その声が聞きたい

午後野つばな

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SS「クリスマスの夜に」

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「なんか狼さんとかね、あと龍神さまみたいな人もいたよ」
 さとりの言葉に、そうすけはぎょっとした。
「龍神って、神さまのことか!?」
「うん」
「だ、大丈夫だったのか!?」
『まさかさとりに何か害を与えるようなことは……!?』
 腕を痛いほどにつかまれる。さっきのふわふわした感情はどこかに消えていて、そうすけの心の中はさとりを心配する気持ちでいっぱいだった。
「だいじょうぶ。そういうんじゃないみたい」
「本当に?」
 さとりがこくんと頷くと、そうすけは見るからにほっとしたようだった。
『そうか、よかった……』
 さとりは胸の中を、何か甘いものできゅうん締め付けられた。
 これは何だろう……?
 さとりは胸に手を当て、自分の感情を推し量ろうとする。なんだか心臓がドキドキしているみたい。
 ふいに、そうすけにじっと見つめられて、さとりはドキッとする。そうすけの目は何かを企んでいるようだ。
『……まあ、傍で見ている限りでは、みんなデレてそんな余裕もないみたいだったけどな』
 そうすけ……?
「なあ、さとりは会場にいる人間たち考えていることがわかったんだろう?」
「う、うん……」
 さとりはドキドキした。そうすけはいったい何を聞きたいのだろう?
『あいつら、どうせ帰ったらコスチュームプレイをするか、サンタコスを脱がせることしか頭にないだろうに』
「もちろん、俺の心の声も聞こえたよな?」
 そうすけは、男らしさの滲む艶やかな笑みを浮かべている。
『あいつらと俺、どっちの方がエロいこと考えているかくらべてみようか?』
 さとりはきゅっと唇を噛み締め、うつむいた。耳のあたりまでがかあっと熱くなる。心臓はドキドキして、はちきれそうだ。
「ーーなあ、俺のサンタさん。俺に特別なプレゼントをくださいな」
 さとりはハッとしたように顔を上げた。「くりすます」とは、何か特別なプレゼントが必要だったのだろうか。
 何も用意をしていなかったさとりは、落ち着かなさげにきょろきょろと部屋の中を見渡す。
 どうしよう、そうすけに何もプレゼントを準備していない。せっかくの「くりすます」なのに……。
 さっきまで楽しかった気持ちが嘘のようにしおれてしまう。そのとき、そんなさとりの気持ちをすっかりお見通しなそうすけが、にっこり笑って両手を広げた。
『……俺に特別なプレゼント、くれるだろう?』
 胸がぎゅっと苦しくなる。こんなおいらでもいいなら、いくらだってあげる。そうすけにあげる。
 さとりは膝立ちになったまま、おそるおそるそうすけに近づいた。
「さとり?」
 それから驚いているそうすけの首にきゅっと腕をまわすと、恥ずかしくて消え入りそうな声で「どうぞ」と答えた。
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