時空の剣 ~太古の剣を手にする者~

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 -転生-

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 熊本市内は朱雀の出現で混乱状態に陥っていた。
 
 特に熊本城付近は右往左往する人の群で、路面電車もバスも立往生していた。
 車のブレーキ音とクラクションが鳴り響いている。
 朱雀は修復中の熊本城の上空で、燃える翼をゆっくりと羽ばたかせていた。
 タケルと阿比留、リサ達は人混みを分けて熊本城に近づいて行った。
 城の石垣の側には作業中だったであろう重機が乗り捨ててある。

「朱雀は何をする気!?」
 リサが肩で息をしながら朱雀を見ていた。

 ハルが口を開く。
「南阿蘇村の次はこの熊本市を焼こうとしとる!」
 タケル達は、顔を見合わせた。
 誰もが朱雀の行動を防ぐ手だては無いと思っているのだ。

「お城の石垣に人がいるぞ!!」
 誰かが声を上げた。

 熊本城の石垣の上段にいたのはヤトヨミだった。
 ヤトヨミは阿蘇山の雲のスクリーンに映し出された時よりもさらに目と口がつり上がっていて、タケル達がいる方向を見据えていた。
「馬鹿な人間共がゾロゾロと集まりやがって…」
 
「さぁ!朱雀よ!この城から焼き払ってしまえ!!」
 熊本城に指差そうとした時、
 叫び声がした。
「やめろ-!」
 
ヤトヨミは赤く怪しく光る目でにらみつけた。
 人混みの数歩前に小学生の低学年らしき男の子が立っていた。
「やめろ!バケモノ!これ以上熊本城を壊すな!」
 小さい手で握りこぶしを作り震わせていた。
 ヤトヨミはその姿に、片方だけ口端を上げて笑った。
 しかし、目は笑ってはいない。
「バケモノだと!?クソガキ!いいだろう、お前から潰してやる!」
 ヤトヨミが城の石垣から飛び降り、男の子に近づこうとした時だった、
「あいかわらずだな、ヤトヨミ」 
 と、ヤトヨミ名を口にした声は、透き通ってはいたが怒りが含まれた声だった。 

 ヤトヨミは熊本城を振り返った。
 ヤトヨミが振り返った先は、テレビの画面にノイズが起きたように斜めに線が走り、熊本城もその周辺の街並みの空間に十センチ程のすき間が出来ていた。
 
 空間がずれているのだ。
 
 その十センチ程のすき間の奥はまぶしい光の世界で、緑あふれる高い山々と人の手などが入っていない日本の創られた頃の風景が見えていた。
 そして、その空間のひずみの淵に足をかけ、白い衣の裾と艶やかな黒髪をなびかせた女が立っていた。
 左手には剣を持っている。

「卑弥呼!!」
 ヤトヨミは赤くギラつく目を見開いた。
 
「卑弥呼?俺達が学校で習った卑弥呼か!?」
 阿比留はタケルとリサの顔を見た。
「…」
 タケルは横にいたハルの顔を見た。
「卑弥呼…?あれは…」


 ヤトヨミは男の子とタケル達のいる人混みに背を向け、空間のひずみに佇む卑弥呼に近づいて行って見上げた。  
「久しぶりだな…!卑弥呼」

「ヤトヨミ!私の声を忘れたのか?」
「その声…。アマテラス!!」

 --- そうなんだよ、あれはアマテラス。アマテラスは人間には姿を見せないから、卑弥呼の姿を借りてこの世に現れたのさ。ヤトヨミの傍若無人に立ち上がったんだ ---

「あいかわらずだな、ヤトヨミ。まだ懲りてないのか?」
「黙れ!アマテラス!この世は私の物だといい続けているはずだ」  
「この世は誰の物でもない!」
「黙れ!いいか、よく聞けアマテラス。
 人間どもは今まで何をしてきた。
 空を汚して大地を切り刻み、地下には穴を開け、海の水をもまで濁らせ、この私の宝物を破壊してきているではないか!」 
「…」
「私はこの世を一から素晴らしい世界に創り直すのだ。
 それは、私にしか出来ない!
 もうお前や人間どもに好き勝手なことはさせない!」
 ヤトヨミは狂ったようにアマテラスに怒りをぶつけた。
「ヤトヨミ…。たしかに人間たちは発展のために誤った選択をしたのかもしれない。しかしまた、この環境を住みやすい所に作るのも人間だ。私はそう信じて見まもっている」
「笑わせるな!アマテラス。あまいぞ!」
 ヤトヨミは吐き捨てるように言うと、熊本市街地を指差してから左から右へと動かした。
 そして、
「さぁ!朱雀よ!焼きつくせ!焼きつくしてしまうのだ-」

 熊本城の上空でゆっくり翼を羽ばたかせていた朱雀は、ヤトヨミの声に一度高く舞い上がると、市街地に向かって急降下していった。
 

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