑される」

ジェネヴィエーヴは兄の言葉に深く頷いた。
「わかっています、アルフォンス。でも、私はもう後戻りできません。女神様が私にこの道を示してくれたのですよ」

アルフォンスは静かにうなずき、計画を立て始めた。
「では、我々の交易用の馬車を使おう。君はその中に隠れ、王都の門を通過する。その後、モンテクレール公爵の領地に向かうのだ」

..................

脱出の夜:

その夜、ジェネヴィエーヴは密かに大聖堂を抜け出し、家族が手配した馬車に乗り込んだ。

彼女は毛布に包まれ、荷物の下に隠れた。

馬車はゆっくりと王都の門に向かって進んだ。
門には衛兵たちが立ち、厳重なチェックを行っていた。

「止まれ!この馬車は何の用だ?」

馬車の御者は冷静に答えた。
「我々はアルフォンス伯爵家の交易用馬車です。近隣の町に向かう予定です」

衛兵は馬車の中をざっと見回したが、ジェネヴィエーヴの姿は見つからなかった。

「よし、通ってよし」

馬車はゆっくりと門を通過し、王都の外へと出た。

................


馬車が王都から十分に離れると、ジェネヴィエーヴは毛布から顔を出し、深く息を吐いた。

「これで、私は自由の身となります…」

彼女は窓の外を見つめ、遠くにあるモンテクレール公爵の領地を目指して進む馬車に身を任せた。

「エヴリン陛下、そして、...その側仕えの騎士様となったばかりの黒人男性のマリク…どうかわたしが間に合いますように」

......................


馬車の中、ジェネヴィエーヴは静かに祈りを捧げた。「女神エレサールよ、どうか私の道を守り、この王国に真の平和、そして、...エブリン陛下が掲げた『真の平等社会』をもたらしてください…」

彼女の心には、不安と希望が入り混じっていた。

これまで彼女は王国のため、教会のため、そして女神のために生きてきた。しかし、今や彼女はそのすべてを捨て、新たな道を歩もうとしている。

「私は正しいことをしているのでしょうか…」

その時、彼女の心に女神の声が響いた。

「恐れるな、我が子よ。汝の道は正しきものなり」

ジェネヴィエーヴはその声に安堵の表情を浮かべ、再び決意を固めた。

「ありがとう、女神よ。私は必ずやこの使命を果たしてみせます!」

馬車は夜の闇の中を進み、モンテクレール公爵の領地に向かっていた。

ジェネヴィエーヴの心には、新たな希望が芽生え始めていた。

そして、彼女がエヴリンとマリクの元にたどり着くその日——王国の運命は再び動き出すだろう。
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