Head or Tail ~Akashic Tennis Players~

志々尾美里

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第143話 最高に器用なやつ

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 半ば強引に参加した賭けテニスで、アドは立て続けに三名の選手を破った。

「いや~、アンタやるじゃん!」
「三人連続ベーグルなんて、ウチの賭けテニスレモーラで初めて見た!」
「最近ちょっとマンネリ気味だったから、良いテコ入れになったぜ」

 サマンサのほか、賭けテニスの運営メンバー数名がアドの試合っぷりに熱烈な賛辞を贈る。サマンサもそうだが、彼らは全員が典型的なザ・アメリカン・ヤンキーといった風体で、見た目も態度も何もかも、いちいちオーバーだ。筋骨隆々なスキンヘッドの白人、ドレッドヘアーでやや肥満気味の黒人、長い舌でナイフを舐めるのが似合いそうなヒスパニック系の痩せた小男など、随分とバラエティに富んでいる。見た目こそ反社会的風だが、態度は実にフレンドリーだ。試合を終えたアドはそんな彼らに気に入られ、行きつけだというバーに連れて来られた。遠慮なしに瓶ビールを押し付けられ、アドは若干辟易としながら瓶に口をつける。ハイネケン・ビールを飲むのは初めてではないが、思った以上に苦みを強く感じて顔をしかめてしまう。本来自分が持つ味の記憶や好みと、弖虎の身体を通して入ってくる味覚情報に、何らかの齟齬がありそうだと感じた。

「んで、オマエどっから来たんだ?」
「つかアメリカ人か? それとも旅行者?」
「さっき着てたのは病院の服か? それとも趣味?」
「テニスはいつからやってんだ? どこのアカデミー出身?」
「カラダ細いのに打つ球速いよね。どうやってんの?」
「すっげぇ器用だよなぁ! 最高に器用なアドロイテストテニスだった!」
「よっ! アドロイター! 今日からオメーをアドって呼ぶぜ!」
「いや、多いンだわ。質問がよ。勝手に愛称までつけやがって。別にいいけど」
 不満を口にするアドだが、ビールの味も、質問攻めで暑苦しいぐらいに距離を詰めてくる連中の雰囲気も、意外なほど不快に感じない。どれくらいの期間だったのかは定かではないが、こうして大勢から存在を認知されるのは久しぶりで、そのことがことのほか楽しいのかもしれない。

(にしても、管理者アドミニスの次は最高に器用なやつアドロイターときたか)
 奇しくも『アド』という、つい最近まで名乗っていたものと同じあだ名がつけられたのも、なぜだか不思議と腑に落ちた。未だハッキリ思い出せないが、案外自分の本当の名前は、そのあだ名に近い何かなのかもしれないと思う。体の持ち主である弖虎と自分は別人なのだから、自分が呼ばれる際は『アド』でもいいか、と適当に納得する。

新しい役割・・・・・を意識すンのも癪だしな)
 既に確定している自分のすべき事柄について考えると、複雑な気分になる。他のメンバーはアドの心境のことなど露知らず、仕事終わりの酒を楽しみながらあれやこれやと話に花を咲かせていた。

「でも今日は久々にスカっとしたなー。セミプロ連中のあの顔ったらなかったよ」
 サマンサがアドに話を振る。
 セミプロというのは、アドが相手にした連中のことだろう。

「あン? 気に入らねェ連中だったのか?」
 適当に会話を聞き流していたアドだったが、ふと会話に乗ることにした。なんとなく、今の自分に必要な事柄な気がしたのだ。それに、今ここで関わっている連中との出会いは、恐らくただの偶然ではない。自分のすべきことの足掛かりとして、何か意味を持っているはずだと確信している。

「まぁね。あいつら、マジで態度が気に入らないんだよね」
 サマンサの言葉に他の仲間たちが同調する。

「あたしらが運営してる大会って、もともとは身内でやってたイベントでさ。少しずつ参加者が増えてきたあたりで、これひょっとして金になるんじゃね? ってなってね。外部からも参加者集めて、アマチュアの大会を公営のコートでやってたの。だけど負けたヤツがチクりやがって出禁になってさ。そんな時に、あの改修予定のスタジアムの所有者に声かけられて。本当は転売で儲けようとしてたらしいんだけど、失敗したとかで。少しでも早く稼ぐために、あたしら使って裏のスポーツギャンブルやらせるようになったの。まぁあたしらは割とラクに稼げるから良いんだけど、なんていうか、参加する連中、ほぼプロ選手ヅラしてくるヤツばっかでさ」
 説明しながら、サマンサが愚痴る。

「テニスの試合っていうより、賞金の奪い合いみたいな感じだからね。下部大会でコケて遠征費が赤字になったのを、ワンチャン埋めに来てるヤツばっか来る。確かにテニスのレベルは高いとは思うよ? でも、どいつもこいつも態度は最悪。検査とかが無いから、普段は使わない興奮剤とか使うヤツもいるし、口裏合わせて勝手に八百長するやつとかもいてさ。そのくせ、たまたま表の大会で勝ったりすると、いかにも自分はクリーンな選手です、みたいな感じでさ。ここはアマチュアも出るんだけど、プロになり損なってたセミプロがイキってて、それが面白くないんだよねぇ」
 フーンと、アドは割とどうでもよさそうに相槌を打つ。正直、彼らの事情については全く興味がわかなかった。表であろうが裏であろうが、賞金が出る時点でその奪い合いである構図に変わりはない。出場する選手の態度の良し悪しについても、表舞台であるプロ選手のような人気商売を伴わないのであれば、特に上品さを求められる筋合いはないだろう。ドーピングや八百長に関しては、取り締まる環境が整っていない裏の試合なら無い方がおかしい。もっとも、アマチュア目線で見た時に、強い者が傲慢な振る舞いをしていて気に食わないという主張は、それはそれで理解できるのだが。

「こういう裏の試合ってのは、ここの他にもあンのか?」
「うん、数はそんな多くないけどね」
 地下格闘技であれば、昔から裏家業の人間たちの間で好まれているシノギのひとつとして有名だ。今や表舞台として人気を集めている各種大会も、もともとは非公式・非合法な大会が元であった話はいくらでもある。スポーツ・バブルの影響も強くあるのだろうが、まさか球技でも行われているとは知らなかった。もっとも、その辺りの事情は身体の持ち主である弖虎がよく知っていそうな風ではあるのだが。

「ねぇ、アド。アンタはプロ目指してる選手なの? それとも別?」
 サマンサの問いに、アドはどう答えたものかと考える。
 そして、ゴチャゴチャ考えずストレートにいった。

「ちょっとやることがあってな。テニスに関して。プロを目指してるワケじゃねェが、必要であれば試合には出る。ただチョイとワケアリでよ。下準備が済むまで、しばらくここで稼がせて欲しいンだわ。お望みとあらば、プロ気取りのカス共を蹴散らすぐらいはしてやれる」
 自分たちにも、大なり小なり事情があるせいか、運営のメンバーはアドの抱えているらしい事情について深くは追及してこなかった。それよりも、自分たちが気に入らないと感じている連中を懲らしめてやるというアドの言葉に、頼もしさを覚えたらしい。仲間として受け入れてくれると約束してくれた。

「ところで、アドのやることって、なに?」
 そこについてだけ、サマンサが尋ねてくる。
 その顔には、手伝えることがあるなら手伝うぞという意図が見てとれた。

「あー、そうだな。まずは探し物、かな?」
「探し物?」
 問いかけるサマンサ。他の仲間の視線もアドに集まる。なんだか妙に懐かれたなと、アドは胸中で苦笑いを浮かべる。最初から最後まで全て独りでやろうと思ったが、意地を張っても仕方がない。可能な限り関わらせないように配慮して、頃合いを見てオサラバするかと心に決めておく。

「オメェら『アーキア』って、知らねェか?」


           ★

 深い眠りから目覚めると、自分の部屋に他人の気配を感じる。
 例えるならそういう感覚が近いと、弖虎は思った。

<よゥ、やっとお目覚めか?>

 聞き覚えの無い声だった。
 変声期前の、少し高い少年の声。
 喋り方からして、生意気な雰囲気を感じる。

(……誰だ?)
<あー、それな。そうだよな。そりゃそうだ>
 少年の声は、少しだけバツが悪そうに。しかし、どこか開き直っているように。そもそも、弖虎は今、自分が起きているのか寝ているのか、判然としない。目が覚めた、という感覚はあるが、身体の感覚は無い・・・・・・・・。夢見心地に近い感じはするが、意識はハッキリと覚醒している。

<まァ、なンつーか。オメェにも色々あったように、オレにも色々あるワケよ。ワケアリ者同士、これから仲良くしようぜ。つっても、オメェにその気がねェなら無理にとはいわねェけどよ。とはいえ、こういう成り行きになってる以上、できるだけ協力し合う方がお互いにとって良いと思うンだがな>
(……なに、言ってる? なんの話だ?)
 そう疑問に思った直後、弖虎の意識のなかに、これまでの記憶と情報の洪水が流れ込んできた。日本との試合で、自身に宿したアーキアが原因不明の暴走を起こし、細胞の大半を焼き尽くしたこと。それによって、人格崩壊を起こしかけたこと。そのまま自我共々、命さえ失いかけたこと。それを分かってなお、失っても構わないと、自らの意志で全てを手放そうとしたこと。その間際に、何者かが自分を救ったこと。そして今、自分の身体を自分以外の別の存在が操り、どこかにある狭いアパートの一室でソファに横になっているらしいこと。

(意識が、身体から剥がれた……?)
 沈みゆく船から、救命艇に乗り換えた。例えるならそんなところか。

<自我を保つための緊急措置だな。ぶっちゃけ、オメェの自我はあってもなくても問題無かったっぽいんだが。リピカのやつが余計な手を回して、救っちまった。オメェからすりゃあ、ありがた迷惑な話だろうけどよ。ただまぁ、用が済みゃ元に戻れるかもしンねェぜ? あれこれ諦めるにゃ、オメェはまだ若すぎるだろ。アディショナルタイムだと思って、しばらくそこで自分の人生を見つめ直しててくれや。ついでに、出来ればオメェの知ってることを知ってる範囲で共有してくれると助かるンだがな。ぶっちゃけその必要はねェが、無理やり他人の日記帳を盗み見るような真似は趣味じゃねェ。こっちにはこっちで、一応良心ってモンがあるからよ>

 何が起こっているのかは理解したが、どうしてそうなったのかは判然としない。とはいえ弖虎は今、自分の意識を自覚できる一方で身体からは切り離されているらしい。肉体を通して五感の情報は伝わってくるが、どこか他人事みたいに感じる。離人感覚にも似た不可思議な状態。戸惑いはするが、不快感は無い。世界の全てを、モニター越しで見ているかのようだった。

(目的はなんだよ)
 状況を受け入れるにしても、そこが抜けている。
 それが分かれば、多少なりとも気持ちはすっきりするだろう。
 そう考えて、弖虎は端的に尋ねた。

排除することエリミネートだ>
 少年の声が、端的に告げる。

(はぁ? なにを?)
 反射的に尋ねたが、先ほど頭に入った情報から鑑みれば、自ずと答えは出せる。

<未来の可能性の撹拌が起こる一方で、そこで生じる悪意の苦痛マーラ・ヒンサーの排除だ。ひと言でいえばそれが目的だな。具体的にそれが何なのかは、オメェは身をもって知ってるンじゃねェの?>

 悪意の苦痛。そう言われて、弖虎は腑に落ちた。

(つまりアンタは、テニスの神様の使いっ走りってとこか。テニスなのか、スポーツなのかは知らねぇけど。なるほど、どうやらあのババアも教授ジジイも、人が触れちゃいけない禁忌に立ち入ったってことか。ざまぁねぇな)
 人為的に人間の遺伝子を書き換える生体ナノマシン、アーキア。
 少年がいう悪意の苦痛とは、そのことを言っているんだと弖虎は察した。

<そう考えるのが分かり易いだろうが、それがそのまま正解かどうかは、オレァ知らねェよ。あと、オレァ別に神様の使いっ走りじゃねェ。これでもオメェと同じ人間サマだ。まァオレの場合、オメェと似たような状況で、自分の身体がどこにあるか分からねェンだが。個人的な目的を言うとすりゃ、自分の身体を見つけたいンだが……ま、あンま期待はしてねェ。とっくに焼かれてるか、埋められてるかしてる気がするし>
 発言内容の割に、少年は割とフランクな物言いであっさりと言い捨てる。

(ガキのクセに、随分と物分かりがいいんだな)
<言っとくが、オレァ確実にオメェよりは年上だかンな。敬語使えよ。あァいや、実年齢はってだけだけど。その辺りがチョイと確信がねェっつーか、根拠に乏しいのがなンとも鬱陶しいンだが。ただまァ、もしまともに人生歩んでたら、そろそろイイ歳なンじゃねェかなって気はする>
(色々あやふや過ぎるだろ。人の身体を勝手に使うヤツに敬語なんざ使わねーよ。ったく、余計な真似しやがって。なにがなんだか知らねーけど、テメェらの事情に人を巻き込んでんじゃねーよ)

 苛立たし気に、弖虎は言う。そうだ、せっかく何もかもから解放されるところだったのに。ここにきてまさか、こんなバカみたいな状況になるとは思いもしなかった。正直、何か悪い冗談の続きなのではないかとさえ思えてくる。

<うるせ。文句ならオメェのママに言え・・・・・・・・・

 瞬間、弖虎の認識する世界が真っ赤に染まる。

(テメェに……! なにが分かんだよ……ッ!)
 意識が破裂しそうなほどの激情が、弖虎の中で渦巻く。
 もし身体があって、相手を認識していたなら、力の限り殴り飛ばしていただろう。

<キレてンじゃねェよマザコン野郎が。言ったろ、無理やり他人の日記帳を盗み見るのは趣味じゃねェ。とはいえ、オメェがいつまでも惰眠を貪ってやがるから、こっちの状況をどうにかする必要があったンでな。だから、オメェの事情はあらかた知っちまった。不可抗力なンだよ>

(この……ッ!)
 激情に羞恥心が混じり、上手く言葉を発せない。母親とのことは、弖虎にとって最も触れられたくない部分だ。そのことについて、あろうことかこの正体不明の存在は勝手に把握している。趣味じゃないだのなんだの言っておきながら、既にずかずかと人の内情に土足で踏み込んでいるのだ。不可抗力かどうかなど、知ったことではない。

<落ち着けよ、ったく。親にエロ本見つかったガキじゃねンだから。分かったよ、もう言わねェよ。別にそこをつついてイジメようとは思わねェし、オメェがどういう価値観持ってようがオレにゃ関係ねェからな。けど、こっちとしちゃ筋は通しておきてェンだわ。こンな状況だからな。なにが起こるか分かったモンじゃねェ。オレがやろうとしてることを考えると、肉体の本来の持ち主であるオメェを蔑ろにするワケにゃいかねェのさ。それに、ある意味じゃ、オメェはオレを、そのコンプレックスを粉砕するのに利用できるかもしれねェだろ? なンたって、オメェをモルモット扱いした連中を片っ端からブチのめす・・・・・・・・・・ことになるンだからな>
(……っ)

 弖虎の心に、その言葉が滑り込んでくる。

<オメェだって、別に心の底から死にたかったワケじゃねェだろ? それ以外に自分がラクになる方法が見つけられなかっただけのハズだ。それどころか、連中のモルモットに成り下がらざるを得ない状況に追い込まれてただけじゃねェか。もし、もっと前の段階で、連中に反旗を翻す手段と機会があったなら、オメェはどうしてたよ?>

 もし、仮に。弖虎が自分の意志で、もっと自由に行動できていたら。
 アーヴィングをはじめとするリアル・ブルームや、GAKSOガクソに従ったか?
 或いは、自分の夢を息子に押し付ける母親の期待に、応えようとしただろうか?

<オメェ、自分も道を踏み外して、もう戻れねェと思ってンだろ? 今更真っ当に生きようったって、もう手遅れだって、そう思ってンだろ?>
 知った風なクチをきくなと思いながらも、弖虎は反論しない。

<本当なら、オメェはあの時くたばったか、自分が自分じゃなくなって、全てを放り投げてそれで終われてたかもしれねェ。が、残念ながらそうならなかった。それがオメェの意志であるかどうかは関係ねェ。例えそれが神だの悪魔だの運命だのの悪戯であろうともだ。偶然も必然も関係ねェ。そンなモン、ヒトが時代も、場所も、環境も選べずに生まれてくるのと同じだ。重要なのは、オメェにはまだ、意志がある・・・・・ってことだ>

 今のこの状況を「意志がある」などと前向きに捉えられるほど、弖虎は楽観的ではない。身体の自由はきかず、得体の知れない少年の声をした何者かが勝手に居座り、訳知り顔で偉そうに説教を垂れているのだ。弖虎は今の自分の状況をそう解釈している。しかしその一方で、全てを投げ捨てるより他なかった、あのどうしようもない状況からは解放されている。そのことだけは確かだった。

<別に投げたきゃ投げてもイイぜ。意識を閉じて、いっそ全てを見ないフリすりゃイイ。身体はちょいとオレがしばらく借りることになるが、まァ恐らくそう長くはかからずに終わるだろうよ。そしたら、晴れてこのクソッタレな現実ともお別れできる。だが>

 少年の声に選択を迫るような気配はない。
 あくまで、弖虎に採れる選択肢を提示するのみ。

<オメェがその気なら、基本的にオレはオメェの意志に沿うカタチで行動する。曲がりなりにも、オメェはこの身体の正当な持ち主サマだからな。オレにゃオメェの意志を尊重する義務があらァ。癪だけどよ。それに、オメェは色々と複雑な事情を知ってるらしいが、全てじゃない。大勢の人間が関わるスポーツという世界の裏側で、クソッタレな悪巧みをしてる連中がいて、オメェはその巻き添えを食った。実際のところ、オレも似たようなモンだ。だからまァ、オレ等は似た者同士なのさ。少なくともオレァ敵じゃねェ。もしオメェがオレに協力してくれるっつーンなら、>

 少年は言葉を切って、少し間を取る。
 そして、ことさら露悪的に言った。

<ナメた真似しくさった連中のケツに、しこたま蹴りブチかましてやらァ>

 その言い草に、弖虎は思わず吹き出してしまう。自分も口は良い方ではないという自覚のある弖虎だが、この少年ほどではない。セリフだけは一丁前なクセに、声が少年のようだから、妙に迫力に欠ける。それでいて、彼が本気でそう思っていることが不思議と伝わってくるのだ。その妙なバランス加減に毒気を抜かれ、自分の状況を深刻に捉えていたのがバカバカしくなってきてしまった。いずれにせよ、なにをどうするにしても、判断材料が足らない。少年がいうように、意識をシャットアウトしようと思えばできるのだろうということは、不思議と感覚としてわかる。だが、今の弖虎に、そんな気はまったくなかった。

(なーんか、乗せられてる気がしねぇでもねぇが、今はいいや)

 そういって、弖虎は小さく溜息を吐く。

(ヌルい蹴りだったら、許さねぇぞ)
<オォ、ケツが四つに割れるヤツ、かましたらァ>
 応じた少年の言葉に短く笑ってから、最後に付け足した。

(期待しとくぜ)

 そのセリフを、共闘の合意とした。

                                続く
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