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第三章 糸を束ねる者たち
守銭奴? いいえ、信用第一でございます
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兵舎の片隅、休憩中の兵士たち。
ひそひそ声が飛び交っていた。
「なぁ聞いたか? 王子付きの侍女が兵士百人をまとめて倒したらしいぞ」
「百人!? 俺の聞いた話じゃ千人だったぞ」
「千人!? この城にそんなに兵いねぇだろ!」
「いやいや、見たやつが言ってたんだ。“銀髪がひゅんって動いたら、みんな気絶してた”って」
「なんだそれ……忍者か?」
「いや、妖精だって聞いたぞ。だって顔が綺麗すぎて、目が合った瞬間みんな卒倒したんだって」
「……それもう戦わずに倒れてるじゃねぇか」
侍女たちの控室でも。
「ねぇねぇ聞いた? 渚様が訓練場で兵士を叩きのめしたんですって!」
「私が聞いたのは“兵士が叩きのめされて喜んでた”って話よ!」
「喜んでた!? どういうこと!?」
「“もっと叱ってください!”って土下座して頼んだらしいわ!」
「……それ訓練なの? 趣味なの?」
一方で、兵士の中にはこう証言する者もいた。
「渚様が振り向いただけで風が吹いて、俺の木剣が折れた」
「俺なんか“ありがとうございます”って言いながら負けてた」
「……なにに感謝してんだお前」
噂は瞬く間に広がり、やがて城内ではこう呼ばれるようになった。
――“銀髪の鬼教官”渚。
「王子直属の影の軍団が動き出した」
「その軍団の名は《銀の糸部隊》らしい」
「いや違う、《銀河爆裂隊》だって!」
「爆裂!? もう意味わかんねぇよ!」
そして最後に、またもや噂を耳にしてしまったギルバートは書類を落とし、天を仰いだ。
「……次は軍隊まで生まれるのか……!」
王子私室にて
「――“銀髪の鬼教官”……だと……?」
倫太郎は報告を聞いた瞬間、頭を抱えた。
「なんでそうなるんだよ! 渚さんはちょっと模擬戦しただけだろ!? なんで部隊作ったことになってんの!?」
ミラは顔を真っ赤にして慌てる。
「わ、わたし……“銀河爆裂隊”って名前まで聞きました……! 爆裂って何ですか!? ぜんぜん渚様っぽくないです!」
渚は苦笑しつつも、平然と茶を口に含んだ。
「……放っておけば、そのうち収まりますよ」
「収まらないって! むしろ加速してるから!」
倫太郎の悲鳴が部屋に響いた。
ギルドにて
ユリウスは目を輝かせて叫んだ。
「すげぇ! 渚さんってそんなに強いのか! やっぱ本物の英雄だ!」
セリナは両手を合わせてうっとり。
「“銀髪の鬼教官”……かっこいいです……! 私も指導してほしいです……!」
ガルドは盾を磨きながら、ぼそり。
「……鬼、というより……鬼神だな」
理人はニヤニヤしながらゴーグルを押し上げた。
「いやぁ~、噂ってのは面白いな。こうやって勝手に拡散して、俺らのギルドの看板になっていくわけだ」
「いや、看板にしていいのかそれ!?」
倫太郎の声は、遠くギルドまで届きそうだった。
謎の商人登場
噂は人を呼ぶ。
「銀髪の鬼教官がいるギルド」「ワガママ王子が作らせた宿泊所」――
王都の街で囁かれる奇妙な話に釣られ、一人の商人がギルドを訪れた。
その商人は、見た目こそ十代半ばの少女。
鮮やかな衣装を纏い、小さな体で大きな背負い袋を運んでいた。
だが口を開いた瞬間――。
「ほっほっほ……ここが例の噂のギルドでございますかな?
いやぁ、まこと面白そうな香りがいたしましてなぁ……」
まるで老獪な行商人。
年寄り臭い喋りとしたたかな笑みで、あっという間に周囲を煙に巻いた。
「な、なんだこのおばあちゃん口調の少女は……!」
ユリウスが目を丸くする横で、セリナは小声で囁く。
「……でも並べてる品、すごい……この辺りじゃ見ないものばかり」
実際、彼女の背負い袋から出てきたのは珍しい鉱石や薬草、見たこともない香辛料。
理人は即座に飛びついた。
「うおおっ!? この素材、ラボで使える! なんでこんなの持ってるんだ!?」
商人はにやりと笑い、指を振った。
「ほっほ……こちらにも利益がありましてなぁ。物々交換と売買、ここで始めてよろしいかの?」
理人は即座に静香のところへ駆け込んだ。
「隊長! この商人、滞在させていいですか!? 資材も素材も潤うし、ギルドの流通網が一気に広がります!」
静香は腕を組み、冷静に少女を見据える。
「……守銭奴らしいですが、秩序を乱さなければ問題はありません。
ただし――規律に従ってもらいますよ」
「ほっほ、心得ておりますとも。商いは信用第一でございますからなぁ」
こうしてギルドに新たな住人――
「年寄り臭い喋りをする若い商人」が加わった。
その日から、ギルドは冒険者だけでなく商人たちも集う、にぎやかな拠点へと進化していった。
ひそひそ声が飛び交っていた。
「なぁ聞いたか? 王子付きの侍女が兵士百人をまとめて倒したらしいぞ」
「百人!? 俺の聞いた話じゃ千人だったぞ」
「千人!? この城にそんなに兵いねぇだろ!」
「いやいや、見たやつが言ってたんだ。“銀髪がひゅんって動いたら、みんな気絶してた”って」
「なんだそれ……忍者か?」
「いや、妖精だって聞いたぞ。だって顔が綺麗すぎて、目が合った瞬間みんな卒倒したんだって」
「……それもう戦わずに倒れてるじゃねぇか」
侍女たちの控室でも。
「ねぇねぇ聞いた? 渚様が訓練場で兵士を叩きのめしたんですって!」
「私が聞いたのは“兵士が叩きのめされて喜んでた”って話よ!」
「喜んでた!? どういうこと!?」
「“もっと叱ってください!”って土下座して頼んだらしいわ!」
「……それ訓練なの? 趣味なの?」
一方で、兵士の中にはこう証言する者もいた。
「渚様が振り向いただけで風が吹いて、俺の木剣が折れた」
「俺なんか“ありがとうございます”って言いながら負けてた」
「……なにに感謝してんだお前」
噂は瞬く間に広がり、やがて城内ではこう呼ばれるようになった。
――“銀髪の鬼教官”渚。
「王子直属の影の軍団が動き出した」
「その軍団の名は《銀の糸部隊》らしい」
「いや違う、《銀河爆裂隊》だって!」
「爆裂!? もう意味わかんねぇよ!」
そして最後に、またもや噂を耳にしてしまったギルバートは書類を落とし、天を仰いだ。
「……次は軍隊まで生まれるのか……!」
王子私室にて
「――“銀髪の鬼教官”……だと……?」
倫太郎は報告を聞いた瞬間、頭を抱えた。
「なんでそうなるんだよ! 渚さんはちょっと模擬戦しただけだろ!? なんで部隊作ったことになってんの!?」
ミラは顔を真っ赤にして慌てる。
「わ、わたし……“銀河爆裂隊”って名前まで聞きました……! 爆裂って何ですか!? ぜんぜん渚様っぽくないです!」
渚は苦笑しつつも、平然と茶を口に含んだ。
「……放っておけば、そのうち収まりますよ」
「収まらないって! むしろ加速してるから!」
倫太郎の悲鳴が部屋に響いた。
ギルドにて
ユリウスは目を輝かせて叫んだ。
「すげぇ! 渚さんってそんなに強いのか! やっぱ本物の英雄だ!」
セリナは両手を合わせてうっとり。
「“銀髪の鬼教官”……かっこいいです……! 私も指導してほしいです……!」
ガルドは盾を磨きながら、ぼそり。
「……鬼、というより……鬼神だな」
理人はニヤニヤしながらゴーグルを押し上げた。
「いやぁ~、噂ってのは面白いな。こうやって勝手に拡散して、俺らのギルドの看板になっていくわけだ」
「いや、看板にしていいのかそれ!?」
倫太郎の声は、遠くギルドまで届きそうだった。
謎の商人登場
噂は人を呼ぶ。
「銀髪の鬼教官がいるギルド」「ワガママ王子が作らせた宿泊所」――
王都の街で囁かれる奇妙な話に釣られ、一人の商人がギルドを訪れた。
その商人は、見た目こそ十代半ばの少女。
鮮やかな衣装を纏い、小さな体で大きな背負い袋を運んでいた。
だが口を開いた瞬間――。
「ほっほっほ……ここが例の噂のギルドでございますかな?
いやぁ、まこと面白そうな香りがいたしましてなぁ……」
まるで老獪な行商人。
年寄り臭い喋りとしたたかな笑みで、あっという間に周囲を煙に巻いた。
「な、なんだこのおばあちゃん口調の少女は……!」
ユリウスが目を丸くする横で、セリナは小声で囁く。
「……でも並べてる品、すごい……この辺りじゃ見ないものばかり」
実際、彼女の背負い袋から出てきたのは珍しい鉱石や薬草、見たこともない香辛料。
理人は即座に飛びついた。
「うおおっ!? この素材、ラボで使える! なんでこんなの持ってるんだ!?」
商人はにやりと笑い、指を振った。
「ほっほ……こちらにも利益がありましてなぁ。物々交換と売買、ここで始めてよろしいかの?」
理人は即座に静香のところへ駆け込んだ。
「隊長! この商人、滞在させていいですか!? 資材も素材も潤うし、ギルドの流通網が一気に広がります!」
静香は腕を組み、冷静に少女を見据える。
「……守銭奴らしいですが、秩序を乱さなければ問題はありません。
ただし――規律に従ってもらいますよ」
「ほっほ、心得ておりますとも。商いは信用第一でございますからなぁ」
こうしてギルドに新たな住人――
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その日から、ギルドは冒険者だけでなく商人たちも集う、にぎやかな拠点へと進化していった。
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