俺がワガママ王子なわけがない! ~交通事故で転生したら、評判最悪の王族になっていた件~

角砂糖

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第四章 再生の火は物語を照らす

休養命令!?巽抜き三人の連携戦!

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ギルド医務室

白布のベッドに横たわる巽の額に、怜がそっと冷や布を置いた。
「……戦闘中に無理をしすぎましたね。三日間は休養してください」

「え、三日!? 俺、まだ全然動けますって!」
巽が上体を起こそうとするが、静香の冷ややかな声が飛ぶ。

「巽。これは命令です。あなたが倒れれば全体の危機になります」

「ぐ……! ……了解」
巽は押し黙り、悔しそうに枕へ沈んだ。


倫太郎も苦笑しながら肩を叩く。
「巽、たまには休んでろよ。無茶しすぎなんだよ」


ギルド・依頼掲示板

数時間後。
依頼の掲示板の前に立ったのは、颯真、理人、怜の三人。

「……巽抜きで行くの、なんか変な感じだな」
理人がゴーグルを押し上げながらぼやく。

「休養は必要だ。俺たちでこなせばいい」
颯真は炎弓を背に静かに答えた。

怜も頷き、依頼書を手に取る。
「討伐と護衛、どちらも可能です。三人でなら十分に対応できるでしょう」

理人はため息をつきつつも、端末を操作しながら呟く。
「ま、巽がいなくても、今は戦力的に不足はないか……。けどどうせ、あいつベッドで暴れてんだろうな」

颯真はわずかに口元を緩め、静かに言葉を落とす。
「……相変わらずだな、巽は」

怜は微笑みを浮かべる。
「ええ。でも、その“相変わらず”を守るのが、今の私たちの役目です」

三人は視線を交わし、次の依頼に向かって歩み出した。


郊外・石切り場跡

崩れかけた採石場の奥で、岩塊のような影が蠢いた。
無数の魔力のひびが走り、拳ほどもある石を叩きつけながら歩み出す。

「魔導ゴーレム……」怜が抜刀し、鋭い目を向ける。
「放置されれば街道を塞ぎます。ここで仕留めましょう」

理人は腕に装着した端末を起動し、周囲をスキャンした。
「旧型だな。硬いだけでスピードはない。……ただし魔力核を壊さないと再生する。座標は――」

「俺が射抜く」
颯真が冷静に弓を構えた。


戦闘開始

ゴーレムが咆哮と共に拳を振り下ろす。
怜が前へ飛び出し、刃で受け流した。
「……重いっ!」
石肌を削ぐだけで精一杯。

「こっちに集中させろ!」
理人がデコイドローンを飛ばし、光を放ってゴーレムの注意を逸らす。
その隙に怜が素早く背後へ回り込み、脚部を斬り裂いた。

「今だ、核が露出した!」理人が叫ぶ。

颯真の炎弓が光を帯びる。
「……炎矢・陽炎」
放たれた矢は一直線に核を射抜き、赤熱した炎が内部を焼き尽くす。

ゴーレムはひび割れた巨体を震わせ、轟音と共に崩れ落ちた。


戦闘後

怜が剣を納め、息を整える。
「……さすがですね。颯真さんの一撃は確実でした」

理人はドローンを回収し、苦笑する。
「まぁ、俺と怜が削ったおかげでもあるけどな」

颯真は静かに弓を収め、二人を見渡した。
「……良い連携だった。これなら巽が休んでいても問題ない」

怜がふっと微笑む。
「ええ。ただ……あの人はきっと、“自分も行く!”って騒ぐでしょうけど」

三人は顔を見合わせ、小さく笑った。
肩慣らしの戦いは、確かな手応えを残して終わった。


王城・廊下

制服姿の少年が、そそくさと歩いていた。
学ラン風の黒い詰襟。
本物の倫太郎にそっくりだが――よく見れば背丈も筋肉のつき方も違う。

「よし……これならバレねぇだろ。倫太郎のフリして依頼に――」
巽は鏡に映った自分に満足げに頷いた。

その時。

「……巽さん」

背後から静かな声が落ちる。
びくりと肩が跳ね上がり、振り向けば――渚がそこに立っていた。
しかも片手には、つややかに磨かれたフライパン。

「……な、渚!? い、いつからそこに……」

渚は目を細め、しかし口調はあくまで丁寧に。
「最初から、ずっとです。――巽さん、休養を命じられたのをお忘れですか?」

「い、いや違うんだ! 俺は大丈夫だし! それに依頼に出るのは倫太郎だって――」

「倫太郎に化けるおつもりだったのでしょう?」
渚の笑顔が少しだけ深くなり、フライパンをくるりと回す。

「……おやつでも作るように見えますか?」

「ひ、ひぃ……っ!!」
巽は思わず両手を上げ、変装用の制服を脱ぎ捨てた。

「す、すみませんっ! 反省しますっ!!」

渚はため息をつき、しかし声は柔らかく戻った。
「……分かればいいのです。どうか休んでください。――元気に戻ってきて、また一緒に戦えるように」

その言葉に、巽は赤面してうなだれる。
「……ああ。分かったよ」

フライパンを持つ渚の横顔は、どこか母親のように優しく、そして絶対に逆らえない迫力を放っていた。


ギルド宿舎の一室

「……なんで部屋に制服が脱ぎ捨てられてんだ?」
倫太郎は眉をひそめて、ベッドの上に投げ出された詰襟を手に取った。

ちょうどその時、背後の扉が開く。
渚が入ってきて、静かに微笑んだ。

「それは――巽さんの“変装道具”よ」

「……は?」
倫太郎はぽかんとした。
「巽が……俺の変装?」

「ええ。“倫太郎ならバレない”と思ったらしいわ」
渚は肩をすくめて、ベッドの端に腰を下ろす。

倫太郎は頭を抱えた。
「……マジかよ。俺って、そんな簡単に真似できるもんじゃないだろ……」

渚はくすりと笑い、彼の顔を覗き込む。
「ふふ……安心して。本物の倫太郎は、すぐ分かるから」

「な、渚……!」
倫太郎の頬が真っ赤になる。

渚は小首を傾げ、真剣な瞳を向けた。
「……それにしても。どうして巽さん、バレないと思ったのかしら。――倫太郎の一番近くにいる私の目をごまかせるわけ、ないのにね」

倫太郎は照れくさそうに笑い、枕に顔を埋めた。
「……なんか、もう恥ずかしすぎて死にそう」

渚はそんな彼の頭をそっと撫で、ふっと柔らかく微笑んだ。

――二人だけの空間で、偽物と本物の違いは、何よりも明確だった。
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