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第1章 ラスラ領 アミット編
38 不穏の始まり
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「おいそこの男!! 止まれ!!」
シルビアさんが叫んだが、止まれと言われて止まる奴がいるわけもなく、男はこちらに気が付いてスピードを上げた。
その反応で男が何らかの悪事を働いていることが明白になった。
「先回りします! フィーナ!」
『OK! 行くよ! ウインド!』
フィーナの魔術に合わせて僕は地面を強く蹴り、飛び上がった。
全身に風を浴びてふわりと浮くと、周囲の建物の壁を蹴り上げて屋根の上へと着地した。
タタンッ
「へぇ、やるじゃねえかペリドット! 俺だって」
シルビアさんは両足を魔力で強化して一気に地面を踏み込んだ。
ドンッッ
恐るべきスピード。
瞬く間に男の数歩手前まで跳躍し、伸ばした手は、男の背中に今にも触れそうだ。
だが男も黙って捕まってはくれない。
近くに並んでいたゴミ箱や看板なんかを見栄えなく倒しては、シルビアさん達の行く手を拒む。
ガシャガシャっっ
「うわっ! 危ねぇ!」
そんな中セブさんは、近くに転がっていた空き瓶を拾うと、男に向かって全力で投球した?
空き瓶は目にも止まらぬ速さで回転し、シルビアさんの肩をかすめて更に突き進むと、男の後頭部に直撃した。
「グへっ」
男はヒキガエルのような声を上げると、派手に地面に顔から倒れた。
大きな袋が傍らに転がる。
袋は内容物と共に転がっては止まった。
僕は男の進行方向に降り立つと、挟み撃ちの要領で行く手を阻み、わざとらしく凄んで見せる。
「……大人しくするんだ。僕の闇魔術を食らいたくなければね」
(目くらましのスモークしか出せませんが)
男は焦って逃げようとしたが、僕たち三人から囲まれて、今や逃げ場はない。
「ち、違うんだ! 俺は言われたとおりにやっただけなんだ!」
何やら弁解を始めた男を横目に、セブさんは男の傍らにある大きな袋に駆け寄ると、中身を開けて確かめようとした。
固く結ばれた縄をナイフで切ると、袋の中には小さな女の子の姿があった。
生きている女の子だ。
その女の子は口に猿ぐつわを噛まされ、両手両足共にロープで縛られている。
少女の柔らかな肉体には到底似つかわしくないロープが、その体に痛々しく食い込んでいる。
僕は一瞬目を背けたくなった。
綺麗な身なりと高価そうな髪飾りから、少女がただの町娘ではないことが誰にでもわかった。
「んー! んー!」
少女の猿ぐつわを外してやると、その少女は大声で喚いた。
「あんたただじゃ置かないんだからね!! パパが何者かわかってやってるんでしょうね!?」
「……う、ぐう…違うんだ」
……よかった。
こんなに危険な目にあっても喚き散らす元気があるだなんて……僕は少し感心してしまった。
「誘拐か!? てめぇ! こんな少女を袋に詰め込んで、何が違うだ!?」
シルビアさんは剣を抜いて男に構えた。
演技めいたものを感じたが、初対面の男に対してはこのぐらいの態度が効果的なのかもしれない。
「ま、待ってくれ!! 俺は、ある人から頼まれて!」
セブさんが男の前に立つ。
「待つんだシルビア。おいお前、ある人とは誰のことだ? 返答次第じゃ命は無いと思え」
今度はセブさんが凄む。
迫真だ。
さすがは獣人とのハーフ、威圧感は半端じゃない。
「か、勘弁してくれ! 俺が消されちまう!」
男の顔色はすっかりと蒼白していた。
「分かった。ならば本部に連行だ。あそこには拷問好きのイカレたやつらが多い。まあ、俺たちはお前がどうなったって構いはしないがな」
「分かった! 言うよ! だから逃がしてくれないか?」
「おいおい、貴様は自分の立場がまだよく理解できていないようだな。まさか、自分がまだ捕まらないだなんて思ってるんじゃないか?」
なんてことだ。
セブさんは演技派だった。
というかなんというか、この状況をセブさんは楽しんでいるようにも見える。
そう思ってシルビアさんの方を見るとやっぱり彼もニヤニヤしていた。
目の前の男と僕との温度差は果てしない。
「言うよ……だが死にたくはねぇ。だから約束してくれ! 俺を誰も来れないような独房に入れてくれ! しくじったと知られたら間違いなく消されちまう!」
この男の必死さ、ただ事ではない。
「わかりました。約束しましょう。だけど貴族に対する誘拐行為は重罪です。数年は出て来れないことは覚悟してください」
「おいペリドット、こんな奴の要望を聞いてやる必要はねえんだぜ?」
「こんなに怯えて、何かおかしいと思いませんか? 身の安全は約束します。その代わり、首謀者の名前を言うんです」
「ああ、感謝するぜ……首謀者はあんた達のよく知る人物だよ……名前は___」
男が名前を口にしようとしたその瞬間、異様な音が聞こえてきた。
バキバキバキ……
その頭部は一瞬にして異常なまでに膨れ上がると、次の瞬間逆に小さく縮んだ。
「!!!」
___まずい。
僕は反射的に少女の目を手で塞いだ。
そして、縮みきった頭部は、熟したトマトのように音もなく破裂してしまった。
破裂……しただと……?
何が起こった?
誰の仕業なんだ?
ここには僕たちと男、そして少女しか居ないはずだろ
僕たちは、予測できなかった事態の発生に、しばらくの間その場に立ち尽くした。
シルビアさんが叫んだが、止まれと言われて止まる奴がいるわけもなく、男はこちらに気が付いてスピードを上げた。
その反応で男が何らかの悪事を働いていることが明白になった。
「先回りします! フィーナ!」
『OK! 行くよ! ウインド!』
フィーナの魔術に合わせて僕は地面を強く蹴り、飛び上がった。
全身に風を浴びてふわりと浮くと、周囲の建物の壁を蹴り上げて屋根の上へと着地した。
タタンッ
「へぇ、やるじゃねえかペリドット! 俺だって」
シルビアさんは両足を魔力で強化して一気に地面を踏み込んだ。
ドンッッ
恐るべきスピード。
瞬く間に男の数歩手前まで跳躍し、伸ばした手は、男の背中に今にも触れそうだ。
だが男も黙って捕まってはくれない。
近くに並んでいたゴミ箱や看板なんかを見栄えなく倒しては、シルビアさん達の行く手を拒む。
ガシャガシャっっ
「うわっ! 危ねぇ!」
そんな中セブさんは、近くに転がっていた空き瓶を拾うと、男に向かって全力で投球した?
空き瓶は目にも止まらぬ速さで回転し、シルビアさんの肩をかすめて更に突き進むと、男の後頭部に直撃した。
「グへっ」
男はヒキガエルのような声を上げると、派手に地面に顔から倒れた。
大きな袋が傍らに転がる。
袋は内容物と共に転がっては止まった。
僕は男の進行方向に降り立つと、挟み撃ちの要領で行く手を阻み、わざとらしく凄んで見せる。
「……大人しくするんだ。僕の闇魔術を食らいたくなければね」
(目くらましのスモークしか出せませんが)
男は焦って逃げようとしたが、僕たち三人から囲まれて、今や逃げ場はない。
「ち、違うんだ! 俺は言われたとおりにやっただけなんだ!」
何やら弁解を始めた男を横目に、セブさんは男の傍らにある大きな袋に駆け寄ると、中身を開けて確かめようとした。
固く結ばれた縄をナイフで切ると、袋の中には小さな女の子の姿があった。
生きている女の子だ。
その女の子は口に猿ぐつわを噛まされ、両手両足共にロープで縛られている。
少女の柔らかな肉体には到底似つかわしくないロープが、その体に痛々しく食い込んでいる。
僕は一瞬目を背けたくなった。
綺麗な身なりと高価そうな髪飾りから、少女がただの町娘ではないことが誰にでもわかった。
「んー! んー!」
少女の猿ぐつわを外してやると、その少女は大声で喚いた。
「あんたただじゃ置かないんだからね!! パパが何者かわかってやってるんでしょうね!?」
「……う、ぐう…違うんだ」
……よかった。
こんなに危険な目にあっても喚き散らす元気があるだなんて……僕は少し感心してしまった。
「誘拐か!? てめぇ! こんな少女を袋に詰め込んで、何が違うだ!?」
シルビアさんは剣を抜いて男に構えた。
演技めいたものを感じたが、初対面の男に対してはこのぐらいの態度が効果的なのかもしれない。
「ま、待ってくれ!! 俺は、ある人から頼まれて!」
セブさんが男の前に立つ。
「待つんだシルビア。おいお前、ある人とは誰のことだ? 返答次第じゃ命は無いと思え」
今度はセブさんが凄む。
迫真だ。
さすがは獣人とのハーフ、威圧感は半端じゃない。
「か、勘弁してくれ! 俺が消されちまう!」
男の顔色はすっかりと蒼白していた。
「分かった。ならば本部に連行だ。あそこには拷問好きのイカレたやつらが多い。まあ、俺たちはお前がどうなったって構いはしないがな」
「分かった! 言うよ! だから逃がしてくれないか?」
「おいおい、貴様は自分の立場がまだよく理解できていないようだな。まさか、自分がまだ捕まらないだなんて思ってるんじゃないか?」
なんてことだ。
セブさんは演技派だった。
というかなんというか、この状況をセブさんは楽しんでいるようにも見える。
そう思ってシルビアさんの方を見るとやっぱり彼もニヤニヤしていた。
目の前の男と僕との温度差は果てしない。
「言うよ……だが死にたくはねぇ。だから約束してくれ! 俺を誰も来れないような独房に入れてくれ! しくじったと知られたら間違いなく消されちまう!」
この男の必死さ、ただ事ではない。
「わかりました。約束しましょう。だけど貴族に対する誘拐行為は重罪です。数年は出て来れないことは覚悟してください」
「おいペリドット、こんな奴の要望を聞いてやる必要はねえんだぜ?」
「こんなに怯えて、何かおかしいと思いませんか? 身の安全は約束します。その代わり、首謀者の名前を言うんです」
「ああ、感謝するぜ……首謀者はあんた達のよく知る人物だよ……名前は___」
男が名前を口にしようとしたその瞬間、異様な音が聞こえてきた。
バキバキバキ……
その頭部は一瞬にして異常なまでに膨れ上がると、次の瞬間逆に小さく縮んだ。
「!!!」
___まずい。
僕は反射的に少女の目を手で塞いだ。
そして、縮みきった頭部は、熟したトマトのように音もなく破裂してしまった。
破裂……しただと……?
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誰の仕業なんだ?
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