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第1章 ラスラ領 アミット編
23 強欲の悪魔マモーン
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「そもそもサンドサーモンはデカいだけの大したことのない魔獣じゃ。
その肉は美味くて有名じゃったし、それを食えるのならばと、アルベルトやわしらも随分と気合いが入っておった。
ちゃちゃっと討伐して今晩のおつまみだ、だなんて軽い気持ちで挑んだのがそもそもの間違いじゃったんじゃ……」
「まさか、アルベルトさんはその戦闘で還らぬ人に……」
「ちょっとお兄ちゃん!」
「いいや。死んでおらんぞ」
「あ、そ、そうなんだ……」
「120歳まで生きたぞ」
「ご長寿だね……」
なんでこの人の周りは皆、異常に長生きなんだよ……
「ごほん。話を続けるぞ。
王都リカリスから徒歩ですぐの場所に、ムング砂漠が広がっておる。
砂漠というのは知っておるじゃろ?
そこでわしらは砂の海に釣り糸を垂らした___」
「砂漠に釣り糸?」
「なんだか違う世界のお話みたいだね」
「サンドサーモンは砂の中を自由に泳ぐ。物理的に考えると無理な話じゃが、魔獣は世の理からは反した行動を取るものじゃ。サンドサーモンも例外ではない。
わしらが並んで釣り糸を垂らして数分経った頃かのう、既にわしはフィッシングには飽きてしまって、ミリヤとのんびりしておった。
ミリヤも適当に魔術で日陰を作ってアルベルトを応援しておったわい。
思い起こせば、あの時が一番幸せな時間じゃったかもしれないな……
その時じゃ、アルベルトの竿が獲物とエンカウントしたのじゃ!
わしらは大喜び!
釣り上げるとまさしくサンドサーモンじゃった!
なんせ巨体じゃから攻撃は浴びせ放題のダメージ負わせ放題。
イージー中のイージー。
だが、忘れちゃならんのが、それを今夜は食べるということ。
わしらはそのサンドサーモンの身が痛むことのないように丁寧に丁寧に急所を狙った」
「それで酒場で一杯?」
「いーや。そうは問屋が卸さなかった」
「???」
「突如として空が暗くなり、ただならぬ気配が辺りを覆った。それはわしらが経験したことのないような重圧じゃった。
すると、あろうことかサンドサーモンが喋りだしたのじゃ。
『ケケケ! かかったな強欲なる人間よ。ケケケ!』。
な、なんじゃ!? わしらは慌てふためいた。
釣り竿も放り投げる始末じゃ。
甲高い声と共に、サンドサーモンの口から真っ黒い煙が漏れ出した。
もっくもくと!」
魔獣が喋るの?
「え? 何が起こったんですか?」
「喋るサンドサーモン……ま、まさか、そのサーモンの口から魔獣が!?」
「勘がいいの。
そのまさかじゃ。なんとサンドサーモンの体内に悪魔が棲み着いていたのじゃ。
その名は〝マモーン〟。鳥の頭に人間の身体を持つ七悪魔の1人じゃ。
マモーンは力こそ弱いが狡猾で、悪魔の元締めであるルシファーの部下じゃった。
奴は弱い。
弱いからこそ戦闘を好まん代わりに、見境なく呪いを付与する厄介な悪魔じゃ。
呪いを掛けるのには驚異的な魔力を要する。
呪いの付与が悪魔の専売特許であるのもそういった理由からじゃ。
そして、その呪いの犠牲になったのが___」
「アルベルトさん……?」
「うむ。アルベルトは呪われた。指先一つで簡単に呪われたのじゃ。
マモーンは不敵な笑みでアルベルトを指差して叫んだ。
無論わしらの言葉とは違う言語じゃ。
あれは悪魔語と言われる物じゃな……まともに聞くと呪われると言われるあれじゃ。
わしらは耳を塞いだ、そして一心不乱に逃げ出した。
そりゃあもう死ぬ気で走った。
力をつけてきたフィリシアでも、さすがに相手が悪魔ともなると戦って勝とうだなんて発想はなかった。
わしとミリヤは最大限に魔術を行使して、ありとあらゆる手段で逃げた。
既にアルベルトの様子はおかしかったんじゃが、構ってやれる余裕もなかった。
そして、マモーンを巻いたとき、あの屈強で物怖じしないアルベルトが、ガタガタと震えているのに気が付いた。
わしらは心配した。だが身体にはなんの影響もない。
じゃが、アルベルトはある声を聞いていたのじゃ。
自分にかけられた呪いの正体を……」
「結局のところ、その呪いの正体はなんだったんですか!?」
サラが興奮気味に問いただす。
すっかりアイリーンの話に夢中だ。
「その呪いとは___」
「呪いとは___?」
「___〝生モノ嫌い〟。一生、生モノが食べられなくなる」
「え???」
生もの……?
「マグロもレバーもミルクも。そしてサーモンも」
「呪いって、それ……だけ……?」
「うむ。それだけじゃ。
でも想像してみよ。お主たちが火を起こすことのできない環境で遭難したら? やっとのことで捕えた獲物に火を通すことができなかったら? ましてやアルベルトは冒険者じゃ。そんな不遇は有ってはならん。致命的じゃ。
あ、ちなみに生野菜は大丈夫じゃった。安心せい」
ちょっと待てよ。
どうしてアイリーンはいま、この時にそんな話をしたんだ?
僕と同じ呪いを持っていた奴を一人知っている。
そう言って回想を始めたんじゃなかったか?
と言うことは……まさか僕の一つ目の呪いって……
「ペリドット。お主に付与された呪いの正体は〝生モノ嫌い〟じゃ!!!」
その肉は美味くて有名じゃったし、それを食えるのならばと、アルベルトやわしらも随分と気合いが入っておった。
ちゃちゃっと討伐して今晩のおつまみだ、だなんて軽い気持ちで挑んだのがそもそもの間違いじゃったんじゃ……」
「まさか、アルベルトさんはその戦闘で還らぬ人に……」
「ちょっとお兄ちゃん!」
「いいや。死んでおらんぞ」
「あ、そ、そうなんだ……」
「120歳まで生きたぞ」
「ご長寿だね……」
なんでこの人の周りは皆、異常に長生きなんだよ……
「ごほん。話を続けるぞ。
王都リカリスから徒歩ですぐの場所に、ムング砂漠が広がっておる。
砂漠というのは知っておるじゃろ?
そこでわしらは砂の海に釣り糸を垂らした___」
「砂漠に釣り糸?」
「なんだか違う世界のお話みたいだね」
「サンドサーモンは砂の中を自由に泳ぐ。物理的に考えると無理な話じゃが、魔獣は世の理からは反した行動を取るものじゃ。サンドサーモンも例外ではない。
わしらが並んで釣り糸を垂らして数分経った頃かのう、既にわしはフィッシングには飽きてしまって、ミリヤとのんびりしておった。
ミリヤも適当に魔術で日陰を作ってアルベルトを応援しておったわい。
思い起こせば、あの時が一番幸せな時間じゃったかもしれないな……
その時じゃ、アルベルトの竿が獲物とエンカウントしたのじゃ!
わしらは大喜び!
釣り上げるとまさしくサンドサーモンじゃった!
なんせ巨体じゃから攻撃は浴びせ放題のダメージ負わせ放題。
イージー中のイージー。
だが、忘れちゃならんのが、それを今夜は食べるということ。
わしらはそのサンドサーモンの身が痛むことのないように丁寧に丁寧に急所を狙った」
「それで酒場で一杯?」
「いーや。そうは問屋が卸さなかった」
「???」
「突如として空が暗くなり、ただならぬ気配が辺りを覆った。それはわしらが経験したことのないような重圧じゃった。
すると、あろうことかサンドサーモンが喋りだしたのじゃ。
『ケケケ! かかったな強欲なる人間よ。ケケケ!』。
な、なんじゃ!? わしらは慌てふためいた。
釣り竿も放り投げる始末じゃ。
甲高い声と共に、サンドサーモンの口から真っ黒い煙が漏れ出した。
もっくもくと!」
魔獣が喋るの?
「え? 何が起こったんですか?」
「喋るサンドサーモン……ま、まさか、そのサーモンの口から魔獣が!?」
「勘がいいの。
そのまさかじゃ。なんとサンドサーモンの体内に悪魔が棲み着いていたのじゃ。
その名は〝マモーン〟。鳥の頭に人間の身体を持つ七悪魔の1人じゃ。
マモーンは力こそ弱いが狡猾で、悪魔の元締めであるルシファーの部下じゃった。
奴は弱い。
弱いからこそ戦闘を好まん代わりに、見境なく呪いを付与する厄介な悪魔じゃ。
呪いを掛けるのには驚異的な魔力を要する。
呪いの付与が悪魔の専売特許であるのもそういった理由からじゃ。
そして、その呪いの犠牲になったのが___」
「アルベルトさん……?」
「うむ。アルベルトは呪われた。指先一つで簡単に呪われたのじゃ。
マモーンは不敵な笑みでアルベルトを指差して叫んだ。
無論わしらの言葉とは違う言語じゃ。
あれは悪魔語と言われる物じゃな……まともに聞くと呪われると言われるあれじゃ。
わしらは耳を塞いだ、そして一心不乱に逃げ出した。
そりゃあもう死ぬ気で走った。
力をつけてきたフィリシアでも、さすがに相手が悪魔ともなると戦って勝とうだなんて発想はなかった。
わしとミリヤは最大限に魔術を行使して、ありとあらゆる手段で逃げた。
既にアルベルトの様子はおかしかったんじゃが、構ってやれる余裕もなかった。
そして、マモーンを巻いたとき、あの屈強で物怖じしないアルベルトが、ガタガタと震えているのに気が付いた。
わしらは心配した。だが身体にはなんの影響もない。
じゃが、アルベルトはある声を聞いていたのじゃ。
自分にかけられた呪いの正体を……」
「結局のところ、その呪いの正体はなんだったんですか!?」
サラが興奮気味に問いただす。
すっかりアイリーンの話に夢中だ。
「その呪いとは___」
「呪いとは___?」
「___〝生モノ嫌い〟。一生、生モノが食べられなくなる」
「え???」
生もの……?
「マグロもレバーもミルクも。そしてサーモンも」
「呪いって、それ……だけ……?」
「うむ。それだけじゃ。
でも想像してみよ。お主たちが火を起こすことのできない環境で遭難したら? やっとのことで捕えた獲物に火を通すことができなかったら? ましてやアルベルトは冒険者じゃ。そんな不遇は有ってはならん。致命的じゃ。
あ、ちなみに生野菜は大丈夫じゃった。安心せい」
ちょっと待てよ。
どうしてアイリーンはいま、この時にそんな話をしたんだ?
僕と同じ呪いを持っていた奴を一人知っている。
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