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第三十五話:これが……うちの“通常運転”なんだよな 後編
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「……町のすぐ隣が、朝起きたら畑になってるとかさ……なんなのもう……」
夕食を囲みながら、ミナトが箸を持つ手を止めてぼやいた。
「もともと荒地だったから問題はないはずよ? 耕地としては適正だったわ」
レーアが淡々と答える。
「いや、そうじゃなくて! “文明の進行速度”がおかしいの! 一夜で畑どころか“米文化”が構築されてるのおかしいから!」
「ふふ……でも、そういう日もあるわ」
月影はいつものように微笑んで受け流す。
「で、今日の夕飯は……?」
「――カツ丼です」
「カツ丼!?!?!?」
ミナトの箸が宙で止まる。
蓋を開けた丼から立ちのぼる、甘辛い出汁の香りと衣の香ばしさ。玉子のとろみが、まさに“日本の味”。
「モモタロウの言ってた“おいしいもの”を再現した。
材料調整と食感シミュレーションで、最適に近づけたと思う」
レーアは静かに語るが、その表情はわずかに誇らしげだった。
「いただきます……って、うまっ!? 甘いのにしょっぱくて、ご飯進むっ!!」
ミナトは最初の一口で目を見開き、
月影もまた、「……これは、初めての味ね」と感心したように頷いた。
「ヒーローにとっての味覚文化……興味深い」
「いや、文化じゃなくて“カツ丼”な!!」
突っ込むミナトだったが、その口は止まらず、気づけば丼は空になっていた。
⸻そして次の日。⸻
朝――。
ミナトが目をこすりながら外に出ると、町の裏手に妙な違和感を覚えた。
……なんだか、昨日よりも金属音が多い。
「……まさかな……」
おそるおそる丘を越えたミナトの目に飛び込んできたのは――
大地を耕す、3機の魔導兵器。
「――三機になってるーーーーッッ!!!??」
畑の中央には、いつもの《あぐり壱号》。
その両脇には、明らかに同系統の新機体が左右対称に展開。
左の機体には脱穀ユニット、右の機体には苗植え用のサポートアーム。
いずれも律動的に作業を進めており、すでに地形の区画はさらに整備されていた。
「型式更新完了。《あぐり弐号》《あぐり参号》、稼働良好」
背後から現れたレーアが、当然のように説明する。
「ちょ、ちょっと待て!? 増やしたの!? どこから……!?」
「昨日回収していた遺構の残骸、再構築済み。
動力コアは旧型魔導炉を転用。損傷の激しい個体は分解して予備パーツとして保管中」
「……え、それって昨日のうちに?」
「Yes」
「速ッ……ていうかもう畑拡張してるし!」
ミナトの視線の先には、「第二区画:水田予定地」と書かれたレーア自作のタブレット。
畑の端には、もう水路まで掘られていた。
⸻
そこへのんびりとモモタロウが現れる。
「よう。あれ? また増えてね……?」
苗箱を抱えながら、月影が静かに微笑む。
「そうなのよ。三機体制で土質ごとに作業分担。
……もはや、ちょっとした農業ギルドね」
「やば……オレもうこれ、畑のヒーローじゃね!?」
「違う」
ミナトとレーアの即ツッコミが同時に飛ぶ。
⸻
そしてその日から――
ミナトの報告書には、新たな記録が追加されることとなった。
【追加記録】
■農耕型魔導兵器《あぐり壱号》《あぐり弐号》《あぐり参号》、稼働中。
■レーア曰く「これ以上の拡張は効率低下のため予定なし(たぶん)」。
《あぐりシリーズ》運用記録(風影の灯 所有) 多少追記あり
⸻
名称:AGR-01《あぐり壱号》
改造者:レーア
使用目的:開墾による自給自足支援(耕地作成・整地・水路整備)
補足:初号機にして中核機。古代魔導兵器の基幹部を解析・改修して実用化。
⸻
名称:AGR-02《あぐり弐号》
改造者:レーア
使用目的:脱穀・収穫・乾燥処理対応
補足:旧型戦闘ユニットを改造。攻撃装備の代わりに精密脱穀ドラムを搭載。大型手甲型ユニットを“米袋搬送アーム”として転用。
⸻
名称:AGR-03《あぐり参号》
改造者:レーア
使用目的:苗植えサポート・水撒き制御・温度監視
補足:小型索敵兵器の内部制御ユニットを応用。高精度の苗間調整と土壌湿度のリアルタイム測定機能を持つ。
夕食を囲みながら、ミナトが箸を持つ手を止めてぼやいた。
「もともと荒地だったから問題はないはずよ? 耕地としては適正だったわ」
レーアが淡々と答える。
「いや、そうじゃなくて! “文明の進行速度”がおかしいの! 一夜で畑どころか“米文化”が構築されてるのおかしいから!」
「ふふ……でも、そういう日もあるわ」
月影はいつものように微笑んで受け流す。
「で、今日の夕飯は……?」
「――カツ丼です」
「カツ丼!?!?!?」
ミナトの箸が宙で止まる。
蓋を開けた丼から立ちのぼる、甘辛い出汁の香りと衣の香ばしさ。玉子のとろみが、まさに“日本の味”。
「モモタロウの言ってた“おいしいもの”を再現した。
材料調整と食感シミュレーションで、最適に近づけたと思う」
レーアは静かに語るが、その表情はわずかに誇らしげだった。
「いただきます……って、うまっ!? 甘いのにしょっぱくて、ご飯進むっ!!」
ミナトは最初の一口で目を見開き、
月影もまた、「……これは、初めての味ね」と感心したように頷いた。
「ヒーローにとっての味覚文化……興味深い」
「いや、文化じゃなくて“カツ丼”な!!」
突っ込むミナトだったが、その口は止まらず、気づけば丼は空になっていた。
⸻そして次の日。⸻
朝――。
ミナトが目をこすりながら外に出ると、町の裏手に妙な違和感を覚えた。
……なんだか、昨日よりも金属音が多い。
「……まさかな……」
おそるおそる丘を越えたミナトの目に飛び込んできたのは――
大地を耕す、3機の魔導兵器。
「――三機になってるーーーーッッ!!!??」
畑の中央には、いつもの《あぐり壱号》。
その両脇には、明らかに同系統の新機体が左右対称に展開。
左の機体には脱穀ユニット、右の機体には苗植え用のサポートアーム。
いずれも律動的に作業を進めており、すでに地形の区画はさらに整備されていた。
「型式更新完了。《あぐり弐号》《あぐり参号》、稼働良好」
背後から現れたレーアが、当然のように説明する。
「ちょ、ちょっと待て!? 増やしたの!? どこから……!?」
「昨日回収していた遺構の残骸、再構築済み。
動力コアは旧型魔導炉を転用。損傷の激しい個体は分解して予備パーツとして保管中」
「……え、それって昨日のうちに?」
「Yes」
「速ッ……ていうかもう畑拡張してるし!」
ミナトの視線の先には、「第二区画:水田予定地」と書かれたレーア自作のタブレット。
畑の端には、もう水路まで掘られていた。
⸻
そこへのんびりとモモタロウが現れる。
「よう。あれ? また増えてね……?」
苗箱を抱えながら、月影が静かに微笑む。
「そうなのよ。三機体制で土質ごとに作業分担。
……もはや、ちょっとした農業ギルドね」
「やば……オレもうこれ、畑のヒーローじゃね!?」
「違う」
ミナトとレーアの即ツッコミが同時に飛ぶ。
⸻
そしてその日から――
ミナトの報告書には、新たな記録が追加されることとなった。
【追加記録】
■農耕型魔導兵器《あぐり壱号》《あぐり弐号》《あぐり参号》、稼働中。
■レーア曰く「これ以上の拡張は効率低下のため予定なし(たぶん)」。
《あぐりシリーズ》運用記録(風影の灯 所有) 多少追記あり
⸻
名称:AGR-01《あぐり壱号》
改造者:レーア
使用目的:開墾による自給自足支援(耕地作成・整地・水路整備)
補足:初号機にして中核機。古代魔導兵器の基幹部を解析・改修して実用化。
⸻
名称:AGR-02《あぐり弐号》
改造者:レーア
使用目的:脱穀・収穫・乾燥処理対応
補足:旧型戦闘ユニットを改造。攻撃装備の代わりに精密脱穀ドラムを搭載。大型手甲型ユニットを“米袋搬送アーム”として転用。
⸻
名称:AGR-03《あぐり参号》
改造者:レーア
使用目的:苗植えサポート・水撒き制御・温度監視
補足:小型索敵兵器の内部制御ユニットを応用。高精度の苗間調整と土壌湿度のリアルタイム測定機能を持つ。
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