異世界宇宙人と天才少年のドタバタ冒険譚

角砂糖

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第二十一話:お前それ、食う前提だったの!?

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ギルドの掲示板に貼られていた新しい依頼――
「沿岸航路物資護送(※魔物注意)」。

報酬は高め。しかし「※魔物注意」の欄には、小さくこう書かれていた。

※ごく稀に巨大イカの出没報告あり

「出たな、“やめとけ系ワード”……」

ミナトが肩をすくめる。

「水上で巨大イカって、もう勝ち目ない気しかしないんだけど……」

月影は静かに依頼票を眺め、ふっと笑った。

「でも、人手不足で困ってるんでしょう? 行くしかないわね」

ミナトが頭を抱えかけたその時だった。

「受ける。即決」

レーアがすでに装置を開きながら、真顔で宣言していた。

「決断早いなおい!?」

「深海大型種の実態データ、未収集。
動作記録・戦闘挙動・味の構成成分、全て未知。よって必要」

「最後!! 今“味”って言った!!?」


数日後。積荷船、出航。


沿岸の積荷船に乗り込んだ三人。
薄曇りの空、穏やかな波。だが、周囲の冒険者たちはどこか浮かない表情だった。

「なあ……まさかとは思うけど、やっぱアレ来るのかな……」

「だってよ、あの“触手だけで船三隻沈めた”って噂のやつだぞ?」

「俺たちの装備、海水対応じゃないんだけど……」

誰もが忌まわしい巨大イカの登場を警戒していた。

が――「風影の灯」の三人だけは。

「……来たら来たで、まあ……うち、対応力高いしな」

「逃げ場のない環境こそ、落ち着いて対処すればいいのよ」

「問題ない。全力で迎撃と試食、両立可能」

「試食言うなああああああ!!」



波間に現れた巨大な影。触手が水面を叩いた瞬間――

「敵性反応、確定。迎撃モード、最大出力」

レーアが跳躍、空中で光輪展開。
海上に魔導陣が走り、次々と撃ち込まれる封印弾と電磁干渉網。

「ちょ、ちょっと!?展開早くない!?俺らまだ剣すら抜いてないんだけど!!」

「……イカは未知の部類だから。きっと“燃える”のよ」

そして十数分後――

イカ、海面に撃沈。

触手はすばやく回収され、すでにレーアは鍋と計測器を準備していた。


船室にて、簡易調理具の上でじゅう、と香ばしい音が立つ。

「……おぉ……なんか旨そうな匂いしてきた……?」

ミナトが近づくと、そこにはバターと香草で炒められたイカの触手が、絶妙な焼き色を纏っていた。

「塩分は海水由来。火入れ3分20秒、中心温度約65度。調理適正:極良」

「なんで現場で分析済みなの!?」

月影は一口、静かに味わう。

「……これは、今夜は白ワインの香りを添えたほうが良さそうね」

ミナトは一切れつまんで口に入れ、思わず椅子にのけぞる。

「うわ、柔らかっ!?うまっ!? てか、巨大イカってこんな美味いの!?」

「海の恵み、合理的に活用中」

「だからって、初回からフルコース出すな!!」



こうして、「風影の灯」の船上護衛依頼は、
イカ撃退と食材研究の両立という結果に終わった。

報酬はきっちり受け取りつつ、
帰還後、三人は全会一致でこう記した。

【イカ:危険ではあるが、非常にうまい。再戦価値あり】
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