俺がワガママ王子なわけがない! ~交通事故で転生したら、評判最悪の王族になっていた件~

角砂糖

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第一章 マジかよ!?俺がワガママ王子!?

誤解の廊下、茶の香りの室内

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和の朝餉を食べ終えた俺、渚さん、そしてミラ。
腹も落ち着いたところで、自然と話題は「どう正体を隠すか」に移っていった。

「……つまり、ミラにも“秘密”を共有してもらったわけだな」
「はい……わ、私で良ければ」
「心強いですわ。では、このことは三人だけの“密談”ということで」

俺たちは机を囲んで、小声で真剣な顔を突き合わせる。
だが――


部屋の外。

廊下を通りかかった侍女たちは、ぴたりと足を止め、耳をそばだてていた。

「ちょっと聞いた!? 王子様、またミラを詰問してるわよ!」
「小声でネチネチと……あれ絶対イジメよ! ほら、渚様まで巻き込んで!」
「うわぁ……“銀髪の愛人”と一緒に圧かけてるのかしら……!」

囁きが囁きを呼び、あっという間に廊下はひそひそ声の渦。
完全に「またワガママ王子の理不尽が始まった」という空気になっていた。


室内。

渚が微笑んで言う。
「……倫太郎。どうやら外に“観客”がいるようですよ」

「えっ!? 聞かれてる!?」
「心配には及びません。――打ち合わせ通り、参りましょう」

ミラもこくりと頷いた。

俺は「変化の杖」を握りしめ、一瞬だけ声をアレクシス王子のものに変化させる。
次の瞬間――俺たちは、いかにも和やかな調子で声を張り上げた。

「いやあ、この“ごはん”ってやつは最高だったなぁ!」
「本当に! こんな優しいお味は初めてです!」
「ええ、“豆の汁物”も格別でしたわ。心が温まりますもの」


廊下の侍女たち。

「……え?」
「なにそれ、感想会?」
「ちょ、ちょっと待って……王子様、もしかして“料理のレビュー”してただけ……?」

ざわめきがどよめきに変わり、最後は一人の侍女が小声で総括した。

「――つまり……あの三人、すごく仲良しってこと?」

場に一瞬、妙な空気が流れた。

室内では、倫太郎が額の汗を拭っていた。

「……あっぶねぇ! 完全に“取り調べ現場”扱いされてたぞ」
「大丈夫です。想定内ですわ」

渚は涼しい顔でお茶を注ぎ、ミラは真っ赤になりながら小さく笑った。

こうして俺たち三人の秘密は――“朝食の感想会”ということで、ひとまず城内に誤魔化されることになったのだった。


その頃、まだ廊下では侍女たちがざわつき続けていた。

「でもさっきまで確かに詰問っぽかったよね……」
「そうそう、急に声が大きくなったし……」

そんな空気を切り裂くように、低い声が響く。

「……何やら騒がしいな」

廊下の奥から姿を現したのは、執事ギルバート。
眉間に深い皺を刻んだまま、鋭い視線で侍女たちを見回す。

「王子の部屋から“詰問”のような声が聞こえたと……本当か?」

侍女たちは一斉に青ざめてうつむいた。

(やばい! 本気で乗り込むつもりだ!)

「アレクシス様――!」
扉を開け放とうとするギルバート。


その瞬間。
すっと横に滑り込んだのは、銀髪の渚だった。

「ギルバートさん。失礼ながら……ただ今、王子様は“お着替えの最中”でございます」

「……着替え?」
ギルバートがぴたりと動きを止める。

「ええ。とても、人目にお見せできる状態ではありません」

渚は淡々と、しかし妙に含みのある声色で告げた。

「…………っ!」

ギルバートの顔が、みるみる赤くなる。
「そ、それは……とんだ無粋を……っ!」

彼は耳まで真っ赤にしながら、くるりと踵を返した。
「し、失礼した! 後ほど参ります……!」

ドタドタと早足で去っていく背中を見送りながら――


室内。

倫太郎とミラは、同時に小声で突っ込んだ。

「着替えって……!」
「……ウソですよね!?」

渚は涼しい顔でお茶を注ぎながら、さらりと答える。
「ええ。ですが、最も効果的な理由でしたでしょう?」

二人は顔を見合わせ――。
次の瞬間、倫太郎は机に突っ伏し、ミラは肩を震わせながら笑いをこらえた。

こうして、危うく正体が露見しかけた状況は、渚の機転で“お着替え中”という方便にすり替えられたのだった。


――だが、問題はその後だった。

「ねえ、今の……聞いた?」
「“お着替え中”って……」
「ちょっと……もしかして王子様の着替えに興味津々で聞き耳立ててたって、思われない?」

「いやいや、そんなつもりじゃ――」
「でも実際、あんなに真剣にひそひそしてたら……」

ひそひそ声が巡り、やがて別の侍女グループに聞かれてしまう。

「えっ、なに? あの子たち、王子様の着替えに興味あるの?」
「きゃっ、やだ! そういう趣味!?」

完全な誤解が誤解を呼び、あっという間に「一部の侍女が王子の着替えに興味津々」という噂へとすり替わっていった。
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