勇者の皆さん、いつ魔王城に着くんでっか? ――戦わんでも始まらん、せやけど請求は止まらん世界で――

角砂糖

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第二章 秘宝探しのため、更に遅延の危機

第十二話:風影の灯、デモやんについて共有する

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 エルディア村の夜。

 風影の灯の面々は、囲炉裏を囲んで湯気の立つ鍋をつついていた。
 話題は――先日、村に現れた黒服の魔族、デモやんのことだった。

「……というわけで、ミナトが“勇者扱い”されて泣きそうになっていたのです。」
 穏やかな声で説明したのはレーア。
 その隣では、ミナトが小さく肩をすくめていた。

「ぼ、ぼく……ただ通りかかっただけなのに……。
 あの人、いきなり“延滞や延滞や”って叫ぶんだもん……。」
「ええ、しかも“説明会ですぅ!”とか言ってたわね。」
 月影の声は静かだが、明らかに温度が低い。

 モモタロウが首をかしげた。
「で? そのデモやんってのは、魔王の部下なんだろ? なんでミナトが標的に?」
「……元・勇者パーティだから、だと思う。」
 ミナトは苦笑する。
「“勇者関係者=請求対象”らしくて……。」
「えぇ……雑ゥ……!」
 モモタロウが鍋の具を取りながら呆れた。

 月影は湯飲みを置き、静かに息をついた。
「……あの時も、あの子を泣かせたのはただの誤解。
 でも“子どもに請求”なんて言葉を口にした時点で――私は許せなかったの。」
「姐さん、怒ってましたもんね……。」
 モモタロウが身をすくめる。

 レーアが端末を開き、データを映す。
 画面には“勇者パーティ進行状況報告(未完)”のログ。
「……彼ら、まだ魔王城に着けていないようです。」
「やっぱりな。」
 モモタロウが箸を止めた。
「勇者が遅れに遅れてるせいで、魔王の方が痺れ切らして取立て始めたんだろ?
 ……もう何の物語か分かんなくなってきたな。」

「“勇者ローン”という概念を初めて聞いた時点で混乱していましたが、
 どうやら魔王自身も暇すぎて“会いたい”という感情を経理に変換したようです。」
 レーアの分析に、全員が顔を見合わせた。
「会いたいを経理に変換って……どういう心理構造だよ……。」
「多分、孤独を言葉にできなかっただけなのね。」
 月影がふっと微笑む。
「……けれど、方法が完全に間違ってるわ。」

 その時、モモタロウがぽつりと呟いた。
「てかさ……そのデモやんって、なんで関西弁なんだ?」
「え?」
「魔王もだけど、あいつら全員“なんで関西弁”なんだよ。
 あっちの世界、関西あるの?」

 全員、数秒沈黙。
 ミナトが真顔で答えた。
「……多分、読んだ本の影響。」
「本?」
「“借金皇帝”っていう古い本が、魔界で流行ってるらしい。」
「文化汚染起こしてるじゃねぇか……!」

 笑いがこぼれ、空気がやわらぐ。
 月影もようやく表情を緩めた。
「まあ、言葉なんてすぐには変わらないものよ。」
「だな。口調も性格も、一晩じゃ変えられねぇ。」
 モモタロウが頷く。
「でもまぁ……悪い奴じゃないんだろ? 多分。」

「ええ、多分。」
 レーアが画面を閉じる。
「彼、魔王に怒られながらも、毎回“勇者さんがんばって”って言ってましたから。」

 ミナトが小さく笑った。
「……じゃあ、もう怖がるのやめようかな。」
「えらいわね、ミナトくん。」
 月影が優しく頭を撫でる。
 モモタロウが照れくさそうに言う。
「……次に会ったら、焼き芋でも渡してやるか。魔族だろうが、腹減るだろ。」
「優しいですね、モモタロウくん。」
「いやまぁ……なんか、放っとけねぇっていうか。」

 外では夜風が吹き、焚き火がぱちぱちと弾ける。
 月影が小さくつぶやいた。

「――簡単には変えられないわね、人も、言葉も、物語も。多分。」

 その言葉に、全員が黙ってうなずいた。
 デモやんのことを思い出しながら。
 彼が次に来るとき、きっとこの村はもう、誰も逃げないだろう。
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