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-選ばれし者-
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--- 私から説明するよ。
ハルはシャーマンなんだよ。
霊能者なんだ。
この辺りでは「おがみ家さん」と言ったりもするねぇ。
長いこと治らない病気が霊障だったりすることもあるんだけれどもね、それを解決したり、生きていく途中で岐路に迷った時にアドバイスをしていたりしていたんだよ。
口コミの評判で、東京や大阪から相談に来る人もいたらしいねぇ。
17、8年前そんなハルの所に、相談に来た人物がいた…。
福岡から旅行で来ていた若い夫婦の子供が旅館からいなくなってしまったんだよ。まだ、4、5歳くらいの男の子だった。
旅館で働いていた人はもとより、近所の人達までが捜したけれどどうしても見つからなくてねぇ。
もう、警察に届けようという矢先に、地元の人の勧めで霊能者のハルに相談に行ったんだ。
霊能者のハルから、子供は山の中の雑木のくぼみにいると言われ、半信半疑で指示された山に行くと本当にそこに夫婦の子供はいたんだ。それも、怪我もなく無事にね。
ハルは子供がいた場所を、旅館からの方角とだいたいの距離まで言い当てていたんだよ。
そう…、その若い夫婦というのが日野直樹と香織。子供がタケルだね。
タケルがひとりで旅館の庭で遊んでいたら怖い女の人に連れて行かれた。でも、すぐにまた別の女の人が来て助けてくれた。と言ったらしいんだ。
ヤトヨミだよ。タケルを連れ去ったのはヤトヨミさ。---
「高千穂でそんな事があったと?」
リサが聞いた。
「それが…、あまり覚えとらんけど。ただ…」
「ただ…?」
「きのうコンビニの駐車場で頭の中をよぎった女は、さっき阿蘇山の上に浮かび上がったヤトヨミと同じ顔だった」
「頭が痛いと言った時やね!?」
「うん」
「ハル姉さんどういうこと?」
キクの問いに、
「おそらくヤトヨミは、タケル君を手先にしようと考えとったんやろうね。手先にしてさまざまな事を探らせようとしていた…」
「手先に…。でも、邪魔をされた!?」
「あっ!!」
タケルの声に突然の声にリサが驚いた。
「どうしたん?」
「ヤトヨミを追い払った女の人は、赤い着物だったような…」
「赤い着物…。それって昨日聞いた話の中の…、山の…かみ!?」
阿比留が信子とキクの二人の顔を見た。
「山の神!」
信子がハッとした。
「そう。ヤトヨミからタケル君を助けたのは山の神」
ハルの口調ははっきりとしていた。
「山の神が俺を助けてくれていた…。でも、どうして…」
「山の神は大の子供好きなんだよ。それに、日頃から自分の事をうやまって祭りをしてくれているこの土地で、子供をさらうようなヤトヨミのことが許されなかったんだろうよ」
ハルから話を聞いたタケルは、自然と胸の前で手を合わせていた。
庭の方で車の止まる音がして、山火事の消化の応援に行っていたリサの父と兄が帰って来た。
「おかえり。どうなった?」
リサの母美登里が立ち上がった。
「うん、なんとか大きか火は消えた。少しくすぶりも残っとったけど、もう消えた頃やろう!」
「よかった。お疲れ様やったね」
美登里が微笑んだ。
「浩二さん、お邪魔しとるよ。大変やったね」
信子もねぎらった。
「お義母さんにも心配してもろうて」
浩二が信子とタケル達に会釈をした。
「浩二さん!!」
浩二と一緒に畜産の仕事をしている仲間が、玄関のドアを開けるのももどかしそうに飛び込んできた。
「おぅ!どうした。あわてて…!また山火事か!?」
「浩二さん!朱雀が…」
息を整えながら続けた。
「朱雀が阿蘇山から出てきた!!」
「朱雀…」
「朱雀が阿蘇山から出てきて、西に向かったらしか」
「西…!?」
「熊本市に行く気たい!」
霊能者のハルが立ち上がった。
ハルはシャーマンなんだよ。
霊能者なんだ。
この辺りでは「おがみ家さん」と言ったりもするねぇ。
長いこと治らない病気が霊障だったりすることもあるんだけれどもね、それを解決したり、生きていく途中で岐路に迷った時にアドバイスをしていたりしていたんだよ。
口コミの評判で、東京や大阪から相談に来る人もいたらしいねぇ。
17、8年前そんなハルの所に、相談に来た人物がいた…。
福岡から旅行で来ていた若い夫婦の子供が旅館からいなくなってしまったんだよ。まだ、4、5歳くらいの男の子だった。
旅館で働いていた人はもとより、近所の人達までが捜したけれどどうしても見つからなくてねぇ。
もう、警察に届けようという矢先に、地元の人の勧めで霊能者のハルに相談に行ったんだ。
霊能者のハルから、子供は山の中の雑木のくぼみにいると言われ、半信半疑で指示された山に行くと本当にそこに夫婦の子供はいたんだ。それも、怪我もなく無事にね。
ハルは子供がいた場所を、旅館からの方角とだいたいの距離まで言い当てていたんだよ。
そう…、その若い夫婦というのが日野直樹と香織。子供がタケルだね。
タケルがひとりで旅館の庭で遊んでいたら怖い女の人に連れて行かれた。でも、すぐにまた別の女の人が来て助けてくれた。と言ったらしいんだ。
ヤトヨミだよ。タケルを連れ去ったのはヤトヨミさ。---
「高千穂でそんな事があったと?」
リサが聞いた。
「それが…、あまり覚えとらんけど。ただ…」
「ただ…?」
「きのうコンビニの駐車場で頭の中をよぎった女は、さっき阿蘇山の上に浮かび上がったヤトヨミと同じ顔だった」
「頭が痛いと言った時やね!?」
「うん」
「ハル姉さんどういうこと?」
キクの問いに、
「おそらくヤトヨミは、タケル君を手先にしようと考えとったんやろうね。手先にしてさまざまな事を探らせようとしていた…」
「手先に…。でも、邪魔をされた!?」
「あっ!!」
タケルの声に突然の声にリサが驚いた。
「どうしたん?」
「ヤトヨミを追い払った女の人は、赤い着物だったような…」
「赤い着物…。それって昨日聞いた話の中の…、山の…かみ!?」
阿比留が信子とキクの二人の顔を見た。
「山の神!」
信子がハッとした。
「そう。ヤトヨミからタケル君を助けたのは山の神」
ハルの口調ははっきりとしていた。
「山の神が俺を助けてくれていた…。でも、どうして…」
「山の神は大の子供好きなんだよ。それに、日頃から自分の事をうやまって祭りをしてくれているこの土地で、子供をさらうようなヤトヨミのことが許されなかったんだろうよ」
ハルから話を聞いたタケルは、自然と胸の前で手を合わせていた。
庭の方で車の止まる音がして、山火事の消化の応援に行っていたリサの父と兄が帰って来た。
「おかえり。どうなった?」
リサの母美登里が立ち上がった。
「うん、なんとか大きか火は消えた。少しくすぶりも残っとったけど、もう消えた頃やろう!」
「よかった。お疲れ様やったね」
美登里が微笑んだ。
「浩二さん、お邪魔しとるよ。大変やったね」
信子もねぎらった。
「お義母さんにも心配してもろうて」
浩二が信子とタケル達に会釈をした。
「浩二さん!!」
浩二と一緒に畜産の仕事をしている仲間が、玄関のドアを開けるのももどかしそうに飛び込んできた。
「おぅ!どうした。あわてて…!また山火事か!?」
「浩二さん!朱雀が…」
息を整えながら続けた。
「朱雀が阿蘇山から出てきた!!」
「朱雀…」
「朱雀が阿蘇山から出てきて、西に向かったらしか」
「西…!?」
「熊本市に行く気たい!」
霊能者のハルが立ち上がった。
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